インテリア

[香川漆芸×フリッツ・ハンセン]世にも美しい“漆モダン”な椅子

2025.02.28

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香川漆芸とフリッツ・ハンセンによる“漆モダン”な椅子ができるまで

東京の外苑前にあるフリッツ・ハンセン直営店。

東京の外苑前にあるフリッツ・ハンセン直営店。

デンマークのデザインと香川の職人技が出合うとき

150年以上の歴史を持つデンマークの家具ブランド「フリッツ・ハンセン」。その名は、創業者であるデンマーク南東部ロラン島出身の才気溢れる家具職人に由来します。

フリッツと息子のクリスチャンは高品質な家具づくりで確固たる地位を築くと、スチーム加工による曲げ木技術の確立や、デンマーク初のスチール製家具の製作など、新しい試みを次々に成功。そうした技術を生かし、アルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナーといった当代のトップデザイナーとともに家具を製作するようになりました。シンプルでモダンかつ独創的な椅子やテーブルは、時代を超えて世界中の人々に愛され続けています。

優れた建築家で家具デザイナーだったアルネ・ヤコブセン(1902〜71年)。

優れた建築家で家具デザイナーだったアルネ・ヤコブセン(1902〜71年)。

今回、「香川漆芸」の加飾が施された3種類の椅子、「セブンチェア」「グランプリチェア」「アリンコチェア」もヤコブセンの名作。1955年に発表されたセブンチェアは、累計販売数700万脚以上の大ベストセラーです。 香川漆芸とのプロジェクトの話が持ち上がった際、「フリッツ・ハンセン ジャパン」代表の鈴木利昌さんは、運命的なものを感じたといいます。


「丸亀市の本島(ほんじま)全体を舞台にイベントを行うなど、香川県とはご縁があります。セブンチェアが70周年という記念の年に、香川を代表する伝統工芸とプロジェクトができて本当に嬉しいです。デンマークの本社も優れたクラフツマンシップには常々高いリスペクトを持っているので、すぐに賛同を得られました。ブランドとしての条件は『椅子の命であるフォルムは変えないこと』のみ。作家の皆さんの発想を尊重させていただきました」。

プロジェクトの過程で鈴木さんが直面したのは、でき上がりをイメージすることの難しさ。香川漆芸の繊細な技法や色合いを言葉やデザイン画から理解するのは容易なことではありませんでした。

そこで、鈴木さんは高松へ2度足を運び、制作の様子を見学。香川漆芸への理解を深めました。「実際に見て触れて、彫りの繊細さや立体感、色の深みや肌触りに驚かされました」。

完成した5作品は、監修を務めた人間国宝の山下義人さんも「香川の三技法である『蒟醤』『存清』『彫漆』が揃ってよく表現されていて、非常に見応えがあります」と評するでき映え。それぞれが世界に一つの“漆モダン”な椅子が誕生しました。

人間国宝 山下義人(よしと)
1951年香川県生まれ。人間国宝の磯井正美氏に蒟醤を、田口善国氏に蒔絵を学ぶ。2007年紫綬褒章受章。13年重要無形文化財「蒟醤」保持者(人間国宝)認定。21年旭日小綬章受章。香川漆芸のため、自らの創作と後進の育成に情熱を注いでいる。

1951年香川県生まれ。人間国宝の磯井正美氏に蒟醤を、田口善国氏に蒔絵を学ぶ。2007年紫綬褒章受章。13年重要無形文化財「蒟醤」保持者(人間国宝)認定。21年旭日小綬章受章。香川漆芸のため、自らの創作と後進の育成に情熱を注いでいる。


[impression]藪内江美/蒟醤1980年奈良県生まれ。香川県漆芸研究所研究 生課程・研究員課程修了。写真右は砥石を用い て、表面の文様を研ぎ出しているところ。「円 の一部は月を連想する人が多いかもしれません が、特定のモチーフはありません。自由に想像 して楽しんでいただければと思います」。

