連載「名曲の花束」 『愛をこめて花束を』『赤いスイートピー』など、私たちの心に残る名曲には、しばしば花が印象的なモチーフとして登場します。この企画では、読者の皆さまから寄せられたリクエスト曲とエピソードを「宙花(そらはな)」のフローリスト、戸部秀介さんが読み解き、ブーケやアレンジメントで表現します。
楽曲のリクエストはこちら↓第2回の楽曲は、藤井風さんの『Prema』。リクエストを寄せてくださった川崎市在住のWさんからは「聴いていると、不思議なもので、気持ちが上向きになったり、穏やかな気持ちになったりする自分に気づいて、それから、気持ちを整えたいときに聴くようになりました」とメッセージをいただきました。なかでも「Prema」という言葉の響きとリズムが心地よく、繰り返し聴いているそうです。
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藤井風『Prema』をモチーフにしたリース。
戸部秀介/Shusuke Tobe35歳の時にフローリストへと転身。大手生花店、フランス人フラワーデザイナーの店で経験を積み、2016年に東京都世田谷区の中町に「宙花〜sora hana~」をオープン。リースを得意とし、ワークショップにも力を注ぐ。instagram:@sorahana.jp
「神聖な愛」を、「永遠」の象徴であるリースに込めて
藤井風さんの楽曲には、ヒンドゥー教やインドのスピリチュアリティに影響を受けた言葉がしばしば登場します。『Prema』も、サンスクリット語で「神聖な愛」という意味。歌詞には「あなたは愛そのもの」「あなたは神そのもの」というフレーズが繰り返し登場します。
楽曲の世界観を表現すべく選んだアレンジメントは円形のリース。リースは「始まりもなく終わりもない、永遠の象徴」として、昔から愛情を示す花飾りとして親しまれています。

藤井風『Prema』
2025年にリリースされた同名の3rdアルバム『Prema』に収録されている。NewJeansなどへの楽曲提供で知られる韓国人プロデューサー、250(イオゴン)と済州島で制作。80年代のロック・R&Bを土台にしたサウンドで、歌詞は全編英語で綴られ、日本国内だけでなく海外からの評価も非常に高い。
リースの主役に選んだのは、赤いバラ。楽曲のテーマについて、戸部さんは「寛容というか、広い意味での愛というか。あの子が好きとか、そういう話じゃないですよね」と話します。バラの力強く自立した、疑いのない姿が、楽曲に流れる揺るぎないテーマと重なります。
またバラには西洋的なイメージもありますが、サンスクリット語で書かれたインドの聖典にも登場する、東洋思想にもなじみ深い花材です。
今回使用したバラは、全部で5種類。比較的大きな花を咲かせながら、濃淡の異なる赤の‘アマダ’と‘レッドエレガンス’を中心に、3種類のスプレーバラを組み合わせています。一輪一輪、微妙に異なる表情のバラを組み合わせ、深みのある赤のグラデーションを描いています。

赤いバラの間から顔をのぞかせているのは、リコリス‘スプレンゲリー’。ピンクを基調としながらも、花弁の先端には青紫が混じる複雑な色合いになっており、こちらも“神”をテーマにした楽曲の神秘的な世界観に重なります。
グリーンにハゴロモジャスミンを選んだのは、リコリスと同様にアジア原産の花材であるため。土台には、ドラセナ‘コンパクターパープル’を使用。緑の葉に差す赤紫がバラと調和し、円形のリースにさりげない陰影を添えています。
藤井風さんの『Prema』が持つ、愛、神、そして輪廻を想起させるメッセージを、ひとつひとつの花材と向き合い、リースという形に託しました。
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リコリス‘スプレンゲリー’。ピンクの花弁の先端には、青紫がかった色が重なる。

バラ‘アマダ’。深みのある赤色と、存在感のある大きな花が特徴。

バラ‘レッドエレガンス’。‘アマダ’と比べて少し淡い赤色で、花形にはふっくらとした丸みがある。

スプレーバラ‘ガーネットジェム’。小ぶりながらも丸い花形に存在感があり、リースにボリュームを添える。

スプレーバラ‘ファンファール’。“バラらしい”正統派の花形が特徴。

スプレーバラ‘タマンゴ’。落ち着きのある深いビロード色が印象的。

スプレーカーネーション‘マルゴー’。今回はバラの間を埋めるように使用している。

ドラセナ‘コンパクターパープル’。濃いグリーンの葉に赤紫色が差し、バラの赤と調和する。

ハゴロモジャスミン。中国南部原産で、リースに軽やかな動きを添える。
「この曲を花束にしたら見てみたい!」そんな、お花にまつわる楽曲をぜひリクエストしてください。
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