藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。
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11月の花「秋のピンク」

お孫さんの誕生日を祝う贈り花です。あでやかなピンクのバラ‘オール4ラブ+’とアスチルベ‘ライトピンク’、濃淡のピンクを引き立て、秋らしい雰囲気をもたらしているのが鮮やかに紅葉したヒペリカム‘マジカルシーズンズ’です。淡いピンクに色づく穂が繊細で美しいルビーグラスも加え、季節感たっぷりのアレンジに。
藤野幸信/Yukinobu Fujino広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「フルール トレモロ」オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com @fleurstremolo
こっくりした秋のピンクは大人っぽくエレガント!
花色にはニュアンスの異なるピンクがとても豊富にあります。ピンクはどの年齢層にも好まれる色なので、贈り花でもいちばん多く利用する花色ではないかと思います。
2025年3月7日配信の記事では、春のピンクを集めたので、今回は秋のピンクの花とそれを使った贈り花をご紹介します。かわいらしく明るい雰囲気の春のピンクと比べると、秋のピンクにはどこか大人っぽく、ドラマチックな雰囲気が感じられるので、その違いに注目してみてください。
バラやダリア、リシアンサス、マムなどメインでよく使う大きな花は、秋になると花サイズがぐっと大きくなります。同時に昼夜の寒暖差から花色がより深みを増して鮮やかになり、そのインパクトある姿を眺めていると、「本当にきれいだー」と、思わず感情がぐっとこみ上げてきます。秋のピンクがドラマチックに感じられるのは、そんな感情のせいかもしれません。
こっくりしたピンクによく似合うのが、この時期に出回るさまざまな紅葉です。紅葉を少し加えるだけで、季節感がまっすぐ伝わり、春のピンクとは印象が異なる贈り花になります。よく利用するのが紅葉ヒペリカムで、鮮やかに色づいた葉が出回ります。赤みのある華やかな茶色を背景にするとピンクのエレガントさがいっそう引き立ち、秋の風情たっぷりの贈り花に仕上がります。
「JAながのみゆき」から届いた紅葉ヒペリカムの‘マジカルシーズンズ’。葉色のグラデーションが美しく、葉のもちも抜群です。葉に混じり、黄色の花や赤茶色の実もついていて、贈り花に豊かな表情を与えてくれます。‘マジカル’シリーズには微妙に葉色の異なるラインナップが揃っているので、この時期に頻繁に利用しています。
さて、秋にしか出回らないダイヤモンドリリーにも濃淡ピンクがあり、この時期の贈り花によく利用します。花弁の美しい輝きはほかの花にはない大きな魅力です。また、ピンクと白の実がかわいらしいシンフォリカルポスも、花にはない立体的な形状が変化をもたらしてくれます。とくに小さな実が連なる‘ワイルドゼロ’という品種は、深く味わいのあるピンクが魅力的でインパクトがあります。
ご紹介し出すときりがないくらい秋のピンクは種類豊富!ぜひこの時期の贈り花の花色にピンクをご指名ください。
秋のピンクの花を使ったブーケ&アレンジメント

お客様を迎える室内に飾る花を、というオーダーをいただき、淡いピンクのダイヤモンドリリーとリシアンサス‘ボヤージュ ピンクシェイク’を使ったブーケを制作しました。アクセントに加えたのは濃いピンクのカラー‘トーキョー’。ちらちらと見える赤い実はこの時期に出回るローズヒップ‘アメージングファンタジー’です。淡いピンクにあわせ、シルバーリーフのアカシア‘ブルーブッシュ’とフェイジョアをあしらって、全体を優しいトーンにまとめました。

ダイヤモンドリリーといえば、東京都清瀬市の「横山園芸」さん。横山さんは生産者であると同時に育種家でもあり、ダイヤモンドリリーの品種を豊富に保有しています。こちらからオーダーしなくても、時期が来るとさまざまな花色をミックスして送ってくださいます。キラキラと輝く花弁の美しさはしばし見入ってしまうほど!

デコラ咲きのマム‘ララバイ’と「横山園芸」さんのダイヤモンドリリーの花合わせで、誕生日を祝う贈り花を制作。透明感のある薄紫のリシアンサス‘NFオトナラベンダー’をアクセントに加えると、上品で大人っぽいピンクアレンジに。原種系の紅葉ヒペリカムが季節感をもたらしてくれます。

11月6日は「いいマムの日」。全国からさまざまな種類のマムが出荷されるので、この日の前後には豊富なラインナップから好みのマムを選ぶことができます。これは「JA信州諏訪」から届いた‘ララバイ’。デコラ咲きならではの花形の美しさに惚れ惚れ。