ライフスタイル

寒露~錦秋に染まる日本庭園【連載・村雨辰剛の二十四節気暮らし】

2025.10.06

  • facebook
  • line
  • twitter

写真は昨年の紅葉の時季のワンショット。

村雨辰剛の二十四節気暮らし
庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。

寒露~錦秋に染まる日本庭園

野の花に宿る夜露が、朝晩の冷え込みによって次第に霜になりそうなほど冷たさを増す「寒露(かんろ)」。文字から受ける印象はとても寒そうですが、実際に肌で感じる「寒露」は、雲一つない青空が広がる清々しい頃ですね。10月以降は庭師にとっての繁忙期でもあり、天高く抜けるような青空の日は気持ちまで高揚し仕事が捗ります。

ちなみに、「寒露」を七十二候で表すと、「鴻雁来(こうがんきたる)」「菊花開(きくのはなひらく)」「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」。冬鳥である雁が北から渡り、菊の花が香り高く咲き、夜にはコオロギが鳴き出すという、なんとも風流な情景に古の日本人は感じ入ったのですね。都市部に暮らしていると、その全てを感じることは難しいかもしれませんが、今回は僕のお気に入りの日本庭園へとご案内。自然が織りなす“アート”のような庭園を訪ね、心地よさに浸っていただきたいと思います。

【小石川後楽園】 2020年に修復が完成した、格調高い唐門。写真提供:公益財団法人東京都公園協会

2020年に修復が完成した、格調高い唐門。写真提供:公益財団法人東京都公園協会



江戸初期に水戸徳川家の初代藩主・徳川頼房が江戸の中屋敷に築造し、水戸黄門で知られる2代目光圀(みつくに)の代に完成した庭園。江戸の大名庭園として最古の歴史を誇ります。水戸徳川家は御三家の中でも唯一参勤交代をしなかったことから、旅気分を楽しめるように中山道沿いの名所を豪華に再現していることが最大の魅力です。たとえば滋賀の琵琶湖に見立てた池「大泉水」には、神仙思想に説かれる蓬莱島が亀になぞらえて浮かんでいます。「西湖の堤」では朱色のモミジが水面をドラマティックに染め、水面にその姿を映す姿が満月を思わせる石造りの「円月橋」は、歴代大名が愛でたことでしょう。変化に富んだ風景が展開する「回遊式築山泉水庭園」は、都心にいながら野辺を散策している気分を味わえます。

園内の東門から入ってすぐの内庭では「冬季限定で松の木の雪吊りを見ることができます」と村雨さん。庭師ならではの注目スポットをご紹介。写真提供:公益財団法人東京都公園協会

園内の東門から入ってすぐの内庭では「冬季限定で松の木の雪吊りを見ることができます」と村雨さん。庭師ならではの注目スポットをご紹介。写真提供:公益財団法人東京都公園協会


住所:東京都文京区後楽1-6-6
公式ホームページ:https://www.tokyo-park.or.jp/park/koishikawakorakuen

【由志園】 多様な樹々が集い、紅葉の見頃も長く楽しめます。写真提供:由志園

多様な樹々が集い、紅葉の見頃も長く楽しめます。写真提供:由志園


日本庭園をあまり訪れたことがない方にもおすすめなのが、牡丹の島として知られる島根・大根島の由志園です。およそ1万2000坪の広大な敷地の池泉廻遊式日本庭園は、枯山水庭園や溶岩庭園など、いくつもの庭園形式が丁寧に作り込まれています。特に印象的なのは、僕の大好きな庭木のひとつである松が綺麗に手入れされているところ。秋を迎えると紅葉はもちろん、園内では池にダリアを浮かべた「池泉天竺牡丹」という華やかなイベントも開催されており、皆さまにも楽しんでいただけると思います。

村雨さんが視線を奪われた美しい松の姿。写真提供:由志園

村雨さんが視線を奪われた美しい松の姿。写真提供:由志園


住所:島根県松江市八束町波入1260-2
公式ホームページ:https://www.yuushien.com/

【華蔵寺】 忠臣蔵でお馴染みの吉良上野介の菩提寺としても知られる。写真提供:西尾市観光協会

忠臣蔵でお馴染みの吉良上野介の菩提寺としても知られる。写真提供:西尾市観光協会


最後にご紹介するのは、僕が庭師の修業時代にお世話になった愛知県西尾市にある華蔵寺(けぞうじ)の、本堂の裏手に江戸時代中期に作庭された枯山水庭園です。コンパクトな造りなのですが、背景にある山の斜面を活かし、シンプルに石組みとサツキの刈り込みだけで禅の世界を構成、縁側に座って眺めていると時間を忘れるほどです。斜面上の椎の大木が覆い被さってくるようで、遮断された異空間には独特の雰囲気があり、修業時代に癒されに訪れていました。

「苔の蒸した枯れ池の表現も見事です」と、村雨さんは当時を思い出すかのように語ります。写真提供:西尾市観光協会

「苔の蒸した枯れ池の表現も見事です」と、村雨さんは当時を思い出すかのように語ります。写真提供:西尾市観光協会


住所:愛知県西尾市吉良町岡山山王山59

僕は庭師ですので手を入れて樹形を整えることもありますが、全ての樹は生き物で有機的なアートのようなもの。訪れる季節やその時々によって違った表情を見せてくれるので、お気に入りの庭は何度も訪れて、その違いを愛でていただけたらと思います。美術館を訪れる際もそうですが、作庭者の意図や歴史などを少し調べて訪れるだけでも理解が深まり、一層楽しめると思います。是非、この秋は庭園巡りにお出かけください。

「庭は生きているアートです」と村雨さん。

「庭は生きているアートです」と村雨さん。


村雨さんが見つけた二十四節気

左・「名古屋で買ったお土産は秋限定の栗の風味でした」と、新幹線で満足そうな笑みを浮かべて。右・家の付近で愛猫、メちゃんのおもちゃを発見。ねこじゃらしの色からも次第に深まる秋を感じたそうです。

左・「名古屋で買ったお土産は秋限定の栗の風味でした」と、新幹線で満足そうな笑みを浮かべて。右・家の付近で愛猫、メちゃんのおもちゃを発見。ねこじゃらしの色からも次第に深まる秋を感じたそうです。


村雨辰剛(むらさめ たつまさ) 村雨辰剛(むらさめ たつまさ)
1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。

撮影/伏見早織 構成・文/樺澤貴子

  • facebook
  • line
  • twitter

12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 01 / 20

他の星座を見る

Keyword

注目キーワード

Pick up

注目記事
12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 01 / 20

他の星座を見る