藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。記事一覧はこちら>>
5月の花「スモークツリー」

シックなピンクのリシアンサス、ごく淡いピンクとブルーのバラをメインにしたブーケに、同系色の赤系のスモークツリーを加えました。ふわふわのスモークツリーを入れると輪郭がぼけてふんわりと優しい印象になります。アルケミラモリスとセアノサス‘マリーサイモン’を加えて、ナチュラルな雰囲気に仕上げています。
これほどふわふわの花はほかにない。だから仕入れにはとことんこだわります
スモークツリーが咲き始めました。あのふわふわの花には本当に心惹かれます。あれだけふわふわの花材はほかには見当たらないのではないかと思います。そのスモークツリーを私が使うのは、この時期から6月いっぱいまで。ちょうど広島近辺で花がきれいに咲く時期と合致しています。
それには理由がありまして、スモークツリーはどれだけふわふわしているかが命。遠方から箱詰めで届くものはぺたんこになっていたり、半ドライ状態になっていることも多いため、地元で朝にカットし、バケツに挿した状態で出荷されたものしか仕入れないためです。
南から北へ、栽培地を追って仕入れる花が多い中、スモークツリーはほとんどが地元産です。それだけに利用できる期間も限定されているので、この時期には贈り花にふんだんにスモークツリーを利用しています。
以前は、庭にスモークツリーのある友人のお宅からも分けていただいていました。市場で手に入れるよりさらに新鮮なふわっふわを贈り花に使える幸せを堪能していましたが、あまり切りすぎると樹勢に影響すると考え、このところは控えています。

