[現地特別取材]2026ミラノデザインウィーク探訪 海外インテリアの新潮流を訪ねて 世界のインテリアの潮流を決するといわれる「ミラノデザインウィーク」。ミラノサローネ国際家具見本市とミラノ市内のデザインイベント「フォーリサローネ」の2つを総称して呼ばれる世界最高峰のデザインの祭典です。真のデザインとは消費されるものではなく、長く愛され受け継がれるべきもの──そんなメッセージを色濃く感じとれる場となった今回、次代へ手渡す美のかたちを求めて、本物回帰へと向かう新たな潮流を探訪しました。
ニルファー
コレクタブルデザイン界を牽引する存在
ミラノを代表する目利きのギャラリスト、ニナ・ヤシャールさんは、工場を改装した自身のギャラリー、「ニルファー・デポ」で架空のホテルをオープン。
Depot 会場

メインアトリウムに広がるラウンジには、古代彫刻から現代アートまでが入り交じり、まさにヤシャールの真骨頂。モジュラーソファはハンス・ホッファー、ラグはCC タピスのもの。

ローラ・モンテスによる彫刻的なレセプションデスクと、カラーの花を模したヴィンテージのシャンデリア。

ガブリエラ・クリスピの「ライジング・サン」ベッドは70年代のヴィンテージ。
レセプションデスクで作品リストをもらい、彫刻的なオブジェやランプが並ぶラウンジを抜け、クリエイターが手がけた客室、そしてペントハウスへ。ヴィンテージとコンテンポラリーデザイン、過去と現在が対話する独自の世界観。
Via della Spiga ギャラリー
ヴァレンティーナ・チュッフィのキュレーションによる、伝統や信仰をテーマにした 「La Casa Magica」。
呪術的な雰囲気を醸すオブジェが並ぶ。

クララ・シュワーズのミラーと、メイド・バイ・アストロノーツのベッド。
「異なる声や感性が共存し、時間をかけて進化の条件を作ります。デザインは静的なものではありません。対話と実験によって、絶え間なく変容し続けるものなのです。最も重要なのは、緊張感があること。バランスは、時にそれを壊すことを恐れないことで保たれるのです。好奇心をもってアプローチすれば、歴史はイノベーションのための強力な道具になり得るでしょう」
Nina Yashar ニナ・ヤシャール
ギャラリスト。ペルシャ出身の絨毯商人の家系に生まれ、1979年ニルファーを設立。ヴィンテージと現代デザインを横断する独自のキュレーションで、コレクタブルデザイン界を牽引。
ニルファー
https://nilufar.com/
アルコーヴァ
忘れられた建築に、前衛の美が息づく
鋭いキュレーションで、今や最も刺激的な展示会場となった「アルコーヴァ」。その魅力は、デザインとアートを往来する実験的な作品群にとどまらず、放置された歴史的・産業的建築遺産を毎年新たな会場とし、場所の記憶と価値を現在へと開く姿勢にあります。
旧バッジョ軍事病院跡を会場に

礼拝堂でのレオ・ラゲとヴェルサによる音、光、素材、テクノロジーを重ねた没入型展示。

約12万平方メートルの敷地に点在する約100年前の建物と庭が会場。
建物外観©Luigi Fiano e Ardesia Coco

ノリタケは、修道女宿舎でAMDL Circleとフェイ・トゥーグッドの新作、ペインターのライブパフォーマンスを披露。
今年の舞台は、戦後に遡るバッジョ軍事病院跡と巨匠フランコ・アルビーニによるペスタリーニ邸。131の出展の中で際立ったのは、伝統や素材、場所の記憶を現代の暮らしへと更新する試みでした。
病院跡では、ノリタケが陶磁器の新境地を探る展示、レオ・ラゲとヴェルサやSPREADによるインスタレーションなどが点在。
30年代の邸宅(Pestarini邸)を会場として初公開

フランコ・アルビーニによるモダニズム建築の傑作。今年一般に初公開され、カッシーナによるアルビーニの復刻家具の展示を軸に、エリーザ・ウベルティによるコンクリートの造形作品やソフィー・ドリーズによるテキスタイルインスタレーションを展開。©Piergiorgio Sorgetti

