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【現地取材】ワイン通が注目するのは、世界を代表する銘醸地 ドイツ・モーゼルのワイン

2019.07.17

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第3回 一度は味わいたい、世界を代表する銘醸地モーゼルのワイン

ワイン通でなくても「モーゼル」という地名を聞いたことがあるのではないでしょうか。ドイツ最古のワイン産地モーゼルは、リースリングの銘醸地としてその名を馳せています。断崖絶壁の急斜面に畑があることでも知られるモーゼルとは、どのようなところなのでしょう。そしてそこから生まれるワインが、長きにわたり高い評価を得ているのは、どうしてなのでしょう。第2回の記事はこちら>>>

世界最高峰のリースリングの産地モーゼル


全長250kmに及ぶモーゼル川一帯は開発の進んでいない牧歌的な光景が広がるエリア。中世の古い町並みを挟み、川沿いの斜面にリースリングの畑が連なっています。

古代ローマ人がこの地を開墾したのは、およそ2000年前。平均斜度30度以上という急斜面で、畑に立って町を見下ろすと転げ落ちそうなほどで、古代ローマ人はよくこんなところにブドウを植えたものだと感心してしまいます。



世界随一の断崖絶壁のブドウ畑


ブドウ畑としてこの急斜面が選ばれたのには理由があります。勾配は日中に熱を蓄え夜に放射するので過度の冷却を防ぎます。

また谷間の冷気と川面の反射で生まれる寒暖差や、この地特有のシーファーと呼ばれるスレート(粘板岩)のミネラル豊富な土壌、渓谷からの霧によって果皮につく貴腐菌など、この斜面には優れたワインを造るために必要な要素がたくさんあるのです。


モーゼル特有のハート形に形成


ヨーロッパにおいてブドウは垣根で仕立てるのが一般的ですが、ここモーゼルでは斜面が急すぎて垣根を作ることができません。

そこで考え出されたのが1本ずつ支柱を立てて、左右対称に枝をとってハートの形に形成する方法。棒仕立てと呼ばれるこの手法は2000年経った今、モーゼル特有の栽培方法として受け継がれ、現地に行くとその様子を見ることができます。合理性を考えた仕立て方であると知りつつも、古代ローマ人が何を思いながらハートの形を作ったのか、想像するのもロマンンチックです。


モーゼルの老舗ワイナリー Weingut Huls(ヴァイングート フルス)


Weingut Hulsは、Krover Nacktarch(クローバー ナッフタッフ)というモーゼル有数の優良な畑をもつ老舗ワイナリー。

現当主のマークスが先代からの伝統を受け継ぎながら、長く人々に愛されるワイン造りを模索しています。単一畑のリースリングをはじめシュペトーレーゼやアウスレーゼ、高級甘口ワインのトロッケンベーレンアウスレーゼなどリースリングだけで10種類以上をリリース。

各国のジャーナリストたちを招いて畑を眺めながらのテイスティングが行われ、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)を含む11種類のワインが並びました。


ブドウ本来の味わいが凝縮されたリースリングの甘み


ワインファンの中には、甘口のワインを敬遠される方もいらっしゃるかもしれません。

モーゼルのリースリングは、ブドウを完熟した状態で収穫したからこその甘みをもつワインや、さまざまな気象条件が重なって果皮につく貴腐菌という良質な菌により、ブドウの成分や糖度が凝縮される希少な甘口ワインもあります。

砂糖が添加されているわけではなく、恵まれた立地での好条件と繊細な製法により生まれる甘みは、生き生きとフレッシュ。豊かな香りと長い余韻が楽しめる、高品質なワインの証しなのです。


モーゼルの若手生産者


伝統産地モーゼルでも、ジェネレーション・リースリングの若手生産者が奮闘しています。ケステン村のWeingut Meirer(ワイングート・マイアーラー)8代目のマティアスもそのひとり。名門ガイゼンハイム大学で栽培と醸造を学び、ドイツ国内のワイナリーで修業したあとに家業のワイナリーを引き継ぎました。



 昔から造られている評価の高いリースリングに加え、亜硫酸塩をごく少量に抑えた「WTF」やペットナット(仏語ペティアン・ナチュレルの略称=古代製法で造られた微発泡のスパークリングワイン)の「OMG」をリリースし、そのフレッシュな味わいが注目を集めています。スラングが語源のワイン名からして、ユニークな味わいが想像できます。


ラインヘッセンのチャーリーズ・エンジェル!?


モーゼルから離れ、ドイツ最大のワイン産地であるラインヘッセンまで足を延ばしてみました。モーゼル同様にローマ人によりワイン用のブドウが植えられたこの地は、現在する136村のうち133村がブドウ栽培に関わり、1800軒あまりのワイナリーを有する広大な産地です。

ここで出会ったのはWeingut Bernhard、Weingut Becker、Weingut Bosseatの醸造家、マルティナ、サブリナ、ヨハナ。それぞれが次期当主として栽培と醸造を手がける、ジェネレーション・リースリングのメンバーです。


しなやかな感性を生かしたワイン造り


栽培面積の広大なラインヘッセンでは、リースリングやジルヴァーナー、国際品種のシャルドネ、またドルンフェルダーやポルトギーザーといった赤ワイン用の品種も多く作られています。

モーゼルと違い平地なので生産量も多く、時として大衆的なワイン産地とみなされることもあります。けれど3人の造り手たちはブレンドでロゼワインを造ったり、醸造方法を変えてみたりと、自由で豊かな発想でのびのびと自分たちのワインを行っています。

積極的に勉強会や情報交換を行いながら切磋琢磨し、オリジナリティのあるワイン造りを目指す彼女たち。女性ならではのしなやかな視点と大胆な行動力がいかんなく発揮されています。


リースリングとドイツワインから目が離せない!


ワインファンを惹きつけてやまない高貴なブドウ品種、リースリングの魅力。

それはキレのある酸味と豊かに成熟することのポテンシャルと、スタイルの多様性。ライトで繊細なタイプから芳醇で力強いタイプ、辛口からほんのり心地よい甘みを感じさせる中口、高貴な甘口ワインと、高いレベルのワインになるのがリースリングです。

ブドウが本来もっているキャラクターを理解することで、ワインの美味しさがもっと広がるに違いありません。ワインショップやレストランでドイツのリースリングを見かけたら、どのようなタイプなのか、どのような味わいなのか、確かめてみてください。

谷 宏美

ワインライター、J.S.A.認定ワインエキスパート
ファッション誌の美容エディターを経て、2018年よりフリーに。メディアや広告のワイン及びビューティの分野で取材・執筆を手がけつつ、ワインバー「ローディ」のディレクターとして、ワインの仕入れやサービスを行う。
写真/Anders Halskov-Jensen, Justyna Grzybek, 谷 宏美 文/谷 宏美 取材協力/Wines of Germany https://www.winesofgermany.jp/   知っているようで知らない、世界、そして日本の「#食文化」について読んでみませんか? >>>
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