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パリのトップフローリスト・オドラントが恋する、ニッポン生まれの「花」

ニッポン生まれの「花」に恋して 第1回(全3回) カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・アジャーニ……。世界的な女優やセレブリティを顧客に持つ、パリのトップフローリスト「オドラント」の二人、エマニュエル・サマルティーノ氏とクリストフ・エルベ氏を虜にしたのが、「世界でも比べるものがない」と彼らが絶賛するニッポンの切り花。端正にして独創的、進化を続ける「花」に逢いたくて来日しました。その縁をつないだのは生産者の側に立って、時代の先端をいく花の作出をずっと応援してきたフローリストの並木容子さん。並木さんの案内で、花が生まれる温室や最先端の市場を訪ね、彼らが心に適う花を選んで作った作品をご紹介。そこまで彼らを夢中にさせるニッポン生まれの花の秘密を、並木さんの解説でひもときます。

パリのトップフローリスト「オドラント」が来日

マニュエル・サマルティーノ氏とクリストフ・エルベ氏

築90年の市川邸の前で、作品を手にしたエマニュエル・サマルティーノ氏(右)とクリストフ・エルベ氏(左)の二人。「この花々からもらったエネルギーはパリに帰っても私たちを幸せにし続けてくれる」とご満悦。

Christophe HERVÉ クリストフ・エルベ (左)
Emmanuel SAMMARTINO エマニュエル・サマルティーノ(右)

ヘアアーティストを経てオドラントを経営するクリストフ氏と、現役のトップメイクアップアーティストでもある共同経営者のエマニュエル氏のデュオフローリスト。2003年、パリにオドラントをオープン。花が持つ自然の美を生かしながら、新たな魅力を引き出すセンスに魅了されるファンが多い。二人は無類のバラ好き。

ODORANTES paris
9 rue Madame 75006 Paris
TEL:01 42 84 03 00
http://www.odorantes-paris.com

憧れの「ガーデンローズ」の栽培場へ
ニッポン生まれのバラに逢いに

初冠雪を迎えた富士山がくっきり見える晴れ渡った日、「オドラント」の二人が静岡県三島市の「市川バラ園」を訪ねました。

一昨年、来日した際に「ジェンテ」の並木さんの店で出会った「ジェンティーレ」の美しさに深く感動した彼ら。それは二代にわたってニッポンのバラ業界を牽引する市川バラ園のバラでした。

マニュエル・サマルティーノ氏とクリストフ・エルベ氏

ほころび始めた「イヴ・パッション」の香りに誘われ、花に顔を近づけるエマニュエル氏(左)とクリストフ氏(右)。宝物を見つけたかのようないとおしげな眼差しをバラに向ける。

細い茎が庭バラを彷彿させ、洗練された美を持つ花。二人はこの美しいバラにもう一度逢いたくて、再び訪日したのです。

二人がバラ園の温室に足を踏み入れたときの第一声は「Très très beau!(なんて美しいんだ!)」。うっとりする香り、茎や葉の先まですべてに行き届いた美しさ、ふかふかの土やつぼみからも、作り手の深い愛情を感じたとか。

マニュエル・サマルティーノ氏とクリストフ・エルベ氏

花芯がアクセントの白バラ「オードリー」や珍しい「グリーンローズ」など、可憐なバラを束ねて。市川さんが作るこれらのバラは、バラに対する価値観を変えたともいわれている。

創業者の市川恵一さんは大学で園芸を学び、1965年にバラ作りを始めてからバラ一筋。バラ本来の美しさを届けたいと考えた末、庭バラのように「風にそよぐバラ」、「香るバラ」の生産を目指します。

しかしそれは、従来の切り花用とは正反対の価値観で、切り花としてのセールスポイントを無視するものだったので、商品化も困難を極めました。それでもそういったバラこそが、人の心を動かすと信じて作り続け、実際に心に響く多くの品種を生み出します。

市川バラ園のバラ
伸びやかに育つよう丁寧にワイヤーで支えられている様子や葉や茎の美しさに、作り手の愛情を感じるという二人。

さらに2代目の明彦さんは、バラ作りのほか、花の質を高め、持ちをよくする工夫にも余念がありません。バラの美しさを追求する市川親子に、そして咲きたてのバラに逢えた二人の表情は喜びに溢れていました。

築90年の市川邸を舞台に
パリの感性で古民家を彩る

築90年の日本家屋である市川邸。実は恵一さんのお父さまが、木材の調達から建築までコツコツと手がけられたもの。

オドラントの二人は住まいを案内されて、円窓や蹲つくばい、繊細な格子戸など、日本人の美意識が光る住空間のディテールに感動。特に心惹かれた場所に、市川さんのバラを飾ります。

シルエット、オードリー、セラファン

つぼみがほんのりピンク色の「シルエット」は咲くとほぼ白に。花芯の黄色がチャーミングな「オードリー」、小ぶりのスプレーバラ「セラファン」の3種。円窓にからませ、白バラのピュアな魅力を見せる。

光を取り込む円窓には楚々とした白バラ3種を。シンメトリーな格子に、バラとイタリアンベリーなどを絡ませていく過程は、絵を描く感覚だそう。

差し込んだ光がバラを後方から照らし、わずかにニュアンスの異なる白を立体的に浮かび上がらせます。
イヴ、ジャルダン・パフューメ

市川バラ園の代名詞ともいえる「イヴ」シリーズや「ジャルダン・パフューメ」。ピンクの濃淡が浮かぶ様に「ディオールのリップシリーズのような美しさ」と微笑むエマニュエル氏。

次に庭に降りて、巻きが華やかな「ジャルダン・パフューメ」などピンクのバラを蹲に浮かべます。ころんと丸い花形と蹲の円が呼応する一方で、ふわふわとしたピンク色の花と、硬く黒い石のコントラストも一興です。

この2つのアレンジに用いたバラの表情は一見正反対ですが、どちらも自然な雰囲気を醸します。「庭から摘んできたようなバラを」と願う市川さんの想いと、その魅力を輝かせたいという二人の想いが見事に調和した瞬間でした。

「すばらしい花に囲まれて過ごしたこの夢のような時間は、唯一無二の体験。パリに戻っても私たちの心に息づき、日々のエネルギーになるでしょう」と語った二人。

市川さんのバラに感銘を受け、この地でコラボレートできたことへの感謝と喜びを表すとともに、花が人の深い愛情によってさらに輝くことを教えてくれました。

●市川バラ園 メゾン銀座店

市川バラ園で育てられたバラの数々が揃う専門店。市川ローズを贅沢に使ったブーケ、アレンジメントが購入できる。本店は三島に。

東京都中央区銀座6-5-14 ブレス銀座4階
TEL/FAX:03(6274)6697
http://www.ichikawa-baraen.com

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