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フランス移住で見えた、大人もハッとする子供の教育事情についてリポート!

意外となんとかなる!? 40代のフランス移住

ファッションライターとして『家庭画報』をはじめ、大人の女性に向けた雑誌で活動してきた河島裕子、改め、ルロワ河島裕子が、夫の故郷であるフランスに家族3人で移住することを決意。幾多のハプニングに見舞われながらも、2018年9月中旬に無事渡仏。40歳を超えての移住、フランス北部の田舎での暮らし、そして時折ときめきを求めて訪れるパリやフランス各地で出会った素敵なものをリポートしていきます。第3回目となる今回は、この移住の一番の理由である子供の学校や子供にまつわること、そして移住生活2か月目のリアルをお伝えします。バックナンバーはこちら>>>

第3回 フランスの子供は“小粒でもピリリと辛い”。大人もハッとするフランスの教育事情

ルールも大切だけれど、考える力と個性もしっかり育てたい

第1回でお話ししたように、私たちのフランス移住の最大の目的は子供の教育でした。

なぜ、フランスの教育を選んだかと問われれば、たくさんの要因がありますが、一番は「自分で考え、人生における様々な答えを導き出す力」を身につけてほしいという思いがあったから。

もちろん日本でもそれは可能なのだと思いますが、特に私は、つい周りの目や評価を気にしてしまうタイプ(と自分では思っております)で、フランスのような国で育ったなら、私はもう少し自分らしさに自信を持てただろうか、と自問した時期もあり、息子に私の疑問や願望を投影している部分もあるのかもしれません。

ただむやみにフランス礼賛なのではなく、日本のよさと物足りなさを実感しているからこそ、息子のもう一つの祖国フランスのよさも悪さも含めて体感してほしいという思いも同時にあるのです。

“決まりごと”にも抗う、我が夫に見る不屈のフランス人魂

そういえば、日本にいた頃、フランス人の夫は、お役所でも息子の保育園でも、そして時にお店でも言われた「これは決まっていることなので」という(これがルールなので、こちらでは例外の対応はできません、というニュアンスの)言葉に、しばしば憤慨しておりました。

いわれてみると確かに、たとえそれが少々理不尽、不便と感じていても、それが“暗黙のルール”であったり、“決まっていることだから”と言われてしまえば、それに従わなくてはならないという考えや無意識の習性が、よくも悪くも私たち日本人には少なからずあるような気もします。

そんなとき、我が夫は、それが理不尽だと感じたらお構いなく“決まりごと”を無視し、“自分が正しいと思ったことをやる”という暴挙……、いえ、自らの価値観に忠実に行動するという事態が時折発生したため、日本にいたときは周囲の視線に何度ヒヤヒヤしたことか……(といっても法を犯したことは決してございませんのでご安心ください)。半面、この自分の信念を貫く強さに、私は密かに憧れてもいるのです。

そんな夫のおかげで私の心臓にも少しばかり、たわしのように硬く太い毛が生えてきた気がします。

個人主義は、銀行や保険会社の対応、教育の現場にも

一方、フランスでは、個人の判断に様々なことが委ねられ、その人次第で対応が大きく変わることが多々あると私の周りのフランス人たちは語ります。

例えば、先日、自動車保険を申し込んだ際には、保険会社の担当スタッフによって、評価の仕方も様々。

日本のように、車種や走行距離、免許の色、免許取得からの年数、事故の有無など必要事項をホームページ上に打ち込んだら、金額が出てくる、なんていう画一的な計算方法はないようです。

自身の運転履歴やこれまでの保険内容などを証明するためにも保険会社にいくつもの書類を提出しなくてはならず(フランス生活のベテランさんのブログにも、フランスは未だ書類社会だと書いてありました)、それに応じた補償内容(もちろん補償内容は希望により変わります)と金額を保険スタッフの判断により提案されるようです。

フランスに移住して間もない私たちは、ある保険会社の熱意あるスタッフに促され、過去6年分の書類を日本から取り寄せ、すべてに法廷翻訳を添付し提出するという、なんとも手間もお金もかかる事態に発展しましたが、おかげで納得のいく金額で手厚い補償を受けられることになりました。

天国も地獄も運次第……!?

