藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
記事一覧はこちら>>
1月の花「ファームたかお」さんのスイートピー

「ファームたかお」さんのオリジナルスイートピー‘ペッシュ’を使い、お姉さんの古希を祝う妹さんからの贈り花を制作しました。‘ラックス アリアドネ’、‘あけぼの’、‘オルレアン’の3種のラナンキュラスに、シンビジウムの‘桐壺’と‘情熱’を合わせ、アスパラガス・スプレンゲリーをあしらったブーケです。モモのような淡いピンクのスイートピーが、蝶が舞うように軽やか。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「フルール トレモロ」オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com @fleurstremolo
無農薬栽培にこだわるオリジナルなスイートピー
11月中旬から4月まで出回るスイートピーは、花色がとても豊富なうえ、毎年のように新しい品種が登場するので、贈り花に欠かせない存在です。今回はいつも私の心をときめかせる新品種を生み出してくださる、岡山県倉敷市の花農家「ファームたかお」さんのスイートピーをご紹介します。
「ファームたかお」さんがあるのは倉敷市船穂町。ここは古くから切り花栽培が盛んに行われている地区で、ここで栽培されるスイートピーはクオリティーが高く、「船穂のスイートピー」として知られています。
「ファームたかお」さんのスイートピーのいちばんの特徴は、農薬を一切使わずに栽培していることです。2017年に土壌消毒を太陽熱と微生物の力を借りて行う方法に切り替え、同時に殺菌剤の使用をやめ、2020年からはすべての殺虫剤も使用廃止に。一時は土壌病原菌の猛反撃に遭い、収穫量が減ったものの、自然由来のもののみを使用した栽培方法を研究し、現在では元の収穫量に戻すことができたそうです。
環境先進国に学ぶサステナブルな農業を目指そうと考えてのことですが、身近なことでいえば、農場のスタッフや花市場で花に触れる多くの方々の健康を考えたうえでの栽培方法の転換だったそうです。それは花を素手で扱う花屋にとっても、このうえない安心感をもたらし、贈り花を楽しむ皆様にも喜んでいただけると思います。
「ファームたかお」さんオリジナルのスイートピー‘ペッシュ’。ペッシュとはフランス語でモモのこと。白にうっすらピンクがのる花色はまさに名前通りのかわいらしさです。 左は従来から出回る直線的な茎で葉がないタイプで、花と花の間が詰まっています。右は葉とつるをそのまま残した枝付きのスイートピー。‘ペッシュ’は2タイプの仕立てで出荷しています。制作したい贈り花に合わせて選べるので、とても助かっています。
「ファームたかお」さんには素敵なオリジナル品種が多くありますが、その仕立て方も大きな魅力です。2021年の年末にリリースされた夜空のように濃く美しいブルーの品種‘夜間飛行’は、葉を残した自然な仕立てで、枝付きスイートピーと呼ばれます。一般的なスイートピーは、まっすぐな茎に葉がない状態なので、枝付きスイートピーのナチュラルな花姿はとても新鮮に感じられ、すっかりファンになってしまいました。枝付きの仕立てをしている生産者さんは少ないので、この‘夜間飛行’は貴重な存在です。さらにモモのように淡いピンクが魅力の‘ペッシュ’でも枝付きタイプがあり、これも私の大のお気に入りです。
新しい品種を生み出す作業をしているのは、おもに農場主の高尾英克さん。以前は医療精密機器の開発に携わっていた技術者で、その我慢強い研究肌が、時間を必要とする育種や土壌改良に向いていたのではないかと個人的に感じています。
そして、奥様の亜由美さんもまた、「ファームたかお」のスイートピーにとってはなくてはならぬ存在。亜由美さんの高いスキルから生み出された染めのスイートピー‘アッシュブルー’は、2021年に「フラワー・オブ・ザ・イヤー・OTA」の新商品奨励賞を受賞しました。染めの切り花の受賞はこの品種が初めてで、染めの切り花の魅力の認知に大きく貢献したと思います。最近ではアンティーク感たっぷりのピンクの染め品種‘メロウ’もデビューしましたが、その魅力的な花色は亜由美さんのセンスによるものだと感じています。これから先、どんな染め品種が誕生していくのか、楽しみでなりません。
さて、「ファームたかお」さんからいただく「ワクワク」をもう一つご紹介します。「ファームたかお」さんでは毎年、スイートピーの出荷が終わりに近づく4月下旬〜5月上旬にかけて「花摘み会」が開催されます。その会にお招きいただき、参加者と一緒に摘み取ったスイートピーでブーケを束ねるワークショップに参加させていただいて8年になります。花農家にとってハウスを開放することはとても手間のかかることで、毎年の開催に感謝の気持ちでいっぱいです。フォトギャラリーの最後でその様子もご紹介しますので、ぜひご覧になってください。
・
フォトギャラリーはこちら>>「ファームたかお」さんのスイートピーを使ったブーケ&アレンジメント

‘ペッシュ’の淡いピンクに、ラナンキュラスやパンジー、アスチルベなど春のパステルカラーを合わせたブーケを誕生日の贈り花に。ニゲラ‘ミスジーキル’の水色が加わるとぐっと大人っぽくエレガントな印象になります。ラナンキュラスの‘リナレモン’と‘オルレアン’、パンジー‘カルメン’、アスチルベ‘アプリコット’などを使用。アスパラガス・スプレンゲリーなどのリーフをたっぷり加えてナチュラルな印象に仕上げました。

高尾英克さんがどうしても枝付きで出荷したくて仕立てを工夫した‘夜間飛行’。夜空の碧の深さを連想させる花色に魅了されました。少しマットな質感の花弁は、収穫する時期、また、光線の具合で微妙に色みが異なって見えるそうです。

枝付きスイートピーの‘夜間飛行’にもう1種、人気のある枝付きスイートピーの‘ブルーフレグランス’を合わせて誕生日の贈り花に。ラナンキュラスの‘モロッコ HMラブ’と‘ペジェ’、スカビオサ‘ハルル’を合わせ、銀葉アカシアをあしらいました。春のパープル系アレンジは、大人っぽいエレガントさを感じさせます。

枝付きスイートピー‘夜間飛行’に淡いオレンジ色のバラ‘玉かずら’を合わせると、色の対比からより立体感のあるアレンジに。ほかにラナンキュラス‘リナレモン’、リューココリーネ‘ストライプピンク’を使用。エンドウマメも加え、つるの動きが楽しい雰囲気を出しています。誕生日の贈り花です。