1980年奈良県生まれ。香川県漆芸研究所研究生課程・研究員課程修了。写真右は砥石を用いて、表面の文様を研ぎ出しているところ。「円の一部は月を連想する人が多いかもしれませんが、特定のモチーフはありません。自由に想像して楽しんでいただければと思います」。


[平和の実り]辻 孝史/存清

1973年香川県生まれ。蒔絵作家の家の4代目。 香川県漆芸研究所研究員課程修了。重要無形文 化財「蒟醤」保持者の太田 儔 ひとし 氏に師事。写真右 は自ら配合して用いた色漆の数々。「オリーブ の枝をのびのびと配置できてよかった。眺めて、 座って、穏やかな気持ちになってほしいです」。

1973年香川県生まれ。蒔絵作家の家の4代目。香川県漆芸研究所研究員課程修了。重要無形文化財「蒟醤」保持者の太田儔(ひとし)氏に師事。写真右は自ら配合して用いた色漆の数々。「オリーブの枝をのびのびと配置できてよかった。眺めて、座って、穏やかな気持ちになってほしいです」。


[瀬戸の海] 松原弘明/彫漆1967年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究 生課程修了。漆芸家北岡省三氏、重要無形文化 財「彫漆」保持者(人間国宝)の音丸耕堂氏に師事。 写真右は30回塗り重ねた色漆の層を彫ってい る様子。「世界に名高いデンマークの椅子と香 川漆芸の融合に新たな可能性を感じました」。

1967年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究生課程修了。漆芸家北岡省三氏、重要無形文化財「彫漆」保持者(人間国宝)の音丸耕堂氏に師事。写真右は30回塗り重ねた色漆の層を彫ってい る様子。「世界に名高いデンマークの椅子と香川漆芸の融合に新たな可能性を感じました」。


[堆漆間道結] 石原雅員/彫漆

1960年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究 生課程修了。人間国宝の音丸耕堂氏に師事。写 真右は堆漆板を貼った後、文様の縁や接合部分 の角を丸く削っているところ。「椅子のフォル ムに合わせた堆漆板によるデザインとマットな 仕上げ、色彩がうまく調和したと思います」。

1960年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究生課程修了。人間国宝の音丸耕堂氏に師事。写真右は堆漆板を貼った後、文様の縁や接合部分の角を丸く削っているところ。「椅子のフォルムに合わせた堆漆板によるデザインとマットな仕上げ、色彩がうまく調和したと思います」。


[光] 山下亨人/蒟醤1983年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究 員課程修了。木工家の宮本修山氏と父・山下義 人氏に師事。写真右はアブラギリという木の炭 で、金粉を蒔いた部分を研ぎ出している様子。 「座っていいものか、見た人が一瞬ためらうよ うな椅子にしたいと思ってデザインしました」。

1983年香川県生まれ。香川県漆芸研究所研究員課程修了。木工家の宮本修山氏と父・山下義人氏に師事。写真右はアブラギリという木の炭で、金粉を蒔いた部分を研ぎ出している様子。「座っていいものか、見た人が一瞬ためらうような椅子にしたいと思ってデザインしました」。


新しい試みが続々進行中。フリッツ・ハンセンにご注目を

日本にも愛好家の多いフリッツ・ハンセンの製品は現在、世界85か国以上で販売されており、東京店はアジア唯一の直営店。隈 研吾氏設計のビルの1、2階にあり、椅子やテーブル(アウトドア用も)、照明などを豊富に揃えている。また、日本各地でイベントを実施しており、今年も秋に丸亀市の本島でイベントを開催予定。

●「フリッツ・ハンセン 東京」
東京都港区南青山2-27-14 1、2階 
電話 03(3400)3107
URL:https://www.fritzhansen.com/ja/store-tokyo
 
*2025年3月1日〜4月2日の期間、ご紹介した椅子を展示販売予定。ぜひご来店ください。

撮影/Fumito Shibasaki〈Donna〉(静物) 只安 渉〈福家スタジオ〉(香川取材) 取材・文/清水千佳子

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