反対に誠意のない人に出会えば、張り倒したくなるほどひどい結果になるのもフランス。

夫にとってはこちらでの銀行口座の開設や携帯電話の契約、健康保険の申請など、あまりにスムーズにいかないことが多く(なぜか当初懸念された外国人の私は、不思議なほどにすべてスムーズにいきました。日頃の行いのせいでしょうか)、フランスに来てからというもの、日本のスムーズでミスのない、そして誠意に溢れた人々とシステムを、日々絶賛&懐かしんでおります。

そしてそれを当たり前だと思って42年間生きて来た私は、日本人であることを改めて誇りに思うのでした。

ちなみにフランスでは、なんと学校で使う教科書などの教材まで先生の裁量で決められるようです。プリントばかりの先生や手作りの教材を作ってくる先生、好みの教科書を使う先生など、様々とのこと。

息子が通う学校の教室。27人ほどの生徒に先生1人とアシスタント1名で指導に当たります。日本にいるときは、「フランスの(幼稚園児くらいの)子供たちは日本の子供たちよりずっと自立している」と夫をはじめ、フランス出身の友人たちから聞いてましたが、特に我が子と比べると本当にその差に愕然としたこの2か月。相手が5歳児といえど、先生もなかなかに厳しいようです。

フランスでは幼稚園といえど“学校”です

ところで、息子は9月から、日本でいうところの幼稚園の年長クラスに当たるecole maternelle(エコール・マテルネル)のGS(Grande Section)に転入しました。4月生まれの息子は日本の保育園では年中クラスだったので、約半年早く年長さんになったイメージです。

日本で通っていたのは、異年齢保育や子供の自主性を尊重した、モンテッソーリ教育を取り入れていた保育園であったため、決まった席もなく、その日自分のやりたいアクティビティを選び、かなり自由でのびのびとマイペースに生きてきた息子。

突然、“学校”という雰囲気のクラスに放り込まれ、入学当初は、かなりの違和感と恐怖感を抱いたようでした。

幼稚園と同等といいながらも、どちらかというと本格的な修学に向けての準備学校という趣で、フランスでは年中クラスに当たるMS(Moyenne Section)では、すでにアルファベットの読みと数字の概念を、そしてGSではアルファベットの書きはもちろん、さまざまな単語を書けるようにならなくてはならないとのこと。

そして、息子のクラスでは毎日、よくできたら緑、それなりにできたら黄色、あまりできなかったら赤、全然ダメだったら黒(!)という、成績表のような評価をもらいます。


「科学技術博物館」(発見の殿堂・Palais de la Decouverte)で、気球のアトラクションが期間限定で登場すると噂を聞き、息子を連れて行って来ました。歴史ある場所でこんな遊び心のある催しをするのも、さすがフランス。

周回遅れからのスタートで焦る両親とマイペースな息子

日本ではフランス語のアルファベットの読みと数字の数え方だけはなんとか自宅でやっていたのですが、私たち夫婦のぬるま湯教育のレベルはフランスの教育現場とは天と地の差があったようで……。

最初の2週間は黄色と赤ばかりが並ぶ、息子の成績表。これには私たち親も焦りました。毎夕食後にはアルファベットの書き方と塗り絵の練習。さらに、日本では大黒柱として朝から晩、月の半分は休日も働き、子供の教育になかなか時間が割けなかった私は、フランスで自由な時間がわんさかできたことを契機に、某出版社さんから出ている“ド○ゼミ”を日本からお取り寄せ。ひらがなやカタカナの読み書きも一気にスタートしました(これも遅いですね)。

いきなりの教育ママっぷりに息子に嫌煙されるかと思いきや、「ひらがなやりたい」、「ドラ○もんのノートやりたい」と大好評。こんなことならもっと早くやってあげればよかった、と自分の至らなさを嘆く母なのでした。

