7月・酒籠
三枝政代(料理家)庭の芝生の上で、テラスのテーブルで。
ときには旅先の街のどこかで。
気分に応じてこの酒籠を置いたところが、その日の心弾む集いの場に早変わりします。
針箱やはぎれ入れ、ときにはお菓子を入れたりとご家族が重宝していたバスケットを酒籠に。ご主人がセレクトされた備前焼の徳利、染付や白磁の盃、シルバーのウィスキースキットルを今も大切に残す。
茶籠で野点に興じるように、主人はお気に入りの酒籠を外に持ち出しては、気ままに月見酒と取り合わせを楽しんでいました。
小さいながらも、心豊かな時間をもたらしてくれる趣のあるお道具。機能美も備えた酒籠や茶籠は、花鳥風月を愛でる日本人ならではのピクニックバスケットなのかもしれません。
夏の初めのこの季節、風が涼やかになった黄昏どきにも酒籠は似合いそうです。
松竹梅が描かれた大中小の酒器とサイコロを入れ子に収めると、手のひらにのるほどの小ささ。順番にサイコロを転がし、出た目の柄の器にお酒を注いで飲む、という酒席に花を添えるウイットある焼き物だ。「酒は百薬の長」が口癖だったご主人へ、お父様が贈られたもの。
三枝政代(さえぐさ・まさよ)
1941年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業。東京・青山で紹介制の料理教室を50年以上開催。四季を大切にした料理としつらいを提案している。
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