〔特集〕名門避暑地の「今」を楽しむ 美食とアートに集う 軽井沢 標高1000メートルの爽やかな空気のもと、喧騒から離れて静かに自然と親しむひとときは、軽井沢ならではの贅沢な時間。その一方で、リラックスしながらさまざまなジャンルの上質なエンターテインメントを楽しめるのも、名門避暑地らしい魅力です。音楽、スポーツ、ファッション、そしてアートと食……カルチャーを軸に豊かな交流が生まれ、世代や職業を超えて繫がる。軽井沢がもたらす心豊かな「夏」へとご案内します。
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自然豊かな地で世界と繫がる
デジタル時代の聖地「軽井沢」
軽井沢の別荘にて、庭に佇む増田さん。独創的なオブジェ群は、韓国人彫刻家、イ・ジェヒョさんが制作。
増田宗昭さん(ますだ・むねあき)1951年大阪府生まれ。1983年に「蔦屋書店」を創業。1985年に企画会社「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」を設立。若き日より軽井沢と縁があり、現在は個人のライフワークとして、当地で新しいプロジェクトを準備中。
[これからの軽井沢をつくる人]
増田宗昭さん(カルチュア・コンビニエンス・クラブ取締役会長)
世の中のデジタル化が進み、リモートワークも普及した現在、都会と軽井沢の二拠点生活や、軽井沢への移住を選ぶ人がますます増えています。この地で数々の魅力的な複合施設を手がけてきた「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」会長の増田宗昭さんは、「軽井沢だからこそ描ける未来がある」と語ります。
「森、涼しさ、人の輪。軽井沢には現代人が求めるものが揃っています」── 増田宗昭さん
別荘のサロンにて。
デジタル時代の到来に、相次ぐ自然災害やコロナ禍が重なり、二拠点生活やリモートワークが広く浸透してきた昨今。人々はより広範なエリアを自らの居住地候補として見るようになりました。
それでも軽井沢が多くの人にとって憧れの地であり続ける背景には、時代の大きな転換があると、CCC会長の増田宗昭さんは分析します。
「家や車など『物』を手に入れることが幸せに直結していた時代を経て、現代は情報や情報を得るプラットフォームが人の幸せに結びついています。たとえば、フェイスブックを通じて古い友人とつながるといったことですね。私たちが使っているGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ〉、アマゾン)などのプラットフォームは、お金ではなく、アイディアによって生まれたもの。時代は、財務資本から知的資本へ、企業から個人へとシフトしているように思います」
考えはその場で紙に書いて伝えるのが増田さん流。
では、個人の時代に大切なものは何でしょうか。増田さんは「脳が活性化する環境」だといいます。
「これは私の持論ですが、知的ワークにはある程度の気温の低さが必要です。その点、標高1000メートルの軽井沢は東京と比べて6、7度気温が低く、夏でも涼しい。加えて、軽井沢町の森は7割が国有林ですから、森の中で誰にも邪魔されず、思索ができます。そしてもう一つ、脳を最も活性化してくれるのは自分をインスパイアしてくれる人との交流ですが、軽井沢には知的で素敵な人たちが多い。時代が求めるものがすべて揃っていることを、みんな暗黙知でわかっているから、軽井沢に来るのではないでしょうか。
僕はそんな軽井沢の基盤を生かして、どこよりも脳が活性化する場所をつくりたいんです。空間はできるだけ自然を生かし、思索の邪魔になるような物は置かない。コンテンツは脳を活性化するアート、本、人と交流できるスペースとイベント。僕はときどき、別荘に大事な人たちを呼んでパーティをするんですが、満天の星のもと、テラスでグラスを交わすひとときはかけがえのないものです。ゲストに招いたアカペラグループの『誰も寝てはならぬ』を聞いたときは涙が出ました」
お気に入りのジャン=ミシェル・バスキアの作品を背に。