スモークツリーには白花と赤花があり、白花は白〜緑、赤花は濃淡のグラデーションがとても美しい!ほかの花に合わせ、1枝のスモークツリーでも濃い色、淡い色を使い分けることができます。
スモークツリーの和名は、英名をそのまま訳したケムリノキ=煙の木。本当に煙のような軽やかさがあり、それはブーケやアレンジに独特の個性をもらたします。
普通はバラやシャクヤクなどメインの花を先に挿し、あとからクッション効果のあるふわふわの小花を間に挿し入れていくのですが、スモークツリーの場合は挿し方が逆になります。スモークツリーのふわふわの中にメインの花がポンポンと飛んでいる仕上がりが理想なので、先にスモークツリーを挿すのです。あのふわふわのおかげでブーケやアレンジの輪郭がぼけ、軽やかでどこかファンタジックな雰囲気になるのが、スモークツリーを使う醍醐味だと思います。
ちなみにスモークツリーは花だけでなく、少し丸みを帯びた葉もかわいらしいんです。葉色も少しスモーキーな緑色や鮮やかな銅葉があり、花の時期が終わっても葉だけ出回ることもあります。ふわふわの花も、かわいらしい葉も魅力的なスモークツリー。ぜひ短い出回り期間を逃さずに、贈り花に利用してみてください。
スモークツリーを使ったブーケ&アレンジメント
お母様の古希(70歳)のお祝いに、古希のテーマカラーの紫色を加えたブーケを作りました。鮮やかな青紫色の花はデルフィニウム‘ラベンダーサファイア’。かわいらしいピンクのシャクヤクは‘エッチドサーモン’。淡いピンクのシャクヤクは‘かぐや姫’。たっぷりのスモークツリーの中にバラとシャクヤクをポンポンと加えて束ねました。
ふわふわの花をアップでどうぞ。正確には花ではなく、花後に伸びた繊細な花柄がふわふわになったもの。ふわふわが出現するのは雌木のみです。
淡いブルーのバラ‘ブルーヘブン’を束ね、周囲を白系のスモークツリーで囲んだウエディングブーケ。ありそうでなかなかないデザインと自画自賛。優しくロマンチックな雰囲気で、どんな雰囲気のドレスにもよく似合います。
お部屋に飾る初夏のブーケのオーダーをいただき、スモークツリーをふんだんに使ってみました。黄色のバラ‘マンゴーリーバ’と黄色のバラ‘レモンラナンキュラス’、そしてビバーナム・スノーボール。かたまりの花がふわふわのスモークツリーのおかげで軽やかに感じられます。
とてもきれいなふわふわ状態で入手できた赤花のスモークツリーに大満足。花色の濃い房、淡い房を贈り花に合わせて使い分けます。丸みのある楕円形の葉のかわいらしさにもご注目を。
岐阜県のヘアサロンに周年記念の贈り花を。シャクヤク‘グリーンアンティーク’、バラ‘プチボヌール’、リシアンサス‘NFバレンシア’に、個性的なフォルム(形状)のケシの実とケイトウを加え、スモークツリーのふわふわの赤花をたっぷりとあしらってブーケにしました。フレッシュな葉色はテマリシモツケです。
岐阜県の飛騨にあるフラワーショップから、スタッフの誕生祝いの花のオーダーをいただきました。お花屋さんへの贈り花なので、少し個性的にしたいと考え、濃い紫色の花と淡いピンクのスモークツリーを対比させるようなブーケを束ねてみました。濃い紫色はクレマチスの‘キリテカナワ’と‘ザ プレジデント’。赤紫はカラー‘ナッシュビル’。繊細な花穂はメリカ‘レッドスパイヤー’。ほかにアストランティアやニゲラも加え、初夏で咲く庭の景色を凝縮したようなブーケに。
花弁(苞)の面積が広く、しっかりした質感のカラーと、ふわふわのスモークツリー。まったく異なる特徴の花を対比させると、個性的なアレンジに。カラーは‘ホワイトチョコレート’、シャクヤクは‘新珠’と‘グリーンアンティーク’。アクセントにかわいらしいスカビオサ‘ピコファンタジー’を加えました。
赤花のスモークツリーの繊細さをご覧ください。この1本1本が花柄です。自然が生み出すグラデーションのなんと美しいこと!
素敵なマダムの誕生祝いに紫色のブーケを贈りました。バラやリシアンサス、スカビオサと丸いかたまりの花を束ねましたが、スモークツリーが加わると輪郭がふんわりして、ブーケ全体にまとまり感が生まれます。バラは‘ライラッククラシック’、リシアンサスは‘NFラベンダー’、スカビオサは‘プリティーパープル’。ビバーナム・スノーボールやフランボワーズのフレッシュグリーンを加えてナチュラルさを出しました。
白花の房をたわわにつけるスモークツリー。贈り花では花房を少しずつカットして使いますが、広い空間であれば枝のままダイナミックに飾って楽しみたくなります。
結婚記念日に野の草花が好きな奥さまへ、ご主人からのプレゼントです。染めのアスチルベ‘ライトブルー’、ルリタマアザミ‘ベッチーズブルー’、アリウム‘ブルーパフューム’とブルー系の花に、ギンギツネの和名でもおなじみのペニセタムやスペアミントなどのハーブを加え、スモークツリーでふんわりとまとめました。
ステンドグラスのショップの移転のお祝いにアレンジを贈りました。白花のスモークツリーのふわふわの中に、シャクヤク‘エッチドサーモン’、エーデルワイス、クレマチス‘霞の君’を少しずつ飛ばして挿しました。ロマンチックな雰囲気がステンドグラスに似合うといいなーと思いながら作りました。
つややかな赤紫のカラー‘ナッシュビル’と白花のふわふわスモークツリーのコントラストを生かしたアレンジです。シャクヤク‘町娘’、バラ‘イントゥリーグ’で赤紫のボリュームをアップ。アルケミラモリスの淡い黄色を花の間に加えてクッションにしています。ヘアサロンのオープン記念ということで、インパクトのある個性的な花合わせにしてみました。
‘ロイヤルパープル’という名にふさわしい気品のある銅葉のスモークツリー。葉だけでも出回り、贈り花でもよく利用しています。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com
『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78
大切な人への贈り花』

誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。