
150年以上の歴史を持つデンマークの家具ブランド「フリッツ・ハンセン」。その名は、創業者であるデンマーク南東部ロラン島出身の才気溢れる家具職人に由来します。
フリッツと息子のクリスチャンは高品質な家具づくりで確固たる地位を築くと、スチーム加工による曲げ木技術の確立や、デンマーク初のスチール製家具の製作など、新しい試みを次々に成功。そうした技術を生かし、アルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナーといった当代のトップデザイナーとともに家具を製作するようになりました。シンプルでモダンかつ独創的な椅子やテーブルは、時代を超えて世界中の人々に愛され続けています。
今回、「香川漆芸」の加飾が施された3種類の椅子、「セブンチェア」「グランプリチェア」「アリンコチェア」もヤコブセンの名作。1955年に発表されたセブンチェアは、累計販売数700万脚以上の大ベストセラーです。 香川漆芸とのプロジェクトの話が持ち上がった際、「フリッツ・ハンセン ジャパン」代表の鈴木利昌さんは、運命的なものを感じたといいます。
「丸亀市の本島(ほんじま)全体を舞台にイベントを行うなど、香川県とはご縁があります。セブンチェアが70周年という記念の年に、香川を代表する伝統工芸とプロジェクトができて本当に嬉しいです。デンマークの本社も優れたクラフツマンシップには常々高いリスペクトを持っているので、すぐに賛同を得られました。ブランドとしての条件は『椅子の命であるフォルムは変えないこと』のみ。作家の皆さんの発想を尊重させていただきました」。
プロジェクトの過程で鈴木さんが直面したのは、でき上がりをイメージすることの難しさ。香川漆芸の繊細な技法や色合いを言葉やデザイン画から理解するのは容易なことではありませんでした。
そこで、鈴木さんは高松へ2度足を運び、制作の様子を見学。香川漆芸への理解を深めました。「実際に見て触れて、彫りの繊細さや立体感、色の深みや肌触りに驚かされました」。
完成した5作品は、監修を務めた人間国宝の山下義人さんも「香川の三技法である『蒟醤』『存清』『彫漆』が揃ってよく表現されていて、非常に見応えがあります」と評するでき映え。それぞれが世界に一つの“漆モダン”な椅子が誕生しました。
人間国宝 山下義人(よしと)
[impression]藪内江美/蒟醤

[平和の実り]辻 孝史/存清


[堆漆間道結] 石原雅員/彫漆


[光] 山下亨人/蒟醤

日本にも愛好家の多いフリッツ・ハンセンの製品は現在、世界85か国以上で販売されており、東京店はアジア唯一の直営店。隈 研吾氏設計のビルの1、2階にあり、椅子やテーブル(アウトドア用も)、照明などを豊富に揃えている。また、日本各地でイベントを実施しており、今年も秋に丸亀市の本島でイベントを開催予定。
●「フリッツ・ハンセン 東京」
東京都港区南青山2-27-14 1、2階
電話 03(3400)3107
URL:https://www.fritzhansen.com/ja/store-tokyo
*2025年3月1日〜4月2日の期間、ご紹介した椅子を展示販売予定。ぜひご来店ください。
撮影/Fumito Shibasaki〈Donna〉(静物) 只安 渉〈福家スタジオ〉(香川取材) 取材・文/清水千佳子