藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。記事一覧はこちら>>

‘ロココスカーレット’‘スーパーピンク’‘ピューレグリーン’と、赤、ピンク、緑のスカビオサを集めたブーケです。ニゲラ‘アフリカンブライド’、シレネ‘グリーンベル’に銀葉アカシアとユーカリを加えて。お世話になっているガーデナーさんへの贈り花で、温暖地の庭で栽培するのが難しいスカビオサをメインに、というオーダーを受けて制作しました。
心がきゅんとなる愛らしさ、それがスカビオサの魅力です
私のように小花が大好きな花屋にとって、真夏以外は入手可能なスカビオサは贈り花を制作するうえでなくてはならない存在です。茎が繊細なスカビオサは、梅雨時や気温の高い時期には出荷のリスクが高く、生産者さんにとっては手間のかかる花だと思います。それでも傷まぬように手を尽くして出荷してくださる生産者さんや、花が届いてからの管理をしっかりしてくれる市場の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。
そんな事情もあり、スカビオサは涼しくなる秋以降のほうが状態もよく、種類も豊富に出回るようになります。とくに冬季は野に咲く花のような風情をもつ花が少なくなるので、ナチュラルな雰囲気に仕上げたいときにはとても頼りになります。
さらに、ガーデンなどで咲くスカビオサは淡いブルーの印象ですが、切り花のスカビオサにはピンクや赤のかわいらしい花がたくさんあります。しかも、野に咲くものより花が大きく、小花といえども存在感があります。ただし、花が大きくなっても軽やかさは失わない、それもスカビオサの大きな魅力だと思います。

「フラワーガーデン寺尾」さんのオリジナル品種‘チョンマゲ市助’。花の中心から小さな葉が出るユニークな姿には思わず笑ってしまいます。一度見たら忘れない花姿と名前、寺尾さんのセンスのよさに感服です。
ひと目見ただけで心がきゅんとなるような品種がたくさんあるなか、とくに個性的な品種を生産しているのが、長崎県雲仙市の「フラワーガーデン寺尾」さんです。寺尾さんは育種もされていて、スカビオサに関しては100%オリジナル品種です。
一般的なスカビオサよりもこもこした花姿が印象的で、また、グリーンのスカビオサや、花の真ん中から小さな葉が出る‘チョンマゲ市助’など独特のセンスがあります。‘フリフリ’シリーズや‘チョンマゲ’シリーズなどネーミングもとても楽しく、名前を見ただけで思わず注文を入れてしまうことも…。
お客さまにもファンがいて「‘チョンマゲ市助’入れてください」などご指定で贈り花のオーダーをいただくこともあります。

