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旧大名家・松浦家の歴代の当主らが、召し上がっていた「お正月の料理」を再現

2022.12.28

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平戸・松浦家のお正月 第3回(全4回) 古より大陸との交流の玄関口として繁栄してきた、長崎県北部に位置する港町・平戸。この地を延久元(1069)年より明治まで長く治めてきたのが、現当主で41代を数える旧大名家・松浦(まつら)家。2000年1月号掲載の「大名家の正月」の再録に新規取材を加え、大名家でかつて行われていた剛直かつ厳かな年迎えをご紹介します。前回の記事はこちら>>

かつて歴代当主が召し上がっていた、元朝の膳、元日夜の膳


かつての松浦家当主らが正月に召し上がっていた料理は、どのようなものだったのでしょうか。史料をもとに、元朝と元日夜の膳を再現していただきました。

元朝には、白木の膳が用意されます。まずは大福茶代わりの抹茶とともにいただく、梅干しが5つ盛られた膳。

元朝の膳、元日夜の膳元朝から5日の朝までの膳。梅干し5つを盛った皿がのせられ、御箸はゆずり葉に挿される。抹茶とともにいただく。


御祝帳には「梅干丸共ニ蓋茶碗ニ入前以御茶堂方へ渡し置き」と書き記されており、5日の朝まで用意されます。これは、松浦家史料『御臺所年中御祝式帳(おだいどころねんちゅうおいわいしきちょう)』にも記録されています。松浦家では近年も大福茶代わりの抹茶が続けられ、天目台での抹茶に梅干し、扇面の人参、生姜の大福茶で新たな正月を迎えます。

その後供される膳は、白木膳に奉書を敷き、裏白をのせ、5つの丸餅を中心に、干し柿やみかん、山芋、栗などを2つずつ端正に並べたもの。

元朝の膳、元日夜の膳上の膳の後に供される。白木膳に奉書を敷き、裏白をのせる。右上から、干し柿2つ、拍子木切りの山芋2切れを水引で結んだもの2ゆい、昆布2切れ、野老(ところ)2ゆい、丸餅5つ、ゆずり葉餅、みかん2つ、おこし米2重、栗2つ。ゆずり葉餅は本来土器に入れられる。

定煮椀に入れられたお雑煮の膳もあり、こちらは5日の朝まで供されます。

元朝の膳、元日夜の膳5日朝まで供される、定煮椀に盛られたお雑煮。具は記されていない。右奥はお塩皿に盛った香の物、左奥は小茶碗に盛った熨斗もみ数の子。

さらに、八角形に切られた白紙の上に、三重にした小豆餅や白餅、ゆずり葉を挿した橙などが整然と盛りつけられた9種の膳は、7日の晩まで用意されます。

元朝の膳、元日夜の膳7日の晩まで用意される9種の膳。右上から、小豆餅3重、山芋2ゆい、干し柿、ゆずり葉挿し橙、餅土器(かわらけ)、野老2ゆい、白粉餅3重、おこし米2重、栗。

数日間にわたって供されていた、新年を晴れやかに祝う清々しい膳です。

料理に加えて年中行事のしつらい、飾り方も記される


日本随一の国際港として栄えてきた平戸。元日夜の膳には、港町らしい海の幸も盛り込まれます。雑煮椀には串あわびやいりこ、かつお。

元朝の膳、元日夜の膳御雑煮膳。御祝椀には餅、芋の子、串あわび、いりこ、かつおが入る。右奥から順に、大根、あわび、豆。どれも本来は土器に裏白を敷いて供された。手前御箸はゆずり葉に挿す。

二献には、鯛のひれが入ったお吸い物と刺し身。

元朝の膳、元日夜の膳二献は鯛のひれが入ったお吸い物と、右奥は刺し身、左奥は酢。当時は酢をつけて刺し身を召し上がったそう。ひれはほかでも見られる正月料理で、出世と一年の安全を祝う。

三献にはいかの刺し身やさざえ。

元朝の膳、元日夜の膳三献はきじ肉入りのお吸い物で、藩窯である三川内(みかわち)焼の家紋入り鉢で供される。右奥はいかの刺し身、左奥はさざえ。どちらも海の幸豊富な平戸らしい品だ。御膳は三宝。

五献にはいわしなどが入ります。

元朝の膳、元日夜の膳四献は裏白とゆずり葉を敷いた上に丸餅を3つ重ねる。手前に小さな丸餅をのせる。この膳は7日の夜まで登場する。正月の膳が白木造りなのも、源 融公を祖とする家らしい。

元朝の膳、元日夜の膳元日夜の五献。中央にはゆずり葉と裏白を添えたご飯。上は右より、小豆、青菜、ひじき、白かぶ。二段目はきじ羽節、いわし。下段は鯛のひれ2つ、きじ肉。8種を白紙の上にのせる。

『御祝帳』にはこういった料理や盛りつけの方法が鮮やかに描かれているほか、正月のしつらいについても細やかに記録されています。例えば御手掛と一緒に用意するしつらい。三宝に土器を3つのせ、裏白とゆずり葉を飾り、長柄と銚子を置きます。再現するにあたって、古文書に描かれたものと同じ三宝が蔵の中から見つかったのも、熱心に歴史を記録し受け継いできた松浦家ならではのことといえるでしょう。

元朝の膳、元日夜の膳左・『御祝帳』に描かれた元日夜の“四献”と“五献”の膳(上で再現)。虫喰いが年月を経たことを思わせる。右・『御祝帳』にある正月のしつらいの図をもとに再現したものが、下の2枚の写真。成立した年代はわかっていない。次世代へ繫ぐ貴重な史料だ。

「微力ながら、先祖の残したものを再現することは、歴史を識(し)るうえで意義があります」と話すのは、当代の松浦 章氏。始祖である源 融公の生誕から1200年。連綿と続いてきた松浦家の歴史は、この先の未来へと受け継がれていきます。

下のフォトギャラリーで詳しくご紹介します。
撮影/三笘正勝 取材協力/萬 眞智子
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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