使い込むほどに味わいが増す、一生ものの「南部鉄器」。伝統工芸とモダンに暮らす

日々を豊かにする日本の工芸「コーヒーとお茶の道具」（お茶編）

──機能性の高い逸品を長く、大切に使いたい

コーヒーやお茶は、その味わいのみならず、淹れる時間やその行為にも癒やされます。そのためには、お気に入りの道具を手もとに置きたいもの。ドリップポットや南部鉄瓶は、大切に使えば一生寄り添う道具になってくれます。

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一生ものの南部鉄瓶と急須、湯呑みの逸品

コーヒーもお茶も、その風味をいっそう引き立てるのはお湯といえます。南部鉄器は、古来おいしいお湯が沸かせる道具として知られてきました。水の中に含まれるカルシウムやマグネシウムが鉄瓶の内部で飲みやすく変化して、まろやかな白湯になるのです。

南部鉄器は盛岡と水沢を中心に発展。盛岡は南部藩主の庇護のもと、4家の御用鋳物師を中心に、茶文化とともに栄えてきました。一方、水沢の歴史は900年前の奥州平泉時代に遡ります。山と鉱山に恵まれた地の利を生かし、平泉以降は、半農半工の職人が生活道具や台所道具を作ってきました。

その歴史は、現在のものづくりにも反映。本来の南部鉄器は、炭火で焼いた鋳型に1400度の鉄を流し込んで作る焼型技法を用いるのが伝統で、800度の炭火で焼く金気止（かなけど）めや、着色は漆とオハグロで仕上げるなど、最初から最後まで一人の手で作られます。一方、量産タイプでは、生砂型を使用。作業現場によって人が変わっても、仕上げることが可能です。

南部鉄器は扱いが難しそうと敬遠されがちですが、ポイントはたった一つ。

使ったら乾かすことです。お湯を出して蓋をとり、余熱で乾かします。水が残っていれば捨てて弱火で20秒。最初の1～2年が大事。鉄瓶は、次第に湯垢がついて育っていきます。使い込むほどにタフになって味わいが出てくるはずです。

そして、お気に入りの急須と湯吞み茶碗を持つことから、楽しく豊かなお茶の時間が始まります。

毎朝の白湯を鉄瓶で沸かす贅沢

「Palmaケトル」と「鉄瓶凹玉紋」



左・ロンドン出身のプロダクトデザイナー、ジャスパー・モリソンによってデザインされた「Palmaケトル」（胴径18×高さ19センチ）3万5200円／及源鋳造

右・ 雫石で制作する高橋大益さんは、鋳型を作って流し込む伝統技法を用いる。鉄瓶には珍しい新鮮な凹んだドット柄は非常に手間がかかる。「鉄瓶凹玉紋」高橋大益 作（胴径12.5×高さ18.5センチ）5万1700円／宙 SORA

「手毬鉄瓶 大」と「小鉄瓶平型糸目」


左・「手毬鉄瓶 大」1.3リットル（胴径15×高さ26センチ） 22万円　右・「小鉄瓶平型糸目」0.9リットル（胴径17.5×高さ16.5センチ） 1万2100円

湯呑みと急須

お茶がおいしいと定評ある須田菁華さんの作品。急須一筋の陶芸家、加藤 財さんの急須と一緒に。


湯呑み：右から「染付色絵 水玉文 面取湯呑」（径7×高さ10センチ）1万7600円　「染付色絵 釘彫むぎわら文 湯呑」（径7×高さ9.5センチ）1万5730円、「色絵 葉文 湯呑」（径8×高さ6.5センチ）1万6280円


急須：右から、POT白（胴径8×高さ11センチ）1万3200円、丸焼メ横手（胴径7.5×高さ8.5センチ） 1万1000円、POT白ナス（胴径10×高さ12センチ）1万3200円／宙 SORA