エッセイ連載「和菓子とわたし」
「和菓子とわたし」をテーマに家庭画報ゆかりの方々による書き下ろしのエッセイ企画を連載中。今回は『家庭画報』2025年12月号に掲載された第46回、本上まなみさんによるエッセイをお楽しみください。

vol. 46 金平糖
文・本上まなみ
金平糖とは、なんて愛らしいお菓子なのだろうと思います。初めて食べた金平糖は、どこか旅先のお土産物屋さんで祖母が買ってくれたものでした。透明な瓶に収められた星のかけら。当時6つか7つだった私はこの見た目と、ほのかに甘い淡い味に魅了され、宝物のようにして朝に夕に眺め、大事に大事に、何日もかけて食べたことを覚えています。幸せな気持ちになる、心を満たすお菓子。金平糖はそういう存在です。
数年前の冬、娘・息子と伊勢志摩へ旅に出ました。旅行といえばいつもは車で出かけるところを、少し違った趣にしようと半個室がある近鉄特急の座席を取りました(三人分の座席を取れば一階の半個室を押さえられるのです)。列車の旅です!
駅ビルで買った思い思いのお弁当──笹寿司やサンドイッチ、フルーツなどを手に乗り込んだ車内は、向かい合わせのベンチシートでテーブルを囲む作り。一緒に車窓の景色を楽しみつつお弁当を広げるなんて滅多にできないことなので母子でテンションが上がります。この感覚、ちょっと忘れていました。
息子のリュックから転がり出てきたトランプでババ抜きをしつつ、山間から海辺の景色を見ていると、ほどなくして目的地に到着しました。
お伊勢参り、温泉、鳥羽水族館などを楽しみ、最後にお土産物屋さんへ。ひとつずつ何か買っていいよ、と子どもたちに言うと、探しまわった末、息子が手にしたのは、なんと金平糖でした。
「これがきれいだったから」
小さな四角い瓶にぎっしりと詰まった、星のかけらです。薄紫色の金平糖。
帰りの列車で息子は瓶をしげしげと眺め、お姉ちゃんに固い蓋を開けてもらって一粒大事そうに口に含む。瓶を窓枠のところにとんと置きました。夕暮れの空の色が金平糖と溶け合うようにゆっくりと青みを帯びていきます。
楽しかったね。また、行こうね。
うん、また行こうね。
本上まなみ俳優。1975年生まれ。雑誌『銀座百点』に寄稿した「なぞのおとん。」が「ベスト・エッセイ2008」(日本文藝家協会編)に選出されるなど、エッセイスト、絵本作家としても活躍。最新刊は『みんな大きくなったよ』(ミシマ社)。
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