藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい! 「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。記事一覧はこちら>>
3月の花「サクラ」

淡いピンクが優しい牡丹桜の花、蕾、葉を無駄なく利用したサクラボックス。直径約20cmで持ち運びもできるので、手土産にとご依頼くださる方もいます。
家にいながらお花見ができる「サクラボックス」が密かに人気です
ソメイヨシノの開花のニュースで盛り上がっていますね。まだか、まだかとわくわくしながら待ちわびる人の多さに、あらためてサクラは日本人にこよなく愛される花だと感じます。
切り花でもちょうどこの時期からサクラがよく出回ります。早咲きの啓翁桜(ケイオウザクラ)や彼岸桜は1月から出回り始めますが、ソメイヨシノや八重桜、牡丹桜などが出揃うのはちょうど今頃からです。
この時期には、サクラを入れてください、というオーダーもよくあります。春の気分を届けたいときに、日本人なら誰にでも季節感が確実に伝わるサクラはとても効果的な花だと思います。
私のおすすめはサクラボックス。直径約20cmの丸い箱にサクラをアレンジしたもので、ちゃんと蓋をして送ることができます。家族や友人が集まるテーブルに飾れば、家にいながらお花見が楽しめます。
SNSで「桜箱」として紹介して以来、この時期になるとサクラボックスのオーダーをくださる常連のお客さまもいて、今年はどちらでお花見を楽しまれるのかなと想像しながらの制作はとても楽しいものです。