白花のスカビオサ‘スクープホワイト’をリシアンサスやバラの上に出るように挿し、スカビオサの軽やかさを出したアレンジです。スカビオサはバラやリシアンサスなど大きな花のすき間を埋める役でも大活躍してくれます。
スカビオサは茎は細いものの、水揚げも花もちもよいので贈り花に適した花です。これから迎えるお歳暮やクリスマスのギフトシーズンには、ぜひ愛らしいスカビオサでお相手の笑顔を引き出す贈り花をしてみてください。
「スカビオサ」のブーケ&アレンジメント
福岡県糸島市の「ニューセンスフラワー吉村」さんが作った愛らしいスカビオサ‘サクラミルク’をメインに、スイートピー‘ゴシックブラウン’、チューリップ‘マリアージュ’などを加えてピンク×白のアレンジに。かわいらしいお友達に贈るバースデーの贈り花です。
比較的新しい品種の‘スクープ’シリーズは花が大きくボリューム感があります。花色も豊富で、これは濃淡ピンクがかわいらしい‘スクープ コットンキャンディ’。
米寿(88歳)を迎える女性への贈り花は、スカビオサ‘スクープ コットンキャンディ’のほかピンクの花を集めたアレンジに。バラ‘ファンタジーウェーブ’、リシアンサス‘ピンクフラッシュ’に出回り始めたチューリップの‘クイーンズランド’。この時期もピンクの花は豊富に揃っています。メラレウカ‘レボリューションゴールド’とユーカリを加え、少し個性的に仕上げてみました。
お部屋に飾る花のご依頼を受け、「フラワーガーデン寺尾」さんのスカビオサ、‘ファンタジー’と‘テライチゴミルク’に濃淡ピンクのバラを加え、ニゲラのブルーをアクセントに加えたブーケを制作しました。ピンクにブルーを加えると、少し大人っぽくエレガントな雰囲気になります。他にパーロット咲きの白×緑のチューリップやフランボワーズ、ユーカリも加えています。
左は鮮やかなピンクと白のバイカラーがとてもラブリーな‘ファンタジー’、右は花の中心から出ている葉ですぐにわかる‘チョンマゲ市助’。どちらも「フラワーガーデン寺尾」さんのオリジナル品種です。
暮れのご挨拶の贈り花に、スカビオサの赤と白を使ってクリスマス気分も楽しめるアレンジを。赤は‘テラプリエルージュ’、白は‘ホワイトラブ’。ほかにバラ2種、ラナンキュラス、ニゲラを加え、青みがかったシルバーリーフのコニファーやサツマスギなどクリスマスを感じさせるコニファーを添えました。
「フラワーガーデン寺尾」さんから素敵なスカビオサが3種類も届きました。赤に近い濃いマゼンタ色は‘テラプリエルージュ’、大人っぽいパープルは‘ユイ’、かわいらしいピンクは‘イチゴミルク’。
2種類の個性的なバラに、‘テライチゴミルク’と‘マーブルピンク’と2種類のスカビオサを加え、ブルーのニゲラとデルフィニウムを散らしたアレンジ。ピンクと水色が好きな方への贈り花です。贈る方の好きな色がわかると、花色合わせがしやすくてとても助かります。
毎年、ご両親からの誕生日プレゼントとしてお花をお届けしている娘さん。7歳のお誕生日はじきじきに紫色のお花というリクエストをいただきました。選んだのはスカビオサ‘スクープ ラベンダー’、リシアンサス‘NFラベンダー’、アネモネ、そして染めのハボタンとアスチルベなど。赤×緑のクリスマスカラーを多く見かけるこの時期、透明感のある爽やかなブルー系アレンジは制作している私にとっても新鮮な印象でした。
スカビオサのブルーにはこんなに淡い花色もあります。‘フリフリ シエルブルー’、「フラワーガーデン寺尾」さんのオリジナル品種です。花色はさわやかですが、花弁のふりふりが華やかな雰囲気なのが、さすが寺尾さんです。
白いスカビオサ‘オズラパン’を使って冬らしいホワイトのウエディングブーケを制作しました。リシアンサス‘セレブリッチ ホワイト’、バラ‘シェドゥーブル’と‘ウィット’にユーカリやロシアンオリーブなどのシルバーリーフを加えて。
ピンクのスカビオサ‘テラストロベリー’とごく淡いピンクのカラー‘マニラ’という個性的な花合わせで、誕生日の贈り花を。2種のバラ、ラナンキュラスでボリューム感を出し、ダスティーミラーやピットスポラムをあしらってナチュラルな雰囲気に仕上げました。
白とパープルのリシアンサスの上に散らすように挿した淡い緑の花は、スカビオサの‘プチグリーン’。「これは何の花?」と興味をそそるような贈り花にしてみました。強い緑色のリーフは加えるとスカビオサの花色が目立ちにくいので、シルバーリーフのロシアンオリーブとユーカリを選びました。
淡い緑に少しだけピンクが混じるスカビオサ‘プチグリーン’。こういう個性的でしゃれた品種を生み出すのが「フラワーガーデン寺尾」さんのセンスなんです。素敵なだけでなく、どんな花色とも合わせやすく、使い勝手のよさも魅力です。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com
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