村雨辰剛の二十四節気暮らし 庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常をお届けしてきた連載は、今回が最終回です。
大寒~人生を豊かに重ねる暦暮らし

春の訪れを待ち焦がれながら、季節の機微を見つめて。
2025年の「立春」からスタートした連載も、いよいよ最終回。最後を締め括るのは、一年で最も寒さが厳しくなる「大寒」です。都心でも最低気温を日々更新するほど、ぐっと寒さが増す季節の到来です。僕は冬でもあまり暖房をつけないため、暖を取るのは炬燵がメイン。外気がぐっと冷え込んだ日に、炬燵に入っておでんや熱燗を楽しむことが無類の喜びです。因みに、愛猫メちゃんも、この時季は炬燵の中が定位置。
全国各地からは大雪のニュースも届いていますが、「二十四節気」をさらに細分化した「七十二候」を調べると、1月20~24日頃は「欵冬華(ふきのはなさく)」。雪の積もる凍てついた地面の下では蕗の薹(とう)が出始めると知ることで、「自然界は少しずつ春に向かって進んでいるのだ」と頼もしい気持ちになります。
「仕事の合間や移動時間さえも、木々の表情に目を向けるようになりました」と村雨さん。

都会のオアシスを見つけ、短いひとときでも自然と心を通わせて。
さて、改めて24回に及んだ連載を振り返ると、僕の自然を見つめる視点は明らかに変わりました。日本に住み始めて約20年。長年、武士道や伝統文化にも興味を抱いてきた僕は、日本人の季節に対する美意識を自分なりに認識しているつもりでいました。ところが、いざ連載をスタートしてみると「清明(せいめい)」、「小満(しょうまん)」など、知らない言葉の数々。
現代の僕たちは太陽暦で暮らしていることに加え、地球規模の温暖化の影響もあり、正直なところ「二十四節気」の暦とリアルな生活とでズレを感じることもありました。その一方で、新たな暦の言葉を知るたびに、季節の移ろいを敏感に掬い上げ、農耕文化を中心とした暮らしと結びつけながら心の豊かさへと映してきた日本人の感性に触れる時間となりました。
遊歩道から外れた土の上を踏み締め、「足元から伝わる季節にも思いを馳せるようになりました」と語ります。
とくに庭師の仕事やバイクでツーリングする際は自然との距離が近いこともあり、風や太陽の光の些細な変化にも心が動き、より五感が刺激されるように。暮らしの中に芽吹いた変化としては、きものの虫干しをする頃には、一緒に革ジャンも干すという習慣です(笑)。二十四節気の意味を知った上で、現代のライフスタイルになぞらえて暮らしをブラッシュアップしたいと考えるようになりました。もう一歩踏み込み、日本の四季に寄り添いながら“こうありたい”と思う自分と深く向き合う、そんな新たな物差しを得た思いです。
一年間、僕の“二十四節気デビュー”の連載を応援していただき、誠にありがとうございました。
暦の言葉を携えて、次の春へと旅立つ期待に胸膨らんで。
村雨さんが見つけた二十四節気

「お伊勢さんに初めてのお参り。2026年が“うま”くいきますように」と、村雨さんから小粋な言葉遊びが届きました。メちゃんも最終回のご挨拶に登場。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。
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