
庭のハーブを、育てたその先へ。はじめてのハーブ蒸留(3) 庭で元気に育ったローズマリーやミントを、「ほかにも何か使い道があれば」と思ったことはありませんか。料理やハーブティーだけでなく、植物には「蒸留する」という楽しみ方があります。植物を蒸留すると生まれるのが、水溶性のやさしい芳香成分を含んだ「芳香蒸留水」。スキンケアをはじめとするセルフケアや、ハウスキーピングまで、日々のさまざまな場面で活用できます。この連載では、書籍『蒸留ではじめるハーブのある暮らし』(世界文化社刊)より、身近な植物で始めるハーブ蒸留の基本、芳香蒸留水を使ったレシピまで、3回にわたってご紹介します。
第一回では蒸留の基本を、第二回では、できあがった芳香蒸留水のさまざまなレシピをご紹介してきました。
春から夏は、ローズマリーやヨモギ、カモミール、メリッサ、ラベンダー、ローズ、レモングラスなど、香り豊かなハーブが次々と育つ季節。では、ハーブが少なくなる秋冬は何を蒸留すればいいのでしょう。
「蒸留に使う素材は、庭のハーブだけではありません。野草や木の枝葉、季節の果実など、身近なところにも蒸留できる植物はたくさんあります」と菊池さん。
秋冬に菊池さんがよく蒸留するというのが、木の皮や枝葉などの樹木です。
柚子を蒸留して生まれる芳香蒸留水は、飲み物から入浴まで、さまざまな形で暮らしに取り入れることができます。ここからは、柚子の芳香蒸留水を使った2つの養生レシピをご紹介します。
「風邪をひきそうなとき、体を温めたい日におすすめなのが、本葛と柚子の芳香蒸留水を合わせた葛湯です。本葛は、葛根湯の原材料としても使われ、風邪の引き始めや、胃腸の不調を整える養生食。葛をゆっくりと練り、粗熱が取れたら最後に柚子の芳香蒸留水を加えます。柚子果汁ほど酸味が強くないため、葛の穏やかな甘みを邪魔しません」。柚子の香りを楽しみながら、ゆっくりと味わっていただきたい、冬のごほうびのような一杯です。
〔材料〕1杯分
吉野本葛……10g
水……150ml
柚子蒸留水……小さじ2~大さじ1
はちみつまたは甜菜糖……お好みで小さじ1~2
〔作り方〕
1 本葛と水を中火にかけ、木べらで絶えず混ぜながら葛が完全に溶けるまで加熱します。
2 半透明になり、とろみがついたら火を止めます。
3 粗熱が取れたら、柚子の蒸留水とはちみつ、または甜菜糖を加えて混ぜたら完成です。
※自家製の芳香蒸留水を飲用する場合は、農薬や除草剤が使用されていない素材を選び、衛生管理を行った状態で蒸留を行ってください。詳しくは、本書の注意事項を必ずご確認ください。
冬の定番、柚子湯にも芳香蒸留水を取り入れることができます。柚子の皮から溶け出すリモネンなどの精油成分は、体を温める働きがある一方、肌が敏感な方やお子さんには刺激を感じることがあります。蒸留水を使った柚子湯なら、どなたでも取り入れやすく、湯上りもぽかぽか。冬の冷え対策にもぴったりです。
〔使い方〕
40~42℃のお湯を張った湯船に、柚子の蒸留水100~200mlを加えてよく混ぜます。好みで柚子を1~2個浮かべても。10~15分ほどゆっくり浸かり、深く呼吸して芳香浴も楽しみます。
「もっといろいろな植物を蒸留してみたい」と思った方には、家庭用の蒸留器を手に入れるという選択肢もあります。菊池さんが約3年をかけて開発した家庭用植物蒸留器「SOMA(ソーマ)」も、そのひとつ。
「植物蒸留を、特別な体験ではなく、日々の習慣にしてほしい」。そのために大切にしたのが、毎日でも使いたくなる手軽さです。蒸留器本体と冷却器を重ねるだけのシンプルな構造で、準備から蒸留、片付けまで簡単に行えます。理化学ガラス製品を長年手がける国内メーカーで、熟練の職人がひとつひとつ手作業で製作しているのも特徴です。
「SOMA」について詳しくはこちら>>
身近な植物を蒸留してみると、その植物の香りという、新しい魅力に出合えます。まずは気になる植物から、蒸留のある暮らしを始めてみてはいかがでしょうか。
菊池友来さん

きくち・ゆき 植物蒸留・芳香療法家。株式会社RIT取締役。20年以上にわたり芳香療法や植物療法を実践・研究。芳香療法の教室運営、セラピストの育成を行う傍ら、調香師としてフレグランス開発や空間設計などを手がける。2024年より熊本県南阿蘇村に活動拠点を移し、アトリエ「余庵(YOAN)」を設立。近年は日本アロマコーディネーター協会の検定講座を手がけるほか、家庭用植物蒸留器「SOMA」(実用新案出願中)を開発し、香りのある暮らしと、植物蒸留文化の普及にも力を注いでいる。https://www.rit-inc.jp
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写真/穴見春樹