村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
立夏~初夏の風を駆け抜ける

愛用のライダースジャケットを着てツーリングに出発。
朝目覚めて、窓を開けると清らかな樹々の姿が目に映り、気持ちまでフレッシュになる新緑の季節の到来です。立春からスタートした僕の二十四節気の連載も、早いもので一年の1/4が過ぎ、「立夏」を迎えました。立春・立夏・立秋・立冬は「四立(よんりつ)」とも呼ばれ、移りゆく季節の節目。「立」は新しい季節の始まりを意味する言葉。僕も気持ちを新たに先人の暦の教えを一層深く学んでいきたいと思います。
「立夏」は「夏が立つ」と書くように、夏の兆しを感じる頃。そして「立夏」が始まる5月5日は、男子が主役の「端午の節句」です。そこで、今回は僕の趣味でもある愛車のバイクを紹介します。
スイッチの表示をあえて日本語表記にカスタマイズ。

バッテリーカバーには、村雨さんの家紋と「松」「風」の文字で装飾。
この撮影当時、僕の愛車はハーレーダビットソンでした。約2年前に購入したヴィンテージのバイクで、度々の故障にもめげずに、愛情を込めてメンテナンスをしながら乗っていました。バイク好きには共感していただけると思うのですが、バイクで風を切ると、どんなストレスも吹き飛びます。忙しい仕事の合間を縫って、並木道を抜けて海へ向かうことも。
メカニック的なメンテナンスはもちろんですが、「ピンストライプ」と呼ばれる細い線で模様を構成するカスタムペイントを施し、オリジナリティを楽しみます。たとえば、僕の場合はスイッチを漢字の文字にしたり、バッテリーカバーに家紋を入れたりしていました。
ヘルメットもあえてヴィンテージ調のものをオーダー。

「お気に入りのヘルメットで気持ちが高揚します」と村雨さん。
立夏の頃に手紙をいただくと、「薫風」「風薫る」といった書き出しをよく目にします。「薫風」とは、新緑の間に吹きわたる快い風のこと。バイクで走っていると、まさに風さえも薫るような感覚を覚えます。本格的な夏を前に、一年で最も過ごしやすい気候の中、皆さまも爽やかな風を感じてください。
村雨さんが見つけた二十四節気

左・「この時季はツーリングに最適な季節。風を受けながら新緑を眺めるのはとても気持ちがよいです」と村雨さん。ミラー越しに映った瑞々しい新緑を思わず撮影。右・庭の管理を任されているお寺の庭のツツジも咲きごろを迎えたそう。刈り込みではなくて透かし剪定に変えて自然な樹形に整えたとのことです。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。