村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
大暑~銀座へ“おしのぎ”を求めに

銀座のビル群の路地裏に風情ある佇まいを放つ「萬年堂本店」。
二十四節気は「大暑」の時季。天気予報では、毎日のように“猛暑”や“酷暑”の文字が連なります。読んで字の如く、一年の中で最も暑くなる頃です。
日本に住むようになって知ったのは、この時季に“暑中見舞い”や“御中元”の習慣があることです。ちなみに、御中元は中国の「中元」という行事が日本に伝わり、仏教の行事と混ざり合って発展した風習で、関東と関西では贈る時期も微妙に異なるようです。暑さの厳しい折に手紙や贈り物で相手を気遣うという、日本人の優しさが習慣として今もあることに感動しました。そこで、僕も日頃からお世話になっている方へ和菓子を贈りたいと思い、銀座にある「萬年堂本店」へ伺いました。
ショーケースに並ぶ和菓子に思わず目移り。

瑞々しい夏の生菓子が目に涼やかさを運んで。
銀座萬年堂本店の歴史は、約400年前へと遡ります。京都で暖簾を構え、遷都に伴い明治5年に東京へと移転。銀座の老舗として名を連ね、2022年9月には喫茶を併設するモダンな店舗が銀座7丁目に誕生。実は僕のYouTubeの撮影でもお世話になり、13代目当主を務める樋口喜之さんと出会って、和菓子への興味が深まりました。
今年の7月は舞台『シーボルト父子伝〜蒼い目の侍〜』に出演させていただき、楽屋見舞いでたくさんの和菓子をいただく機会に恵まれました。樋口さん曰く、江戸の粋人は「楽屋見舞いに添えて、その場で手軽に空腹を凌げる“おしのぎ”を渡す習慣があります」とのこと。ならばと、僕もお世話になった方へ“おしのぎ”を選ぶことに。萬年堂といえば、元禄年間から伝わり吉祥の語呂合わせを商品名とした「御目出糖」が有名です。それに添える“おしのぎ”として、今回は9種類の風味が楽しめる「石衣製 いろどり」を購入しました。
和菓子を選ぶ御指南をいただいた13代目の樋口喜之さん。

餡に砂糖ごろもをかけた石衣。「白餡、栗餡、抹茶餡など、彩りも美しく喜んでいただけそうです」と村雨さん。
樋口さんと話しながら感じたことは、和菓子の世界は日本文化の教養をベースに、季節の機微や自然の情景、そして小粋な遊び心が凝縮しているということです。伝統を礎としながら、その店ならではのオリジナリティを追求する姿勢は庭師の仕事にも通じて、とても勉強になりました。
かき氷と一緒に、村雨さんは季節の錦玉「青葉影」をオーダー。
買い物を終えたところで、以前から気になっていたかき氷を喫茶スペースでいただくことに。萬年堂のかき氷は、5日間かけて凍らせた純氷を、手動で削っているそうで、口に入れた瞬間にふわっと溶ける食感が特別です。僕が注文したのは「完熟梅と銀座ハチミツのかき氷」。大多喜梅と銀座ハチミツのシロップの甘酸っぱさが絶妙で、この瞬間は暑さが吹き飛びました。是非みなさんも、洗練された銀座の涼を味わってみてください。
「瑞々しい錦玉は目にも涼やかですね」とご満悦。
⚫️今回訪れたお店
萬年堂本店
住所:東京都中央区銀座7-13-21
電話:03-6264-2660
https://www.mannendou.co.jp/
村雨さんが見つけた二十四節気

「強い陽射しのなかでも、水辺の景色が気持ちに涼やかな風が運びます」と村雨さん。公園の小さな池にも心を寄せて。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。