動物好きでなければ獣医じゃない。長年連れ添う愛すべき生き物たち
「野村獣医科に面接に来る獣医の卵たちの99パーセントが犬も飼ったことがないんですよ」という野村院長は、開業当初から自分で動物を飼ったことのない獣医師が治療行為をするということに疑問を呈してきた。野村院長自身は最も多いときで150種もの動物を飼育していたという動物のスペシャリストである。
ダトニオスマトラタイガー。1階のプールにもいる。
犬や猫、爬虫類、魚、鳥と何でもあり。そんなたくさんの動物たちの世話をする時間がどこにあるのかといえば、診療が終わってからの深夜。餌やりと掃除で夜が明けることも珍しくなかった。もちろん飼育にかかる器具や餌などの費用も半端ではない。
スカンクを犬のように連れて散歩に行き、部屋の中をコウモリが飛び回る。「超動物マニア」という言葉がここまでぴったりくる飼い主もなかなかいないに違いない。もちろん、そんな獣医師もほかにいないだろう。
そんな凄まじい動物人生を歩んできた野村院長だが、最近は新たな動物を増やすことを控えめにしているようだ。動物の命は短い。だから必然的に長生きする動物たちが残る。
病院の地下の温室は、新ビルを建てるときから計画された院長こだわりの空間だ。
水槽が並ぶ地下の温室。魚はレッドテールキャット。
ナマズのメガロドラス。
水族館のようなその空間に入ると低周波が響く。ろ過器の水が循環する音だ。
「2トンのろ過器です。200万円分のろ過剤が入っていて、上水施設並みです」
循環総水量は25トン、ヒーターは2万ワット(電気代もすごい)。
「要するに、大型淡水魚ばかりなので、排泄量が多くて水が汚れるんですね。常設の水族館並みの設備だと思います」
肺魚ネオケラトドゥスの “プンタロー” とは25年のつきあい。
水苔の中に身を潜めるブラジルツノガエルの “ブラジー”。
広いプール付き個室で悠々と暮らす、サルファモニター。つぶらな瞳が可愛らしい。
ここにいるのは熱帯産、東南アジア、アフリカ、中南米の生き物たち。オオトカゲ、古代魚をはじめとする魚類、カメ、ツノガエル、何種類もの熱帯産ゴキブリまで、いずれも快適な環境下でのびのびと過ごしているように見える。サルヴィーニオオニオイガメや肺魚のネオケラトドゥスなど20年、30 年を超えて一緒に暮らす動物もいる。
上左・ハミルトンクサガメ、上右・35年間一緒に暮らすサルヴィーニオオニオイガメ、下左・アンフィロフス・ラビアータス、下右・繁殖に成功したエイはダイヤモンドポルカドットスティングレイ。
この温室は野村院長の研究室でもあると同時に、愛すべき家族たちの安息の地でもあるのだ。
(次回に続く。
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