1月・文房四宝
三枝政代(料理家)明けましておめでとうございます。
お正月を迎えた東京の街はいつもの喧噪をひそめ、穏やかな空気に包まれています。
古来中国で「文房四宝」と呼ばれる書斎の道具、硯・筆・墨・紙。茶道では「文房飾り」として床の間などに使われる。硯箱は家族から受け継いだ蒔絵師・高井泰令の品。江戸時代のうさぎの水滴はご主人の好み。
そんななか、硯と向き合い、ただただ無心に墨をするひとときは、私にとって新年に欠かせない静謐な時間。
「墨は強くすらないでね、ゆっくりとね」とたびたび言っていた母の声を思い出しながら、そっと筆を取り、たっぷりと墨を含ませます。
友人知人一人ひとりに語りかける気持ちで新春のご挨拶をしたためていくうちに、時を忘れることもしばしば。
効率ばかりが求められる今だからこそ、こんな日々の余白を大切にしていきたいもの。
ときおり立ち止まって、季節の美しさを体じゅうで味わう贅沢を忘れないでいたい。
その姿が羽根突きの羽根に似ていることから、縁起物とされる「つくばね」。新年を迎える茶花にあしらったり、おせち料理に添えたりと、小さいながらもお正月の雰囲気を大きく演出。
三枝政代(さえぐさ・まさよ)
1941年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業。東京・青山で紹介制の料理教室を50年以上開催。四季を大切にした料理としつらいを提案している。Instagram:@msy_foodandhome_design
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