

静岡市のお茶の歴史は、同市生まれの僧侶・聖一国師(しょういちこくし)が鎌倉時代、中国・宋から持ち帰ったお茶の種を蒔いたことに始まります。やがてその栽培は、河川流域の山間地から、駿河湾を望む日本平山麓へと広がりました。
現在、市内には約850軒のお茶農家と100社を超える茶商がいて、市民の緑茶購入金額は4年連続で日本一を誇ります(出典:総務省 2021~2024 家計調査)。
この地の斜面は昼夜の寒暖差が大きく、茶葉の生育に非常に適した環境。甘みと旨みがしっかりと乗り、香り高いお茶が育ちます。かの徳川家康公も、駿府城での隠居後にこの地の茶を愛飲し、春に摘んだ新茶を秋まで熟成させて味わっていたともいわれます。

静岡市の山間地で生産されるお茶は、主に「浅蒸し煎茶」として親しまれます。浅蒸し煎茶は最もポピュラーな緑茶で、摘み取った新芽を素早く蒸して揉み、乾燥させて仕上げます。透き通るような色合いながら、豊かな香りと凝縮された旨みを味わえるのが特徴です。

志田島園では、お茶の魅力をより多くの人に伝えるため、茶畑ツアーや、茶畑を見下ろしながら淹れたてのお茶や和紅茶を飲み比べる縁側カフェを体験できます。栽培方法や工程を知ったうえで味わうお茶は、普段以上に美味しく感じられることでしょう。
静岡茶の魅力を存分に味わうなら、点茶体験もおすすめ。家康公が晩年過ごした駿府城の跡地にある駿府城公園内の「紅葉山庭園」では、数寄屋造りの茶室で点茶を体験できます(要事前申し込み)。

この日いただいたのは、静岡本山茶の抹茶「安倍の花」。徳川幕府の御用茶として、15代将軍慶喜公も愛飲したといわれる最高級品です。

茶碗を顔に近づけると上品な香りがふわりと広がり、口に含むと旨みと渋みがバランスよく味わえます。すっきりとした後味で、その余韻は心をそっと解きほぐすようです。
秋には紅葉山庭園の木々も見事に色づき、茶席とともに四季折々の表情をゆったりと堪能できます。