村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
小暑~夏衣を探しに銀座へ

希少な麻織物の手仕事に思いを馳せて。
「小さく暑い」と書いて、本格的な暑さを迎える少し前を指す「小暑」ですが、大気のヴォルテージは日々上昇、すでに夏本番といった印象です。歳時記ではちょうど七夕を迎える日。中国から伝わったとされる織姫と彦星のストーリーを、僕は日本に来てから初めて知りました。ここで登場する織姫は、その名の通り機織りや裁縫に長けていたそうで、かつては女性の素養の一つだった裁縫の上達を祈る日でもあったと聞きます。そんな伝説にちなんで、僕もきものの着こなしの上達を願って、今回は「銀座もとじ」へ伺いました。
左・「いつかは手にしたい!」と憧れている越後上布。右・縞のきものは、重要無形文化財に指定されている小千谷縮。
今回は「銀座もとじ」で誂えた板締め絞りのゆかたで訪れました。僕のきものの師匠は、プライベートでも仲良くさせていただいている二代目店主の泉二啓太さん。店を訪れると、僕の好みを熟知したうえで、反物を選んでくださっていました。「銀座もとじ」オリジナルの柳染めの糸を用いた夏結城や、クールな印象の能登上布と並び、僕の目に留まったのは、国の重要無形文化財でユネスコ無形文化遺産にも登録されている越後上布でした。
実は以前、取材で工房を訪れたことがあり、糸を績む工程なども体験したことがあります。途方もない時間を要する手仕事の耳目に触れ、越後上布は夏きものの“ロールスロイス”のような存在だと感じました。反物を体に添わせてみると、想像していた以上に繊細な質感。そう感想を告げると「襦袢に重ねると、マットな透け感が生まれ氷菓子のように涼やかに映ります。淡いグレーの襦袢に合わせると、さらに奥行きが生まれ、シックな印象で装えますよ」と、泉二さんがアドバイスしてくださいました。
続いては、勝山さと子さん作による夏絹の濃淡を重ねて。

右、左・「銀座もとじ」オリジナルで織られた、紋意匠のような地紋が奥ゆかしい光沢を放って。
越後上布の清らかさに心惹かれながらも、僕がきものを着るシチュエーションは、ややフォーマルな場面。その点を泉二さんに相談すると「越後上布は贅沢な一枚ですが、麻という素材はあくまでお洒落着。パーティなどのシーンを想定するなら絹地がおすすめです」とのこと。泉二さんは、小さな菱文が連なって控えめな光沢が美しい西陣織の作家・勝山さと子さんの反物を見せてくださいました。
白とブルーグレーの2反を、きものと羽織りのように重ねて体にあてていただきました。照明のあたる角度によって地紋が表情豊かに見える様子がエレガントで、これなら映画祭や舞台挨拶、パーティなどのシーンに活躍しそうです。さらに、ワンランク上のお洒落として、貴重な根付けのコレクションも拝見。僕らしい夏衣のイメージをしっかりと描くことができました。まわりの人の目に涼やかに映るならば、“小なりの暑さ”を飲み込んで、近い将来、夏きものに挑戦できればと思います。
根付けのお洒落は、女性でいうジュエリーのお洒落に匹敵。象牙や翡翠、瑪瑙や銘木を用いた贅沢なコレクションが揃います。

きもの選びのアドバイスいただいた泉二啓太さん(左)の装いは八重山上布。
⚫️今回訪れたお店
銀座もとじ 男のきもの
住所:東京都中央区銀座3-8-15
電話:03-5524-7472
https://www.motoji.co.jp/pages/mens
村雨さんが見つけた二十四節気

7月を迎えて急に陽射しの強さを感じ、「木漏れ日さえも、いつもより眩しく感じます」と村雨さん。木陰から思わずレンズを向けました。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。2025年7月10日~13日まで、舞台【シーボルト父子伝〜蒼い目の侍〜】にシーボルト役で出演予定。
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