〔特集〕名家の雛祭りと今様のお雛飾り 桃の節句を祝う 〈第1章〉 公家の年中行事を守り、受け継いでいる京都・冷泉家。桃の花がほころぶ旧暦の3月3日。9組の内裏雛や数々の御所人形が雛壇を賑やかに彩り、華やかでゆかしい雛祭りを今に伝えます。
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京都・冷泉家の雛祭り

雛人形を片づける前日に、お供えした祝い膳のお相伴にあずかるのが冷泉家の習わし。子どもたちの楽しみは最高潮に。
脈々と受け継がれる華やかな公家の年中行事
冷泉家では、輿入れの際に花嫁が嫁入り道具の一つとして、一対の内裏雛を持参するのが習わしでした。衣装も表情もさまざまに異なる9組の内裏雛が、それぞれの時代と歴史を物語ります。
袿(うちき)に袴、また直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)など現在の装束との違いも興味深い。江戸時代の古いものには着せ替え人形もある
江戸時代まで遡れば、幼くして嫁ぐ姫たちにとって、雛人形はよき遊び相手でもあったのでしょう。同時に、ともに年を重ねる夫婦の理想の形が投影されていたのかもしれません。
雛壇には、後桜町天皇や貞明皇后から拝領した御所人形も一緒に飾られます。なかでもひときわ大きく、大切にされてきたのが、長寿と健康の象徴である西王母(せいおうぼ)の御所人形です。
不老不死を願う武帝に、三千年に一度実る桃をもたらしたという中国の故事から、桃の化身とも考えられています。西王母こそが桃の節句の主人公であり、雛祭りには欠かせない存在というわけです。
祝い膳のご馳走とともに、お重にも季節の味を彩り豊かに盛り込んで。

雛道具のお懸盤(かけばん)に盛り合わせるのは、お赤飯、豆腐の白味噌汁、焼いた干しがれい、大根なます、炊き合わせ。「お人形や道具でままごと遊びをした後で、ご馳走をいただく。それは楽しかったですわ」と貴実子さん。
「そうした物語や本来の意味が伝わるといいなと思いますね」と、25代当主・冷泉為人氏夫人の貴実子さんは語ります。
「現代の暮らしでは雛壇を飾るなど、なかなか難しいこと。でも、桃の花一輪、お雛さんの絵一枚でも飾って、秘められた物語に思いを馳せる。そうすることで、生活の楽しみが感じられるのではと思うのです」。
姫君たちが愛した伝来の雛人形

向かって右に男雛、左に女雛。明治維新以降、関東では西洋に倣い反対の位置が普及したが、関西では古式に則る。

きれいな晴れ着を着て雛祭りに遊ぶ。桃の節句は、今も昔も女の子にとって心華やぐ一日。

唐風の衣装をまとい、大きな団扇を備えた西王母の御所人形。堂々たる存在感で、冷泉家の雛祭りを見守り続けてきた。
冷泉 渚(れいぜい・なぎさ)1981年京都生まれ。第24代当主・為任氏の孫。京都嵯峨芸術大学(現・嵯峨美術大学)にて日本画を学び、京都市立芸術大学大学院博士(後期)課程修了。博士(美術)取得。その後、宮内庁正倉院事務所の技官、平等院で学芸員を歴任。2022年からは、公益財団法人「冷泉家時雨亭文庫」の学芸課長を務める。2023年3月、冷泉家の後継者に決まる。
冷泉貴実子(れいぜい・きみこ)1947年京都生まれ。第24代当主・為任氏の長女で、第25代当主・為人氏夫人。京都女子大学大学院修士課程修了。公益財団法人冷泉家時雨亭文庫常務理事、事務局長。
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