
おいしく健やかな毎日をつくる「わんこ薬膳」の基本(3) 「薬膳」とは、季節や体質に合わせた食材を使い、健康維持や病気予防を目的にした料理のこと。東洋医学の考えに基づいた“食養生”は、人間だけでなくペットの健やかな体づくりと不調解消にも役立ちます。この連載では、発売中の『いちばんやさしい わんこのための薬膳のきほん』(柴田千恵著、世界文化社刊)より、簡単かつ本格的な「わんこ薬膳」の取り入れ方を解説します。前回記事はこちら>>
前回の記事では、愛犬の体が熱いか冷えているかの確認方法や、食材の味や性質について解説しました。今回は、実際に愛犬に薬膳ごはんをあげるときの量やバランス、調理法といった、具体的なポイントについてお話しします。
わんこ薬膳の基本的な配分はシンプル。下のようにごはん皿を3分割して考えるとわかりやすいです。
1食の基本的な配分
肉・魚といったタンパク質はわんこの必須栄養素なので、必ず入れてください。肉ばかりではなくときどき魚に変えるなど、バリエーションを持たせて。卵や豆腐もタンパク質なので、加える場合は肉や魚の量を減らしましょう。そこに野菜類と穀類・芋類(炭水化物)を合わせ、さらに食材の作用を意識して組み合わせると、薬膳になります。
野菜は多く与えすぎると体の中のpH値が傾いて健康を損ねる可能性があるので、バランスよく配分を。ごまなどの種実類、海苔などをトッピングに使うのもおすすめです。なつめ、菊花などの生薬は、初めて使う場合は少量から与え、様子を見てください。
同じ食材を何週間も続けてあげると体の状態に偏りが出てくる場合があるので、愛犬の状態を確認しながら、食材のローテーションを組むように心がけてください。
愛犬に手作り食をあげるうえで、適切な量がわからず迷う飼い主さんもいるでしょう。本来、東洋医学では、細かい栄養素やカロリーを厳密に割り出すものではなく、体の状態を見ながら調節し、全体のバランスをとることを目指します。手作りに限らず、“食べたものがどのくらい体に入っているか”を、排泄量や体形などで判断するのがポイントです。
【ごはんは足りている?2つのチェックポイント】
チェックポイント1:体重
手作りを始める前、1週間後、10日後、など定期的に体重を計測。抱っこできるわんこは一緒に体重計に乗り、表示数からご自身の体重を引けばわんこの重さがわかります。
チェックポイント2:体形

なお、書籍では、愛犬の体重を基準に必要なエネルギー量を割り出す計算法も紹介しています。より詳しく知りたい方は参考にしてください。ただ、計算は、わかりやすくするための目安に過ぎません。数字で厳密に管理するよりも、ゆるやかに調整しながら“続ける”ことを意識して試してみてください。
食事は毎日のことなので、飼い主さんの負担もなるべく軽減したいところ。わんこ薬膳でよく使う肉や魚は、下処理を済ませてから冷凍保存すると、必要な量だけ解凍して使えるので便利です。
肉の下処理
・切り分ける
わんこの食べやすいサイズにカットする。与えるときに手で裂いてもOK。
・脂身や皮を取る
大きな脂や鶏肉の皮は取り除く。加熱後に取ってもよい。
魚の下処理
・湯引きする、ゆでこぼす
生臭さが気になる場合は湯引きを。塩分をより落としたいときはゆでこぼす。
・骨や硬い皮を取る
加熱後のほうが取りやすい。やわらかい皮は細かく刻んで加えても。
野菜の切り方
・角切り
大根、冬瓜など、身がしっかりしているけれど加熱するとやわらかくなる食材に。
・刻む
小松菜などの葉物は、千切りやみじん切りなどで繊維を断ち切る。
・スライスする、ちぎる
きゅうりや梨、スイカ、レタスなど生のまま与える場合に。
・すりおろす
繊維が強く、煮ても煮崩れないにんじんなどの食材向き。
・つぶす
枝豆などやや硬めのものや、かぼちゃ、芋類などは、ゆでたあとにつぶしてペースト状に。
私たち人間にとってはおなじみの食材でも、わんこにとってはよくない食材もあります。なかには命にかかわる危険なものもあるので、与えないように注意してください。代表的なNG食材は下記のとおりです。
ねぎ類(玉ねぎ、長ねぎ、わけぎ、ニラ、にんにく、らっきょうなど)
赤血球を壊すおそれのある成分(アリルプロピルジスルフィド)が含まれる。
チョコレート、ココア
カカオには中毒を引き起こす成分(テオブロミン)が含まれる。下痢や発熱、けいれん発作やショック状態を引き起こすことも。
ぶどう、レーズン
急性腎不全を引き起こす可能性がある。
キシリトールガム
血糖値の低下や嘔吐、肝不全などを引き起こす恐れがあるので、ガムは与えない。なお、天然のキシリトールを含むレタスやイチゴは少量であれば問題ない(特に超小型犬は量に注意する)。
わんこ薬膳の基本の調理法は「ゆでる」。おなかにやさしく、食材から出る汁気をそのまま利用することもできます。食材がしんなりするくらいを目安にゆでましょう。そのほか、蒸す、焼く、煮る、炒めるといった方法でも加熱できます。
手作り食は、最初から完璧に作れなくて大丈夫。まずは習慣づけることを目的に、まとめて作って冷凍する、保存食品である乾物を利用してみるなど、継続しやすいところまでハードルを下げて始めてみてください。
*次回は、冬の体をいたわる薬膳レシピをご紹介します。
柴田千恵さん
しばた・ちえ 国際中医薬膳管理師・POMCペット中医薬膳管理師・国際中医師。愛犬の病気をきっかけに、2017年より「わんこのための食養生ごはん」の開発をはじめ、これまでに累計81万食を販売。同時に、ペットの薬膳教室や中医薬膳オンラインスクール、薬膳カウンセリング、講師業などを通じて、中医学や薬膳学の知識を実践的に活用できる学びの場を広げている。
一般社団法人POMC 食養生薬膳協会(オンラインスクール)https://www.petpomc.com
わんこの食養生ごはん(オンラインショップ)https://pawplus.jp
instagram:@pawplus
現役獣医師や管理栄養士なども受講するペット中医薬膳の専門家が、わんこ薬膳の基礎から実践までわかりやすく書き下ろした一冊。Webには載せていないレシピや食材も多数掲載しています。
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撮影/大見謝星斗(世界文化ホールディングス) イラスト/ねもときょうこ