転校した当初は「遊んでばかりで授業に参加しない」、「原始人のような(グー握りの)鉛筆の持ち方を直してください」、「塗り絵の質がヒドイ」と、メトレス(先生)からも散々のいわれようだったのですが、2か月経った今では、「A(息子)の進化がすごい!」とお褒めの言葉をいただくようになり、まだまだ上出来とはいえないまでも、なんとか安堵している今日この頃です。

ブローニュの森内にある「LE JARDIN D’ACCLIMATATION」(ル ジャルダン ダクリマタシオン)は、ナポレオン3世の命により動物園として開園した歴史ある庭園。昔ながらのアトラクションもエレガント。ルイ・ヴィトン財団美術館が隣接しており、大人も子供も1日で心を満たすことができる場所。●LE JARDIN D’ACCLIMATATION  Rue du Bois de Boulogne, 75116 Paris

学校の休みの多さは、日本人には異次元レベル!

さてさて、ほかにも驚いたのがフランスの学校の休みの多さ。夏休みが約2か月(義母の時代は約3か月あったとか!)と長いのは知っていましたが、それ以外にも10月の半ばからはToussaint(諸聖人の祝日)の休暇、12月半ばからはクリスマス休暇、2月半ばからは冬休み、4月の半ばからはPâques(復活祭)の休みと、なんとそれぞれ2週間の休みが!

つまり6〜8週間学校に行くと約2週間の長期休暇がやってくるようなシステムなのです。

さらに小学校の低学年までは、公立学校では水曜はお休みのことが多いようで(地区によってや、私立校などでは水曜に授業があることもあるようです)、息子が学校に通うのは、月、火、木、金の週4日だけ。昼食は食堂での給食(Cantine)か、自宅での昼食を選べ、我が家は息子が新生活に慣れるまでは自宅を選択したため、1日に自宅と学校を2往復しなくてはならない、という親にとってはなかなか忙しい生活です。

そんなわけで親も大変ですが、一番大変なのは親の方針により学期途中で移住した息子であろうと、彼の心を癒すべく子供のための遊び場を開拓中です。

しかし、フランスは子供には優しい国。都市部でも田舎でも、遊び場探しにはそれほど苦労しません。特にパリの「LE JARDIN D’ACCLIMATATION」や「科学技術博物館」(発見の殿堂・Palais de la Decouverte)など、歴史ある美しい子供向けの施設は大人にも楽しく、お子様連れでパリにいらっしゃる方にはおすすめです。

さて次回は、私の周りにいるフランス人たちの花と庭への熱い情熱を垣間見たストーリーをお届けいたします。

ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy

フリーライター

アパレル商社勤務の後、フリーのファッションライターに。『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。強烈な個性を持つフランス人の夫と息子の3人家族。2018年9月より、拠点をパリから1時間ほどのフランス北部の田舎に移し、大自然の中でのんびり生活をスタート。移住直前に猛勉強した金継ぎと蒔絵を、フランスの地で実践中。夢は、家族とともにワインの聖地・ブルゴーニュでB&Bを営むこと。

フランス移住こぼれ話

フランスに来て、まず衝撃を受けたのが、宅配便事情の悪さ。地域差もあるようですが、郵便局(ラ ポスト)の子会社であるクロノポストという会社が宅配便サービスを行っていて、これがフランス人の間でもびっくりするほど評判が悪い。

渡仏直後、アマゾンでプリンタをオーダーしたところ、3日後に届くはずが、1週間経っても届かない。そしてインターネットで進捗状況をチェックするといくつかの配送所をたらいまわしに……。

問い合わせると郵便番号が正しくないとのこと。正しい郵便番号を伝えましたが(というか当初から郵便番号は合っていたようですが)、待てど暮らせど届かない。結局、2週間を過ぎた頃、痺れを切らし、自宅から車で1時間(フランスは広大です)の配送所に引き取りに行き、ようやく手に入れることができました。こんな戦いを日々重ね、フランス生活の経験値を手に入れ、移民スキルをレベルアップすることに喜びを感じ始めています。

写真/Olivier Leroy、ルロワ 河島 裕子 イラスト・文/ルロワ 河島 裕子

 

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