12月・クリスマス
三枝政代(料理家)日暮れが駆け足になるこの季節、家路につくたびに冬の匂いを感じます。
柚子湯に身を沈め、過ぎゆく日々を慈しむひととき。そんな穏やかな時間のなかでも、クリスマスの模様替えを思うと心がはやります。
ヤドリギを玄関にそっと吊るし、キャンドルに命を吹きこんで。静かな存在感を放つツリーはリビングの片隅に。
中世のものと思われる羊皮紙の楽譜。譜面は、イースターの復活徹夜祭で歌うグレゴリオ聖歌とも。赤いキャンドルに火が灯ると、リビングは穏やかな空気に包まれる。
けれど何より我が家のクリスマスを特別なものにしてくれるのは、夫が贈ってくれた、羊皮紙に描かれた古いグレゴリオ聖歌の楽譜です。
笑ったこと、泣いたこと、そして心に刻まれた忘れられない思い出――。
楽譜が見守るなか、一年に思いを馳せる語らいの光は揺らめき、温かな聖夜はゆっくりと更けていきます。
来たる2026年への期待と希望を込めて。メリークリスマス。
クリスマス料理に、さりげない華やかさを添えてくれる赤いザクロの実は、まるで小さな宝石のよう。聖夜の食卓は、赤をテーマにした料理やセッティングで迎える。
三枝政代(さえぐさ・まさよ)
1941年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業。東京・青山で紹介制の料理教室を50年以上開催。四季を大切にした料理としつらいを提案している。Instagram:@msy_foodandhome_design
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