連載「12か月のフラワーリース」 世田谷区にアトリエを構える「宙花(そらはな)」のフローリスト戸部秀介さんが作る、季節のフラワーリースを毎月紹介します。空間を華やかに彩ってくれるフラワーリースと共に、花のある暮らしを始めましょう。
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5月のリース「サンキライのリース」

ワイヤーのリースベースを利用した緑のサンキライのフレッシュリースです。ほかに葉裏がシルバー色のギンバグミ、葉が小さなユーカリを使い、淡いピンクのスターチスをアクセントに加えています。いろいろな葉色に混じるサンキライの透明感ある実からフレッシュ感が伝わります。
戸部秀介/Shusuke Tobe35歳の時にフローリストへと転身。大手生花店、フランス人フラワーデザイナーの店で経験を積み、2016年に東京都世田谷区の中町に「宙花〜sora hana~」をオープン。リースを得意とし、ワークショップにも力を注ぐ。インスタグラム@sorahana.jp
緑色の実のフレッシュさが、爽やかな初夏の雰囲気にぴったり!
サンキライはサルトリイバラ科のつる性宿根草、または半低木です。長いつるは細めの木の枝ほどの太さがあります。4月に小さな花が咲き、花後に実がつきます。その実が大きくなる5月〜6月、熟す前の緑色の時期に切り花として出回ります。浅い緑色はフレッシュさを感じさせ、また、花とは異なる立体感のある形状も魅力的で、この時期のサンキライでよく初夏のリースを制作します。
ワイヤーや木のつるを利用したリースベースでも作りますが、サンキライのつるそのものを巻いたリースもナチュラルな風情で人気があります。
サンキライのつるは80〜100cmほどで市販され、根元が太く、先端にいくほど細くなります。1本でサークルを作ると太いところと細いところができてバランスが悪くなるので、数本をずらして重ね、バランスのよいサークルを作ります。
輪にした後に、バランスを見ながら葉や実が多く重たい箇所を剪定していきます。つるをそのまま利用したリースでも、できるだけ整った円形にするというのが私のリース制作のこだわりでもあるので……。
緑色の実はそのまま熟すことなくしわが寄ってしまうので、初夏の時期だけの美しさですが、この時期に利用できる緑色の実は少ないので、ぜひその爽やかさをインテリアに活かしてみてください。
8月になると、少し赤みを帯びた実色のサンキライも出回り、クリスマス前には真っ赤になった実が出回ります。真っ赤な実はドライになっても色褪せることはありません。季節ごとに異なる実色で違う印象を楽しめるサンキライは、リースの花材としてとても魅力的だと思います。
サンキライとクジャクヒバ、ダスティーミラー(シロタエギク)の緑鮮やかなリースです。クジャクヒバの繊細な葉とサンキライの大きな葉の対比からリズム感ある仕上がりに。サンキライの丸い実が入るだけでかわいらしい印象も感じられます。木のつるのリースベースを利用。

サンキライのつるを利用したリースはナチュラルな印象でとても爽やか。つるを巻いたサークルをよくご覧ください。きれいな円になっているでしょう!あちこち向く葉やサークルからはみ出す実の動きも楽しい!洋風のインテリアだけでなく、和室にも合うテイストだと思います。

こちらもサンキライのみのリースですが、葉や実の付き方が違うと印象も少し異なります。自然のつるをそのまま生かすので、まったく同じリースはできないところもまたおもしろいところです。

8月後半には赤く色付き始めたサンキライが出回りだします。緑からオレンジ色、そして赤への自然なグラデーションが楽しめるのがこの時期のサンキライの魅力です。つるに葉はついているのですが、このリースでは葉はすべて取り除き、実色を目立たせました。

クリスマス前には真っ赤になったサンキライが出回ります。コニファーなどにアクセントとして赤い実を加えたクリスマスリースをよく作りますが、とてもきれいなサンキライを入手できたので、つるも利用してリースにしてみました。鮮やかな赤のつやつやの実が魅力的。