カリフォルニアを代表するワイナリーの1つ「Joseph Phelps Vineyards(ジョセフ・フェルプス・ヴィンヤーズ)」は、建築業界で成功したジョセフ・フェルプス氏により1973年に設立されました。そのフラッグシップワインが「INSIGNIA(インシグニア)」。“勲章”の名を冠したこのワインは、単一品種のワインが主流だった当時のカリフォルニアで、数種類のブドウをブレンドするボルドースタイルをいち早く取り入れました。そして2026年9月、新ヴィンテージの2023年がリリースされました。
ジョセフ・フェルプス・ヴィンヤードのCEOを務めるデイヴィッド・ピアソン氏。かつてオーパス・ワンのCEOを務めた経歴を持つ。
8つの自社畑から生まれるブドウの個性を重ねて
「インシグニアが目指しているのは、複雑性、エレガンス、そしてバランスです。そのためには、ひとつの品種だけではなく、異なる個性をもつワインを組み合わせることが大切です」。そう語るのは、ジョセフ・フェルプス・ヴィンヤーズのCEO、デイヴィッド・ピアソン氏。ナパ・ヴァレーの8つの自社畑から収穫したブドウで100種を超えるベースワインを造り、それぞれの畑のテロワールを重ねながらブレンドし、味わいを構築しています。「同じブドウ品種であっても、育つ場所が違えば個性が変わります。異なる畑、異なる品種を組み合わせることで、ひとつでは表現できない、より複雑性をもつワインになるのです」。
ブドウ畑の周辺にはオリーブや果樹を植え、ふくろうやブルーバードの巣箱を設置し、再生可能エネルギーを活用するなど、地域の豊かな生態系を守ることがクオリティの高いブドウ作りにつながっている。
インシグニアは100%自社畑のブドウで造られているのも大きな特徴です。「自社畑を持つことの重要性は、灌漑や収穫のタイミングまで、自分たちでコントロールできること。長い時間をかけてその土地を理解し、畑のことを深く知ることができます。それは、私たちにとって大きな財産なのです。地球全体が温暖化の方向へ向かっているのは事実ですが、それよりも年ごとの気候変動が極端になっていると感じます。そうした変化に対応する工夫、知恵が求められています」(ピアソン氏)。
インシグニアの2021年と2023年にペアリングされたのは、国産牛テンダーロインのペッパーステーキ。
2023年ヴィンテージは、若いうちからも楽しめる1本
今回リリースされた2023年は、新たに醸造責任者となったライアン・ノス氏が手がけた初のヴィンテージです。2023年は、冬の降雨量が記録的に多く、過去10年で最も冷涼で生育期間が長くなったことにより、ブドウはフレッシュさを維持しながらゆっくりと成熟しました。グラスに注ぐと、ブラックベリー、熟したプラム、カシスのアロマが広がり、甘いタバコやココアなどが複雑さを加えます。口当たりは極めてスムーズで、余韻はエレガントで長く、重厚でありながらも、しなやかで心地よいタンニン、生き生きとした酸味を感じ取ることができます。
ピアソン氏の来日に合わせて「アンダーズ東京」で開かれた試飲会では、インシグニアの2021年と2023年の2種が出され、栗、焦がしオニオン、パンプキンマッシュを添えた国産ビーフテンダーロインのペッパーステーキとペアリングされました。樽熟成した赤ワインの中にあるスパイスのニュアンスと、黒こしょうの香りが絶妙にマッチします。
「インシグニア ヴィンテージ 2023」は、カベルネ・ソーヴィニヨン88%に、プティ・ヴェルド7%、カベルネ・フラン5%をブレンドしている。750ml58,300円。
「インシグニアは100%フレンチオークの新樽を使っています。私になってから、これまで24か月行っていた樽熟成を20か月に変更しました。それにより、長期熟成に応えうるしっかりとした骨格を持つと同時に、若いうちからも楽しめる魅力を兼ね備えたヴィンテージになりました」(ピアソン氏)。樽熟成の後、さらに12か月の瓶内熟成をすることで、味わいの一体感を高めます。
創業の地、ナパ・ヴァレーのセントヘレナにあるワイナリーにはショップがあり、テイスティングもできる。
これまで来日すること数十回というピアソン氏。インシグニアに合う日本の料理は何でしょうか、との問いに「和牛のステーキ、しゃぶしゃぶ……和牛の料理であれば何でも合うと思います。インシグニアは皆さんが思うよりどんな料理とも意外と相性がいいので、是非いろいろな料理と合わせてみてください」。
そして最後に、家庭画報ドットコムの読者に向けて「ナパには素晴らしいワイナリーやホテル、ミシュランの星付きレストランもあり、ワインを巡る旅そのものを楽しめる場所だと思います。是非私たちのワイナリーに来て、ツアーに参加してブドウ畑を見て、ワインが生まれる土地そのものの魅力を体感していただきたいですね」(ピアソン氏)。ワインの奥にあるナパ・ヴァレーの風景に思いを馳せながら味わいたい、特別な1本です。
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