9月・風遊ぶ食卓
三枝政代(料理家)雨上がり、風にそよぐ草木の気配もすぐそばに感じられます。カナカナと鳴くひぐらしの声が一日の疲れを癒してくれるよう。
9月に入り、山荘のある那須塩原の野山は、錦秋の兆しを見せ始め、柿、どんぐり、木の実など保存食作りに追われます。
軒先には、橙色の干し柿が暖簾のように吊るされ、秋風に揺れるさまは、ひときわ風情ある里山の情景を織りなしています。
自然の実りに触れ、季節を感じながら果実酒やジャムなどを作るのも楽しみの一つ。秋も深くなれば、たわわに実った柿を吊るして干し柿に。
夕暮れ時の薄明かりが気持ちよく、家族や気のおけない友とのんびり庭で食卓を囲んでいると、秋風が心地よく頰を撫で、昼間の残りの温かさがじんわりと体を包み込みます。
テーブルには、採れたての夏野菜の残り香と、これから旬を迎える山の恵みの大根料理が彩りを添えます。
秋色のボルドーをポイントにテーブルセッティング。遊び心ある鹿のキャンドルがさりげなくアクセントを加える。食卓には、那須塩原の名産の大根を主役にした料理が並ぶ。
三枝政代(さえぐさ・まさよ)
1941年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業。東京・青山で紹介制の料理教室を50年以上開催。四季を大切にした料理としつらいを提案している。Instagram:@msy_foodandhome_design
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