〔特集〕記憶に刻まれるひと皿と出合う 新・感動ダイニング 誰もが知る人気シェフが新たに手がける話題のレストランから、美食家が贔屓にするアラカルトの実力店、その一皿のために足を運びたくなる未来のスターの店まで、2026年に訪ねたい心華やぐ美食の聖地にご案内します。
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世界の食通を魅了する日本のレストラン
以前より元気がないといわれる昨今の日本。しかし美食の分野では、世界から注目される存在であり続けています。一つの技を極める探究心、確かな技術に基づく応用力、自然の風土や季節を一皿に込めるセンス、そして心地よいひとときをもたらすためのこまやかなホスピタリティ……。
料理人をはじめ生産者やサービスマンに至るまで、プロフェッショナルたちの技が最高の食体験を創出しています。都心の有名店のみならず、親しみやすいレストランや地方の知る人ぞ知る店まで、世界の美食家が押し寄せる前に味わっておきたい最高の一皿、最高の料理店にご案内いたしましょう。
世界一のフーディー・浜田岳文さんに聞く
世界に発信したい、地方の名店
浜田岳文さん(はまだ・たけふみ)米国イェール大学在学中に食べ歩きを開始、約128か国・地域を踏破している。海外のレストランサイトのレビュアーランキングで7年連続1位。「世界のベストレストラン50」の日本チェアマン。
美食を求めて世界中を訪れる浜田岳文さん。行きたい店、行くべき店をどのように選んでいるのかを伺うと、まず、美食とは何かを明確にする必要があるといいます。
前提として、栄養補給としての食、食べて感覚的にうまいと感じる食、そして、頭で理解して楽しむ食の3つに分け、「この3つ目の食こそ美食、すなわちガストロノミーであるととらえています。あまりなじみがない言葉だと思いますが、食を文化的に楽しむことがガストロノミーです」。
補足して、一皿の背景にある文化、歴史をも感知できることが大切なのだと語ります。
「ガストロノミー的見地からいうと、今、日本では地方が面白いと思います。地方にはそこにしかない食材、育まれた食文化があり、それらを踏まえて料理をすることでオリジナリティが生まれます」。
UターンやIターンで地方に移り、新たな魅力を発信する店が増えているのです。
たとえば、富山県の秘境でその地こその食材を高みに引き上げる「レヴォ」、土地ならではのとれたて素材を縦横無尽に使いこなす長野県の「柚木元」、日本有数の食材の宝庫である三重県で繊細な技を繰り広げる「私房菜 きた川」、いずれも土地の文化と伝統の上に料理人が深掘りしたオリジナリティが表出する優れた店です。
L'évo(レヴォ)(富山・利賀村)
山奥の秘境に佇む、ローカル・ガストロノミーの聖地
「こんなところに?と思うような不便な場所なのに、世界中から、特に料理人が訪れる店」と浜田さん。
雪の降る季節は辿り着くのも困難な山奥にある。写真/本誌・西山 航
オーナーシェフ谷口英司さんは2010年に富山に移り、「前衛的地方料理」を展開している。写真/本誌・西山 航
生産者や採取する人とのコミュニケーションを密にとり、料理法に合わせて素材の微調整を可能にしているそう。
身近な食材の新たな一面を堪能する「鰯」。写真/高野裕輔
料理の中でとりわけ印象に残っているのは熊肉の一皿で、通常は脂を味わうものとされる熊のあえて赤身を使った冷菜は、処理の技術の高さ、料理への落とし込みが素晴らしく、うまみ、嚙みごたえを存分に楽しめる逸品とのこと。
熊肉の隠れた魅力を引き出した「月ノ輪熊」。写真/高野裕輔
レヴォ富山県南砺市利賀村大勘場田島100
TEL:0763(68)2115
営業時間:昼12時~、12時30分~ 夜18時~、19時~(すべて一斉スタート)
定休日:第1・第3火曜、水曜(8月上旬は夏季休業)
コース3万1000円
柚木元(長野・飯田)
とれたて数時間、松茸の真髄を味わい尽くす
浜田さん曰く「萩原貴幸さんは『招福楼』で修業した後に、家業の料亭を継ぎ、土地のジビエを使うなど意欲的な日本料理に挑む料理人」。
実家の料亭を引き継ぎ、新たな挑戦を続ける萩原貴幸さん。
昨秋に感動した一皿は松茸の土瓶蒸し。旬の時期、松茸が届くのは朝と午後の2回、つまり昼と夜それぞれに新鮮なものを使用するが、前年の松茸を干してだしにし、そこへ笠が開く前の小ぶりの松茸を合わせた土瓶蒸しは干し松茸の濃厚かつ澄みきった味わいで、土瓶蒸しの新たな意義を感じたという。
とれたての鮮度抜群の松茸は嚙んだ瞬間に香りが弾ける、と浜田さん。
滋味深い山の恵みをじっくりと味わう「熊鍋」。
個室がメインの料亭を改装し、カウンターを備えた一室。
柚木元長野県飯田市東和町1-9-3
TEL:0265(23)5210
営業時間:12時~、18時~ 日曜は17時~(すべて一斉スタート)
定休日:月曜・火曜、不定休あり
おまかせコース4万4000円~
私房菜 きた川(三重・松阪)
日本人の感性で極めた中国料理の新境地
1日1組ゆえ予約困難な店だけれど機会があればぜひ、と浜田さん。松阪牛や伊勢海老、あわびといった日本有数の美味食材をも駆使し、日本人の感性で解釈した新境地の中国料理との評。
「紀州岩清水豚肩ロース肉の山椒塩釜焼き 仕上げに紀州備長炭の薫りを纏わせて」。
野菜の前菜は一つ一つが美しく、それだけでも来てよかったと思えるそう。
塩釜焼きの豚には地元産のエリンギを添えて。
シンプルに見えて奥深く、単に豊かな食材を使っているだけではない、技術の裏づけを感じる料理はまさに珠玉で、それにも増してフレンドリーなご主人の人柄も魅力。
浜田さん曰く「言葉には表せない稀有なおいしさ」を生み出す料理人、北川佳寛さん。
私房菜 きた川三重県松阪市伊勢寺町1020
TEL:0598(63)1888
営業時間:16時~19時開始(要相談)、22時閉店
定休日:月曜・木曜
おまかせコース3万3000円~(2~6名。1日1組の貸し切り)
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