〔特集〕日本の“はじまり”の地を巡る 「奈良」古都の神秘 「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産に登録され、新たな光が当たる奈良。日本が国家として夜明けを迎えた飛鳥時代に花開いた仏教文化、それから時を経て明治・大正期の歴史的建造物が今に甦る珠玉のホテルでの滞在、さらに1000年以上の歴史が紡いできた、薬草と発酵が織り成す美食の数々 ──。悠久の時を超えて古都の精神に出合う、唯一無二の旅へとご案内します。
・
特集「「奈良」古都の神秘」の記事一覧はこちら>>>
古都が育てた“日本人の薬箱”を開く旅
薬草・発酵の知恵と美味
飛鳥の都に始まり、千年を超えて受け継がれた薬草の知恵。山々の恵みを生かし、内陸の地で磨かれた発酵の技。古都・奈良が育ててきた、心身を整える知恵に出会う旅が始まります。
飛鳥時代から今に生きる薬草文化
西暦611年、推古天皇が宇陀(うだ)で行った「薬猟(くすりがり)」。『日本書紀』に記されたこの記述が、奈良の薬草文化の始まりです。朝廷や寺院が薬草を栽培・調製し、民に施す中で、奈良は「大和物」と呼ばれる高品質な薬草の一大産地となりました。
「飛鳥美人」の愛称で知られる、高松塚古墳の「西壁女子群像」。飛鳥時代に始まった薬草文化は、大陸の医術と奈良の自然が融合し、人々の美と健康を支えてきた。画像提供(模写壁画)/高松塚壁画館
なかでも、漢方の生薬として受け継がれてきた大和当帰や古代から親しまれてきた大和橘は、奈良を代表する薬草。近年は薬としての効能に加え、美容や健康を支える素材、さらには料理や菓子、飲料などの食材としても注目を集めています。飛鳥時代から約1400年。薬草文化は、現代の暮らしの中で新たな可能性を広げています。
[薬草]日本最古の薬草園を訪ねて奈良を代表する薬草。上から大和当帰、大和橘、吉野本葛の原料となる葛の花。宇陀市の日本最古の私設薬草園「森野旧薬園」にて。
薬草栽培の原点を守り、未来へ繫ぐ
森野旧薬園 (宇陀市)
日本最古の薬草園として知られる「森野旧薬園」は、江戸時代中期、徳川吉宗の命による採薬調査に随行した森野家11代当主・森野藤助が自宅の裏山に薬草を植えたことに始まります。
園内では四季折々の薬草が見られる。
森野藤助が当時の生薬原種や西洋生薬などを写生した「松山本草」。
園内奥の「桃岳庵」では薬草研究が行われた。
園内では、大和当帰をはじめ、オウレン、カワラヨモギ、ホソバオケラなど、約250種類の薬草木が季節ごとに育っています。葉や花の姿、独特の香りなど、身近な植物とはまた違う個性に触れられるのも魅力です。
通経、風邪に良いとされてきたサフラン。
強心、利尿に良いとされてきたオモトの実。いずれも秋を代表する薬草。
「ここには、今も昔も薬草を見つめ、暮らしに生かしてきた知恵が残っています。薬草は単なる薬としてだけでなく、奈良の歴史や暮らしを映す文化そのもの。今の時代だからこそ、独特の味わいや香りを新しい形で楽しむこともできると思います」と話すのは、園内を案内してくださった漢方養生指導士で奈良市観光大使を務める橋本真季さん。
約30年薬草園を見守る原野悦良さんと、薬草のお茶や化粧品開発にも取り組む橋本真季さん。
園を訪れた際には、薬草園を守ってきた「森野吉野葛本舗」の「葛の館」に立ち寄り、吉野本葛を使った葛餅などを味わうのも楽しみの一つ。
注文を受けてから作る「葛の館」のできたて葛餅(880円)。
薬草を見て、知って、香りに触れ、葛を味わう。薬草の魅力を五感で幅広く楽しめる場所です。
森野旧薬園奈良県宇陀市大宇陀上新1880
TEL:0745(83)0002
開園時間:9時~16時30分 不定休
入園料:500円
URL:
https://morino-kuzu.com/kyuyaku森野吉野葛本舗 葛の館奈良県宇陀市大宇陀西山3
TEL:0745(87)3011
営業時間:10時~17時(茶房は16時まで)
定休日:火曜・水曜、不定休あり
URL:
https://morino-kuzu.com/chokubai(次回へ続く。
この特集の一覧はこちらから>>)