伝統工芸

大原千鶴さんと考えた、萬古焼の醬油差し

伝統工芸の美、再発見 第3回

日本が誇る伝統工芸に携わるかたがたとともに製作した、現代の暮らしを豊かに彩る家庭画報オリジナルの逸品をご紹介します。

撮影/本誌・鈴木一彦


日本人の食卓に欠かせない醤油差し。日々使うものだからこそ、使い勝手がよくお手入れも簡単であってほしいものです。今回、萬古焼(ばんこやき)の優れた技術によって、注ぎ口のきれがよく液だれのしない、まさに“一生もの”の醤油差しができ上がりました。

春爛漫の食卓を彩るのは、鯛の薄造りにちらしずし、筍と山菜の炊き合わせ。醬油差しにも可憐な桜の花が咲く。

製作のアイディアを提案してくださったのは、料理研究家の大原千鶴さん。「醤油差しで厄介なのは、注ぎ口が液だれして汚れること。蓋の縁に付着する結晶が掃除しにくいのも困りますね」。こうした醤油差しにつきものの悩みを解決してくれるのが、注ぎやすい良質な急須で知られる萬古焼の技です。鋭く作られた注ぎ口は液だれが生じることなく、いつでも快適に使えます。胴に合わせて蓋はぴったりと合わさるように作られ、口の周りに醤油が固まることもありません。

萬古焼特有の焼き締まった肌の落ち着いた色味とほのかな光沢は、さまざまな器に合わせやすいのが特徴。蓋には、盛り絵と呼ばれる技法で桜の花と竹をあしらいました。日本人の心の花である桜の絵付けは、春の食卓はもちろん、毎日使いたくなる愛らしさです。

一緒に考えてくださったかた

大原千鶴さん(おおはら・ちづる)さん
京都・花脊の料理旅館「美山荘」の次女として生まれ、山川の自然に囲まれて育つ。幼少の頃より料理を作り、結婚後は3人の子育て、家事に加え、料理研究家として活躍。

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