6月・デキャンタ
三枝政代(料理家)デキャンタにワインやウィスキーを注いでしばし時をおけば、ひときわまろやかな香りをまといます。
フォルムやディテール、それぞれの個性的な美しさも見飽きることがありません。
大切なものだから、使ってこそ価値がある。「ラリック」やシアトルの骨董店で一目ぼれしたもの、ボヘミアンデキャンタ、大正期の日本のデキャンタなど、さまざまなデザインのデキャンタが食卓を飾る。
この中には何が入っているのかしら?
食卓にデキャンタがあると、まるでそこだけ柔らかなスポットライトが当たっているよう。クリスタルの深い深いきらめきに、自分の中まで見透かされてしまいそうな錯覚を覚えます。
赤ワインをそっとそっと移し替えていた主人の真剣な横顔。その様子を眺めていたあの頃。
デキャンタ、とりわけアンティークのデキャンタに強く心惹かれるのは、そこに潜むロマンを感じるからかもしれません。
この中に眠っているのは「月桂樹のロザーリオ」。ロザーリオとはアルコール度数の低いリキュールのこと。ローリエの葉をホワイトリカーに漬け、数か月後にこすと、果実酒のような甘みのある食後酒になる。19世紀のボヘミアンショットグラスと。
三枝政代(さえぐさ・まさよ)
1941年、東京都生まれ。東京藝術大学作曲科卒業。東京・青山で紹介制の料理教室を50年以上開催。四季を大切にした料理としつらいを提案している。
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