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伝承の味を守る「名家」のお正月物語。江戸時代から続く醤油造り、加納家のお正月

2021.12.21

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寿ぎのしつらいと料理にみる「味の名家」のお正月物語 第2回(全4回) 日本人は昔から、飲食するものを神饌として神に奉げ、感謝し、祈るという風習を大切に守ってきました。お正月のおせち料理やお雑煮はその代表的なものといえます。今回ご紹介するのは『家庭画報』1997年1月号に掲載した「味の名家」のお正月迎え。伝承の技術、伝来の味を守る家の新年のしつらいや料理に息づく新たな年を迎える祝いの形、厳粛ながらも晴れがましい心。日本人がいつまでも大切にしたいお正月の風景をお届けします。前回の記事はこちら>>

「味の名家」のお正月物語
加納家(角長・かどちょう)
和歌山県湯浅町


2日は白味噌雑煮、煮しめ、煮豆をいただく

創業180年の暖簾を守る「角長」本店の店構え。醤油の販売もしている。

2日は白味噌雑煮、煮しめ、煮豆をいただく


「加納家のお正月迎え」前回の記事はこちら>>

加納家では、お雑煮をいただくのは2日目から。1月2日のお膳には白味噌雑煮に加えて、手づくり醤油で作る煮しめの皿と、白えんどう豆を塩味で煮上げた「とう六豆」の皿が添えられるのが決まりです。

2日 白味噌雑煮


2日は白味噌雑煮、煮しめ、煮豆をいただく

雑煮はかつおと昆布だしの白味噌仕立て。煮た丸餅に真菜と呼ばれる青菜を刻んで上にのせるだけ。このお膳には煮しめと「とう六豆」が添えられる。元日は酒肴中心の刺し身膳、雑煮は2日に初めていただくのが加納家の決まりになっている。

また、元日のお膳に添えられた“にらみ鯛"は、1月3日の夜、吸い物に仕立てられて出されます。刺し身はもとより、煮物や吸い物の味の決め手となるのはやはり自家製の醤油。

御年95歳となられた5代目、加納長兵衞さんは、醤油造りにかける思いを語ります。

「先代の番頭があるときやってまいりまして、昔の醤油はこんな味ではなかった、とぽつりと申したのです。当時、世の中は機械化が進み、醤油造りもオートメーション化を目指している時代でしたが、私どもではその言葉を契機に、昔ながらの製法を守ることにしました。

すなわち、厳選した材料を寒仕込みして十分に発酵させ、熟成した醪(もろみ)を絞って生醤油を造り、これに火を入れて澱(おり)を取り除く――江戸時代の醤油造りを再現し始めたのです」。

醤油本来の味、色、香りを出すのに欠かせないのは、江戸時代末期より醤油を造り続けてきた仕込み蔵に生息する“蔵つき酵母"。お正月には、伝承の味を守る道具へ心を込めて、吉野杉の大樽に、お札と餅飾りを一つずつ置いていきます。

昔のままに造る醤油がおせちの味の決め手

そして1月6日、蔵は初仕込みに入り、今年もまた昔のままに醤油が造られ、伝統が受け継がれます。

2日は白味噌雑煮、煮しめ、煮豆をいただく

右は作家の堀 辰雄が命名した「手づくり醤油」900ml 1030円、左は「濁り醤」720ml 1700円。

下のフォトギャラリーで詳しく見る>>

Information

角長

和歌山県有田郡湯浅町湯浅7

    撮影/浅井憲雄 取材・文/萬 眞智子
    『家庭画報』2022年1月号掲載。
    この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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