村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
芒種~茶の湯、手習いはじめ

「芒種」の風習にちなみ、日本文化の“稽古はじめ”を。
早いもので一年の折り返しとなる6月に入りました。今月最初の二十四節気は「芒種(ぼうしゅ)」。この「芒(のぎ)」という文字は、麦や稲といったイネ科植物の穂先に見られる針状の突起のこと。古より芒種の頃は、 “芒” のある植物の種蒔きや田植えを行う目安とされてきたそうです。こうしたエピソードを知るにつれ、作物の暦と二十四節気がいかに密接に関わっていたかということを改めて感じました。
左・茶入は夏らしくガラスの器を見立てました。右・「抹茶を“掃く”だけでも気持ちが静かに整います」と村雨さん。
芒種は6月6日前後。日本の伝統文化の世界では「6歳の6月6日に稽古を始めると上達しやすい」と言われてきました。その理由を調べてみると、片手で指折りに、1、2、3と数えると、6で小指を立てる形になります。小指を立てる=子を立てるという表現になぞらえ、習い事を始める子の上達を願う思いが込められているそうです。そこで、僕も何か伝統文化に挑戦したいと思い、以前から興味のあった抹茶を点ててみることに。これまで飲んだことはあっても、自分で点てるのは初めてのこと。
湯を注ぎ、ゆったりと茶碗を温めます。

お菓子はお茶を点てる前のお楽しみ。この季節らしく涼やかな琥珀糖を用意。
今は稽古に通う時間の余裕がないため、基本の考え方を身近な茶の湯の経験者に聞いて、“村雨流”で自服をすることに。茶碗と茶筅さえあればお茶は点てられると聞いたので、最低限のものだけ用意して、あとは手持ちのアイテムを見立てることに。盆点前のお盆のかわりにレザーのランチョンマットを、茶入は夏らしく涼やかなガラス器で。お湯を注ぐ道具などもコーヒー用のポットで代用しました。
レクチャーしてもらったポイントを思い出しながら、シャカシャカと茶筅を振ること数十秒、お茶が点った頃合いを見計らって円を描くように茶筅を抜くとご覧の通り。手前味噌ですが、なかなか上手く点てられたのではないでしょうか。まずはお菓子を食べてから、自服しました。お菓子の甘さとお茶の爽やかな苦味が交差し、一服のお茶でこんなにもリラックスできるとは、我ながら驚きました。芒種の手習いはじめをきっかけに、いつかは茶室の庭なども手がけてみたいと心に刻みました。
「想像以上に細やかな泡立ちになりました」とご満悦。

はじめての自服とは思えないほど、お茶を飲む姿も堂に入った様子です。
村雨さんが見つけた二十四節気

左・「新幹線から眺めた富士山の雪もずいぶん溶け、夏が近づいているのを感じます」と村雨さん。右・梅雨寒を迎え、お風呂上がりに甘えてくるメちゃんとのプライベートショット。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。