山田春奈と小林弘和によるクリエイティブユニット、SPREADは、幾重にも重なるドレープで境界の曖昧さを問うインスタレーションを展開。
一方、ペスタリーニ邸では、カッシーナによるアルビーニの復刻家具を軸に、邸宅の記憶と呼応する現代デザインが展開。忘れられつつある価値を次代へ手渡すデザインの力を示していました。
ミラノデザインウィーク街角ルポ
街の日常文化とデザインの共演
デザインウィークで見えた“継承されるデザイン”への問いは、街の日常生活にも波及! ミラノでは、昔ながらのカフェやオステリアが単なる飲食の場ではなく、人が集い、語らい、街の時間を蓄える文化資産として息づいてきました。ミラノデザインウィークでは、そんな老舗空間を現代ブランドが再解釈する試みが新鮮に映りました。ファッションブランドの「マルニ」は1936年創業の「クッキ」を、「マリメッコ」は伝統的な「オステリア・グランド・ホテル」を舞台に、それぞれの色彩や模様、食の体験を重ねました。そこに共通していたのは、単なるポップアップではなく、ミラノの日常の習慣や社交の伝統を、今を生きる人々の感性へと開くまなざし。街に受け継がれる文化を、新たな暮らしの歓びに開花させていました。
©Courtesy of Marni
Marni × Cucchi(クッキ)1936年創業のパスティッチェリア、クッキを、マルニの色彩とグラフィックで再解釈するプロジェクト。共同デザインによるカップ・皿からユニフォーム、包装紙に至るまでが空間を彩る。朝のカプチーノから夕方のアペリティーボまで、ミラネーゼの日常儀礼を鮮やかに祝福。
3点©Andrea Venturini
MARIMEKKO × Osteria Grand Hotelイタリアの伝統料理をもてなす20世紀初頭に遡るナヴィリオ地区のオステリアを、マリメッコの花柄が咲く空間へ。新作「Kukastakukkaan」のテキスタイルや限定陶器、花がモチーフのアペリティーボメニューを通じ、五感で味わう暮らしの喜びをミラネーゼの集いの文化の中に咲かせました。
リッツウェル
ミラノサローネ出展16回目──
素材との対話と繊細な手仕事で世界に挑む
世界挑戦を掲げ、2008年にミラノサローネ初出展を果たしたリッツウェル。16回目を迎えた今回も、長年の実績が高く評価され、世界のハイブランドがひしめくフィエラ会場の「デザインホール9」での展示に。もはや常連の風格を漂わせます。
リビングテーブルは、代表兼クリエイティブディレクターの宮本晋作さんがデザインした新作「GT TABLE」。二重構造のスチール脚の一部に厚革があしらわれ、リッツウェルらしい手仕事の温もりが。
床の間風に家具を高く配置し た外観。一躍、人気ブースに押し上げる契機となった「TOKONOMA」展示が今回、部屋に進化。
職人の実演は2022年から。職人に対するリスペクト、手仕事へのこだわりがストレートに伝わる展示が現地で支持された。
ミラノサローネ2026のテーマは「ゆらぎの均衡」。素材の美しさを最大限に引き出すことを大切にしてきた同社が、今回、初めて石に挑戦。「石は長い歳月をかけて作られたもの。その歴史に敬意を払い、豊かで、深みのある素材そのものの魅力を前面に押し出すべきと考えた」と宮本晋作代表。木、金属、革などの素材に、新しいマテリアルが加わることで、異素材が微妙なバランスで響き合い、リッツウェルの世界観をさらに奥行きのあるものにしています。
「VESPER armchair」のダイニング空間。

ミラノサローネで発表された新作「VESPER armchair」。たっぷりとしていて、体をやさしく受け止める座り心地。
ブランドの真骨頂ともいえる繊細な手仕事と素材との対話で、一層の高みへ──世界挑戦はまだまだ続きます。
お問い合わせ/リッツウェル東京ショールーム
TEL:03 5772 3460
http://ritzwell.com
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