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移住生活で見た! フランス人の“美オタク”ぶりが発揮される庭づくり

意外となんとかなる!? 40代のフランス移住

ファッションライターとして『家庭画報』をはじめ、大人の女性に向けた雑誌で活動してきた河島裕子、改め、ルロワ河島裕子が、夫の故郷であるフランスに家族3人で移住することを決意。幾多のハプニングに見舞われながらも、2018年9月中旬に無事渡仏。40歳を超えての移住、フランス北部の田舎での暮らし、そして時折ときめきを求めて訪れるパリやフランス各地で出会った素敵なものをリポートしていきます。第4回目の今回は、フランス人の暮らしの中に垣間見た庭造りや花への情熱についてお話ししましょう。バックナンバー>>>

第4回 命をかけても美しいものを守り抜く!? フランス人の花と庭への情熱

意外と多忙な人生初の村民ライフ

慣れない暮らしと諸々の状況が落ち着き始めたのは、フランスに到着してから1か月を過ぎた頃でした。大都会東京から人口数百人という村に引っ越してきた私は、手持ち無沙汰で何をしていいかもわからず、ただソファに座っている、という時間が増えていきました。

しかし、筋金入りのぐうたらの私も、さすがにそんな生活には耐えきれず、ある日、義母を手伝いがてら、彼女の一日をじっくり観察してみたのです。

夫の実家には1.6ヘクタール(約4840坪)ほどの敷地の中に大きな庭があり、義母は毎日庭に出ては植物の手入れをしているのでした。そのほか、私たちが渡仏した9月中旬から10月中旬にかけては、庭に植えたりんご、コワン(マルメロの実)、くるみなどから実が落ち始める時期。

それらを日々拾っては、食べられるものと食べれないものに分け、傷みが多いものは傷んだ箇所を切り取り、近所のポニーにあげに行く(というまさかの仕事が、思いのほか手間がかかります……)など、都会では想像だにしなかった作業がわんさか!


秋になるとくるみやりんご、コワンなど果樹や木の実の収穫も日々の仕事に。くるみは、写真の20~30倍は収穫したような……。

偉大な自然に根性を試される収穫の秋

特に我が家にあるくるみの木は特大で、その実が熟す頃には毎日驚くほどの数が地面に落ちるのです。くるみ拾いは技術不要で気軽にできることから、私は率先してそれを自らの仕事としたのでした。

しかし、地道に拾う私をあざ笑うかのように、拾うそばからこれでもかとボトボトと実を落とすその巨木には軽く殺意を感じてしまうほど。途方もなく手間のかかる仕事だということを数日体験した末に知ることに……。

偉大なる自然に私の軟弱な精神力を鍛錬される日々です。(ちなみに勢い余って収納場所がなくなるほど収穫してしまい、ご近所さんや親戚におすそ分けしても一向になくならないため、現在くるみの収穫は休止中)

それに加え、掃除、洗濯、料理、買い物の通常の家事はもちろん、子供の送迎、暖炉の薪の運搬と火の管理、落ち葉掃除(これも気が遠くなるほどの大仕事!)、野生の小鳥や小動物のための餌の仕掛けなどなど。あれれ? 腰を下ろす暇がないほど、忙しいではないですか!? そのためか、義母は、先日70歳の誕生日を迎えたというのに、とても引き締まった体をしています。


春、様々な種類の花が咲き乱れ、華やかな色に満ちる庭。この頃になると随分日も長くなり、フランス人の心はにわかに浮かれ始めるようです。

暇があれば庭仕事に勤しむ田舎のフランス人

義母は、20代から40代の半ばまでフローリストとしてパリで働いていたため、植物に関する知識はとても豊富。そして何より花や緑のある生活をとても愛しているのです。

庭には前述の果樹以外にも、八重桜やしだれ桜、数種の薔薇、マーガレット、西洋紫陽花などの花が植えられ、季節ごとに美しい色彩を見せてくれます。それも義母が日々庭の手入れを怠らないゆえの賜物。薔薇の季節には、庭からいくらかを摘んで、テーブルセッティングに生かしたり……、私もちゃっかり便乗して田舎ゆえの贅沢を味わっています。

しかし、義母だけが特別か、というとそういうわけでもないようで、天気がよければ一日中庭に出て木や植物の剪定、雑草取り、芝刈りなどをしているご近所さんがたくさん!

特に日々落ち葉が積もる晩秋には、厳しい冬が来る前に庭を綺麗にしておきたいという思いもあるのでしょうが、とにかく彼らの庭の手入れには、並々ならぬ情熱を感じるのです。


我が家のターシャ・テューダー、元フローリストの義母と彼女が40年かけて育ててきた庭。


お客さまを招待してのディナーでは、庭の薔薇のテーブルセッティングで。

気軽に花を贈る生活に粋を感じて

パリではとびきりセンスのいい素敵なフラワーショップをよく見かけます。かつて、ヨーロッパやアメリカ、日本、中国など、いくつもの国を渡り歩いてきたファッション界のカリスマにインタビューした時のこと。

彼女曰く「世界中の花屋を見てきたけれど、一番センスがいいと思うのがパリ」とのこと。世界をさほど知らないスケールの小さな私ですが、納得です。

またパリ在住の友人もギフトには素敵なフラワーショップで、自宅用には日本でもおなじみの「モンソーフルール」でリーズナブルに、と賢く花を楽しむフランス流のフラワーライフを楽しんでいるよう。もちろん全ての人に当てはまるわけではないですが、とにかく花はとても身近な存在のように思います。

