連載「12か月のフラワーリース」 世田谷区にアトリエを構える「宙花(そらはな)」のフローリスト戸部秀介さんが作る、季節のフラワーリースを毎月紹介します。空間を華やかに彩ってくれるフラワーリースと共に、花のある暮らしを始めましょう。
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ムーンダストを主役に、紫の濃淡と白を重ねて立体感のあるデザインに

5月の生花のリース。
戸部秀介/Shusuke Tobe35歳の時にフローリストへと転身。大手生花店、フランス人フラワーデザイナーの店で経験を積み、2016年に東京都世田谷区の中町に「宙花〜sora hana~」をオープン。リースを得意とし、ワークショップにも力を注ぐ。インスタグラム@sorahana.jp
言葉にしきれない気持ちをフラワーリースに込めて
花を贈るとき、そこにはそれぞれの人の想いが込められています。お祝いごとや記念日などおめでたい気持ちで贈ることもあれば、大切な人とのお別れに、哀しい気持ちで贈ることもある──戸部さんは、店頭に立つなかでそんな“花の持つ特別さ”を実感してきました。
「僕が花屋で働き始めた頃、印象に残っている出来事があります。亡くなったご友人のために枕花を求めて来店された高校生の女の子たちの接客をしたんです。当時はまったく違う業界から転職したばかりで、余裕もなく、とにかく必死で。そんな中でその子たちの接客をしたのですが、何もできなかったという思いが強く残っています。仲間を亡くした子たちに、通り一遍のことしか言えなかった。申し訳なさと悔しさが残りました。その経験から、もっと学ばねばと。花の形や色、その花の育ち方、花言葉、葉っぱ……お客さまの気持ちを表現したいと考えるようになりました」
そんな戸部さんの母の日の思い出のひとつが、花屋でアルバイトをしていたときのこと。
「ちょうど母の日の時期で、店頭に立っていたら、小学生くらいの男の子がお母さんのためにカーネーションを買いに来たんです。でも、手にしていたお金では足りず、買えないまま帰っていきました。このときも、別のやり方があっただろうと。なんでマニュアルに書いてあるような通り一遍のことしか言えなかったのかと悔いが残っています」
母の日という特別な日に、母を想って花を選ぶ。その純粋な気持ちに触れた経験は、今も心に残っていると戸部さんは言います。今回のリースは、そんな母の日に向けて制作されたもの。主役に据えたのは、青系のカーネーション「ムーンダスト」です。
「なんといっても、ムーンダストのこの色がとてもキレイで、真っ先に使いたいと思いました。カーネーションは赤やピンクのイメージが強い花ですが、この品種は深みのあるパープルとブルーをまとい、従来のイメージとはまた違った趣を見せてくれます。グラデーションが美しく、ほかの花とも合わせやすいのも魅力です」
カーネーションは花弁が密に重なり合い、押されても形が崩れにくいという特性があるため、花々がぎっしり詰まったデザインでも存在感を失わずに華を添えられるのだそう。また、カーネーションの花弁の凹凸とグラデーションが生む立体感や陰影が、リース全体に奥行きをもたらします。
リースのカラーデザインは、ムーンダストの色を中心に、トーンの近い花々を重ねながら、白をアクセントに加えて軽やかさを演出。気品ある紫に偏りすぎず、スプレーバラ‘リトルシルバー’や‘コットンカップ’を合わせ、可愛らしさも感じられるバランスに仕上げました。
「紫だけだと少し重くなるので、白を入れてやわらかさを出しています。あくまで主役はムーンダストなので、ほかの花は引き立て役として入れています」
母の日に贈られる花でありながら、どこか落ち着いた表情をもつカーネーション‘ムーンダスト’のリース。5月という、花々が豊かに咲きそろう季節に、贈る人の想いにそっと寄り添いながら、見る人の心にも静かな余韻を残してくれそうです。
使用花材
カーネーション‘ムーンダスト アクアブルー’。青みを帯びたカーネーション。リースの主役として気品ある存在感を放ちます。
スプレーバラ‘リトルシルバー’。可愛らしさとエレガントさが共存する、スプレー咲きの品種。淡い紫の繊細な色合いが特徴。
スプレーバラ‘コットンカップ’。オフホワイトの可憐な花が、若々しさと軽やかさをプラスします。
バラ‘リパルティール’。ほんのりピンクを帯びた色合いで、華やかさを演出するアクセントに。
宿根スイートピー‘ブルーフレグランス’。丸みのあるフォルムが所々でやわらかな印象を生み出しています。
リシアンサス‘プリマラベンダー’。フリル状の花弁が、ムーンダストと響き合う優美な質感を演出。
ストック’アイアンマリン’。小花の連なりが、全体の密度と奥行きを引き締めます。
Variations

宿根スイートピー(品種無し)、カーネーション‘オルゴール’、 カーネーション‘セレヴィーヌワイン’、 カーネーション‘ミスビューティー’、シレネ サクラコマチ
華やかなピンクから深みのあるワインカラーまで、異なる表情のカーネーションを重ねたリース。宿根スイートピーやサクラコマチが軽やかな動きを添え、甘やかでありながらも奥行きのある、可憐で豊かな表情に仕上げています。
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