牡丹桜のサクラボックスは、今は遠く離れて暮らすお友達3人への贈り花です。箱を開けたときの驚きが笑顔に変わる瞬間を想像しながら制作しました。
サクラは私も大好きな花ですが、花屋としては苦労もあります。他の花と違い、開花が揃わず、しかもゆっくりと咲くので、開花調整が難しいのです。
とくに幼稚園や小学校の、卒園・卒業式、入園・入学式の会場を飾る花生けでは本数が多く必要で、ちょうどよい咲き具合にするために暖房をつけたり、消したり、また日光に当ててみたり奥に引っ込めたり。開きすぎてしまうと花用の冷蔵庫で冷やしたり、と日々、サクラの開花具合を気にしながら過ごします。
新しい人生を歩み始める子どもたちに、きれいに咲いたサクラでエールを送りたいので、開花調整をおろそかにすることはできません。
贈り花では、お相手に届いたときにサクラが咲いているように逆算し、ほどけ始めの蕾も多めに入れています。サクラは開いてから散るまでが早いので、美しい状態をできるだけ長く楽しんでいただけるようにと考え、タイミングよく発送できるように開花調整します。
お店には長い枝で届きますが、サクラボックスなどのアレンジには、枝を切り分けて使います。枝の切り口が見えないように蕾の上にハサミを入れ、枝1本を無駄なく使い切ります。サクラは葉も美しく、とくに新葉は明るくフレッシュなので、それもアレンジに利用してナチュラル感のある贈り花に仕上げるようにしています。
サクラを使ったブーケ&アレンジメント
サクラボックスは蓋をするとこんな感じになります。この中に春爛漫が詰まっています。
ご自宅用にとオーダーいただいた八重桜のサクラボックスです。蕾と開いた花の割合はちょうどこれくらいで発送します。届いてから蕾が開き出し、徐々にピンクのボリュームが増えていきます。
東京へ、誕生日祝いのボックスアレンジをお届けしました。啓翁桜にピンクのバラ‘プリンセスチュチュ’と‘ピンクワルツ’、ピンクのスイートピー‘夢二’、そしてアクセントにスイートピー‘ブルーフレグランス’を加え、エレガントな雰囲気に仕上げました。
クリニックの待合室に飾る花を毎月お届けしています。お待ちになっている方の気持ちが少しでも和むように「旬」にこだわって花を選んでいますが、4月上旬のブーケには啓翁桜を加えました。1月から出回り始める啓翁桜は、産地を移しながら4月上旬まで出回ります。チューリップ、パンジー、スカビオサ、フレッシュグリーンレースフラワー、キイチゴ、ユキヤナギと、春の花をたくさん集め、サクラが咲く庭の光景をイメージして束ねました。
おまかせでいただいた誕生日の贈り花。ちょうど広島産の啓翁桜が入手できたので、華やかなピンクにアネモネ‘ポルトブルー’の個性的なブルーを合わせたアレンジを制作しました。この色合わせは意外に新鮮だと感じました。他にラナンキュラス‘みつり’、銀葉アカシアを加えています
島根の娘さんから兵庫で暮らすお母さまへ、サクラを入れた誕生日の贈り花のオーダーをいただきました。チューリップ、スイートピー、スカビオサ、バラ、ラナンキュラス、スイートピーと春の淡いピンクをたくさん集め、啓翁桜を少し高い位置にくるように挿しました。スイートピー‘ブルーフレグランス’を加えると、ぐっと気品あるアレンジに。
最近ではダリアはほぼ一年中出回るので、あまり季節感が感じられなくなっていますが、啓翁桜を少し加えただけで、春らしい雰囲気に。‘ポートライト ペアビューティー’というオレンジのダリアとサクラの淡いピンクの色合わせも新鮮だと思います。お友達の出版祝いの贈り花です。他にラナンキュラス、金葉アカシア、バイモユリを加えて。
幼稚園の卒園式に、保護者の皆さまから園児にお祝いの花を。遠目にもよく目立つように、啓翁桜の枝を長めに出し、バラやチューリップ、スイートピーなど春のピンクを足元に固めて挿しました。モルセラ、アカシアなどの緑色でフレッシュ感を出して。
皆さまが開花を待ちわびているソメイヨシノです。切り花でも流通しますが、出回り時期が短いので、なかなかタイミングが合わずに使えないこともあります。
産地を移しながら長く出回る啓翁桜は、サクラのアレンジでいちばんよく利用します。ソメイヨシノより花がやや小ぶりですが、一重の清楚な花がとても愛らしいサクラです。
ボリューム感が魅力の牡丹桜。このふんわりした花姿を見ていると、何だか穏やかでほっこりした気持ちになってきます。
八重桜にはさまざまな種類があり、これはあでやかな濃いピンクが美しい品種。新葉のフレッシュな色も魅力です。
『家庭画報』とのコラボで、フルール トレモロが選ぶ季節の花をお届けする企画をしています。2022年の4月には山形産の八重桜‘普賢象(フゲンゾウ)’をメインに花選びをしました。レースフラワー‘ラッキーレディ’、ライスフラワー、バイモユリ、クリスマスローズ、ビバーナム・スノーボール、キイチゴ‘ベビーハンズ’と、私のお気に入りの春の花と一緒にお届けしました。
満開の啓翁桜で、幼稚園の卒園式を飾りました。啓翁桜の足元にはビバーナム。スノーボール、低い位置の花生けには、ラナンキュラス‘ちほの華’、‘あけぼの’、‘アルボワ’、‘オルレリアン’、カーネーション‘サクラミナミ’、スイートピー‘ペッシュ’、‘めぐみ’、バラ‘ローズメイ’などを飾り、優しい春の光景に。
幼稚園の入園式で、会場に飾った花です。ソメイヨシノに黄色のバラやビバーナム・スノーボールを合わせて。開花調整が上手にできて、ほぼ満開のよい状態でセレモニーを迎えられました。
藤野幸信/Yukinobu Fujino
広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「fleurs trémolo」(フルール トレモロ)オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。感動する花束を多くの人に届けたいという思いから、市場からだけでなく自ら生産者情報を入手してお気に入りの花を集める。何種類もの花を使ったブーケは、エレガントでナチュラル。著書『大切な人への贈り花』も好評。 https://www.fleurs-tremolo.com
『人気フローリストが教える フラワーアレンジのデザイン&ヒント78
大切な人への贈り花』

誕生日、結婚記念日、ウエディングなど、78例のブーケ&アレンジメントを色別に掲載したオールカラーの大判の単行本。色別花図鑑コラムや全国の生産者データなどお役立ち情報やインデックスも充実。大切な人へ花を贈る際のヒントが満載です。