エッセイ連載「和菓子とわたし」
「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2026年10月号に掲載された第51回、林家たい平さんによるエッセイをお楽しみください。

vol. 51 笑顔を作る仕事
文・林家たい平
私のふるさと秩父に“すまんじゅう”と呼ばれている真っ白でふっくらとしたおまんじゅうがあります。ちょうど中華まんのような大きさで、中はたっぷりのつぶあん。秩父地方の農家で昔から作られていた素朴な味わい。米麹を使って作られているんだそうです。酒まんじゅう、炭酸まんじゅうとは違うものです。
子どもの頃から大好物で、近所の和菓子屋さんの出来上がり時間までわかっていたので、ちょうどに買いに行くと、まだ蒸し立てであったかくほんのりと酢の香りがするんです。
普通子どもはお小遣いをもらうと駄菓子屋に足が向くものですが、私は和菓子屋さんに行き、すまんじゅうをひとつ買って、家までの帰り道にペロッと食べるのが楽しみでした。今でも田舎に帰ると必ず食べるおまんじゅうです。親から子、孫へと語り継ぎたい私にとってのしあわせの甘さです。
さてもうひとつ、素敵な和菓子屋さんに出会った話をさせてもらいますね。テレビのロケでぶらりと訪れた街で、店の外からも元気が伝わってくるお店に惹かれふらっと店内へ。最近、和菓子屋さんは後継者がいないという悩みを抱えているところが多いと聞いていたところだったのですが、このお店は奥から若い女性が出迎えてくれました。
一緒に出て来たのがお店のご主人。聞けば娘さんが家業の和菓子屋を継いでくれたそうで。もう自分の代で終わりかなぁと思っていたところ、子どもの頃から柔道一直線で、最近まで一緒に稽古に励んでいた友達は私も知ってるオリンピック代表選手。このまま自分もオリンピックに出たいという夢を持っていたことでしょう。
でも彼女が選んだ道は父と同じ和菓子職人。父の仕事をずっと見ていたんだと思います。人を笑顔にする素敵な仕事だと。父に弟子入りして今は師弟関係。これから彼女が父から学んだ中からどんな和菓子を生み出してくれるかものすごく楽しみ。なぜなら私の息子も私の弟子になっているから他人事ではないんです。いつかは師匠を、父を超えて欲しいと願っています。
林家たい平 (はやしや・たいへい)落語家。1964年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。現在、同大学客員教授。林家こん平に入門後、2000年に真打昇進。『笑点』などテレビやラジオ、全国での落語会に出演。『林家たい平 特選まくら集 みんなの笑顔に会いたくて』(竹書房)など、著書多数。
宗家 源 吉兆庵
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