村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
秋分~日本の心を育む僕の愛読書

日本の文化を理解する愛読書を公開。
春分と同じく、昼と夜の長さが等しくなるという「秋分」。まだ残暑の名残が感じられるものの、朝晩に感じる風や虫の音、道端の草花の表情から、次第に秋の訪れを感じます。二十四節気の連載を通して改めて思うことは、こうして一年を区分することは、農耕民族だった日本人にとって、季節の物差しがいかに大切だったかということ。庭師の仕事をしていると、古来の季節に寄り添う感性にはっとさせられることがあります。
また、春分と秋分の頃を“お彼岸”と呼んで、ご先祖様のお墓参りに行くということも、日本ならではの文化ではないでしょうか。春分では、この日を境に昼が長くなり森羅万象が冬から目覚めることをご先祖様に感謝し、秋分では、五穀豊穣の喜びをご先祖様と分かち合うのでしょうか。「処暑」の回でもお伝えしましたが、スウェーデンでは季節に合わせてお墓参りに行くという習慣がありません。僕にとっての秋分は、“秋の夜長の読書”へと心が向く季節です。
何度も繰り返し呼んでいるという『Bushido The Soul of Japan』。
今回は読書の秋に際して、僕の愛読書をご紹介させていただきます。まずご紹介するのは新渡戸稲造の著書で、1899年に英語で原文が書かれた『Bushido The Soul of Japan』。この本は、僕が帰化した際に、日本人の原点を深く理解したいと思って求めた一冊です。武士道がもたらした「仁」「義」「勇」「礼」「誠」「名誉」「忠義」「克己」といった徳目を詳しく紹介し、日本人の精神的支柱と普遍的な道徳観を伝えています。読むたびに心に響く箇所が異なるため、付箋を貼りながら何回も繰り返し読んでいます。
気になる箇所には付箋を貼り、心に留め置く。村雨さんの向学心が垣間見えます。
もう一冊は『英語で話す「日本の心」 和英辞典では引けないキーワード197』(講談社バイリンガル・ブックス)です。たとえば、「建て前と本音」という項目では、「申し立てられた理由(建て前)と現実の意識や動機(本音)が異なることを表す」という辞書的な意味に加えて、「集団の対立を避けるために、自分の欲求と感情を犠牲にしなければならないことがしばしばある」など、言葉の根底にある心理的なことまで解説。それが日本語と英語の両方で綴られているため、僕自身の一助になると同時に、僕のような外国人に日本人の根底にある考え方を理解してもらうのにも役立っています。外国人とコミュニケーションをはかる機会の多い方は、是非読んでみてください。
「甘え」「遠慮」「恥」の捉え方など、一歩踏み込んだ考え方を知ることができるそうです。

村雨さんが紹介してくださった本の数々。
最後にご紹介するのは、これから読んでみたい本です。僕が日本に興味を抱いたのは、武士道という武士の考え方や生き様に魅了されたことがきっかけでした。歴史を学ぶことで、さまざまな角度から日本を知ることができ、実際に日本に住むことで武士道に対する憧れは一層強まりました。その真髄を記した「葉隠」についての本を見つけるとつい買わずにはいられません。現在は“積ん読”の状態ですが、この秋からページを手繰りたいと思っています。皆さんも素敵な読書時間をお過ごしください。
村雨さんが見つけた二十四節気

左・水戸黄門スタイルのカカシを発見した村雨さん、思わず「収穫を目前にした稲穂を、最強の紋所が守る」とコメント。右・地方ロケで見つけた“小さな秋”の風景も届けてくれました。

メちゃんも本の内容が気になるご様子。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。