パリに限らず、よそのお宅にお呼ばれした時は、気軽に花束や鉢植えを持っていくのを目にします。先日もディナーの後に一緒に歩いていた親戚の女性が突然いなくなったと思ったら、通りすがりの花屋で薔薇の花束を買ってプレゼントしてくれたりと、花束を贈るという行為が特別な日のことではなく、とてもナチュラルに生活に息づいているのが素敵です。

常に花のある生活をアーティフィシャルフラワーで

かといって、常に生花を飾っている人ばかりではないでしょう。先日、義父と彼のパートナーの女性が暮らすノルマンディの家に行った時のこと、家の随所に綺麗な花が飾られているのを見かけました。

その家は、平日は仕事のためにパリで暮らす彼らが、週末を過ごすための家で、普段は留守にしている彼らがどうやってこんなに綺麗に手入れしているのだろうと、じっくり見てみたら……、なんと超リアルなアーティフィシャルフラワーだったのです!

実は義父のパートナーの女性は、パリの16区でアーティフィシャルフラワーをメインとしたブティックを営んでいます。そこにあるアーティフィシャルフラワーは、なんとも華やか。生活に余裕がある方や年配の方が多く住む16区ということもあり、家を手軽に華やかに彩ることができるアーティフィシャルフラワーは、需要が高いようです。特にクリスマスやニューイヤーなど、いつ人が訪れても綺麗な状態でお迎えできる季節のデコレーションとして重宝しそう。

そういえば、第2回で紹介したアラン・デュカス氏のイタリアン「クッチーナ」では、アーティフィシャルフラワーならぬアーティフィシャルベジタブルがふんだんにインテリアに取り入れられ、ポップでおしゃれなレストランの雰囲気作りに一役買っているようでした。


義父の家で目を惹かれたアーティフィシャルフラワーの飾り。今やアーティフィシャルフラワーはとてもリアルで、びっくりします。


パリ16区にあるアーティフィシャルフラワーのブティック「UN JARDIN SUR LA VILLE」(アン ジャルダン シュール  ラ ヴィル)。ショップ内には季節のデコレーションにぴったりのアーティフィシャルフラワー&インテリア小物がずらり。●「UN JARDIN SUR LA VILLE」 27 rue duret 75116 Paris

フランス人は命をかけても美しいものを守る!?

「フランス人は命をかけてでも美しいものを守る主義なんだよ」──。昨年の夏、観測史上最高気温を記録した日のパリに、たまたま出張で訪れていたのですが、一緒に仕事をしていた在パリうん十年というカメラマンの方が、そうおっしゃっていたことをふと思い出しました。

近年パリには命の危険さえ感じる熱波がやってくることがありますが、エアコン(冷房装置)を設置しているお宅はあまりないのだとか。どうしてなのかとても不思議だったのですが、それには建物が古かったり、大きなベランダがないという理由があると同時に、フランスの環境条例では、一部の地域では景観を損なわないためにも室外機の設置を禁止しているという事情があるようです。(それゆえ、窓に穴を開けて換気するタイプのエアコンを使用するお宅もあるそう)

前述のカメラマンの一言は、そういった事情を受けての言葉だったのです。フランス人の美への情熱を誇張した表現ではありますが、確かに、美しい環境を守る、もしくは美しいものを生み出すためにはとても勤勉な人が多いように感じるこの頃(その勤勉さ、ぜひフランスの公共サービスにも取り入れていただきたいです!)。私も少しでも多くそのエッセンスを取り入れられるよう、日々努力中でございます。

さて、次回はいよいよフランス人にとって年一番のビッグイベント、クリスマスの過ごし方を、移住初心者の浮かれた目線でリポートいたします。

ルロワ 河島 裕子 / Hiroko Kawashima Leroy

フリーライター

アパレル商社勤務の後、フリーのファッションライターに。『家庭画報』をはじめ大人の女性に向けた雑誌で、ファッションやジュエリー、時計を中心に幅広く執筆。強烈な個性を持つフランス人の夫と息子の3人家族。2018年9月より、拠点をパリから1時間ほどのフランス北部の田舎に移し、大自然の中でのんびり生活をスタート。移住直前に猛勉強した金継ぎと蒔絵を、フランスの地で実践中。夢は、家族とともにワインの聖地・ブルゴーニュでB&Bを営むこと。

フランス移住こぼれ話

船便で送った引っ越しの荷物が日本を出てから約3か月、実は、原稿を書いている11月下旬現在まだ届いておりません。
当初引っ越し完了まで約40〜50日という話だったので、日本より何かと時間のかかるフランスでの諸々を見ていた私は、きっと税関の検品などで時間がかかっているに違いないと考えていたのです。
しかし、フランスの港に荷物が着いてから3週間過ぎてもフランスの運送会社から何の連絡もなし。もはや配達が遅いのには慣れっこになりつつある私たちも、さすがに心配になって連絡してみると……
「日本の会社からの支払いが遅れていて、作業が進められません」とのこと。
なんと、日本側に負があったとは!
その時、安さ重視で引っ越し業者を選んでしまった己の浅はかさを悔いました。その後、フランス流強気のプッシュの末、ようやく支払いが完了し、予定の倍の日数を経て11月末に荷物が届くことになりました。
安さに目がくらむと、思いがけず痛い目に遭うことを身に染みて感じたのでした。

写真/Olivier Leroy、ルロワ 河島 裕子 イラスト・文/ルロワ 河島 裕子

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