レストラン
2023/02/28
私の最高レストラン66 第8回(全19回) 美味なる思い出は、人生の彩りとなります。創刊66周年を記念し、家庭画報ゆかりの著名人の「人生の思い出に残る」美食処66軒を紹介します。前回の記事はこちら>>
世界で最も多彩な美食体験ができる日本において、今、大切なかたがたと訪ねたいレストランとは、一体どこなのか。家庭画報ゆかりの著名人が愛する味どころ、その店ならではの味を、思い出とともに教えていただきます。
著名人への質問
(1)お祝いなど人生の節目に家族で訪ねた思い出の料理店、必ず召し上がる料理
(2)自分へのご褒美、あるいは元気を出したいときに出かける料理店、必ず召し上がる料理
春になると必ずいただく期間限定の逸品。囲炉裏の間の落ち着いた佇まいと仲居さんの太極拳のように美しい所作の接遇はまさに日本一と感じる。良質の茶室で時を過ごしているような静けさを味わえる。庭も小ぶりだが美しい。
京都市東山区高台寺北門前鷲尾町512
TEL:075(533)3100
器は日本有数。桃山時代の名器が普通に使われている。問われないかぎり、ひと言もコメントしない。その姿が潔く、料理も潔い。まるで清流に身をさらしているような感覚の料理。
京都市下京区東洞院通万寿寺上ル大江町557
TEL:075(708)6364
代々一人の世継ぎのみに伝わる揺るぎなき名物「ぐじの酒焼き」と「白味噌雑煮」。撮影/小林庸浩
クラシックできちんとした仕事がされた丁寧な正統派のお料理。父が生きていた頃からお世話になっています。しょっちゅうは伺えませんが、特別なときのとっておきです。実のあるお料理をいただくと、日々の雑念が消えていき背筋が伸びる気がします。
京都市中京区富小路御池下ル
TEL:075(221)5511
最近の京都は、おいしいものを食べたいと思い立って外食しようにも予約が取れず困っていますが、ここは穴場。最初に3品の前菜がお膳で出て、その後はアラカルトで注文というスタイルで、コースをいただくのはちょっとしんどい、けれど気の利いたものを食べたいときに、とても嬉しい一軒です。王道に少しだけ外しを効かせた料理のセンスも刺激になります。ポーションが小さめなので、いろいろと楽しめるのもいいですね。
京都市左京区新丸太町41-1
TEL:075(761)5230
夏は川床が有名で、京都の町の蒸し暑さが噓のように涼しくてほとんどクーラーいらず。でも、この右源太さんは実は冬に訪れるのが通なんです。お目当てはなんといっても「氣生根鍋」。
すっぽんのまる鍋からスタートし、そのまま、猪のぼたん鍋へと進めていくという、ほとんど反則的な贅沢を楽しみます。小心者の僕はこの贅沢の罪悪感を帳消しにできるような、何か大きな本を出したときや家族の祝い事があったときに伺うようにしていますが……締めまで完璧に楽しめます。ただ、ボリュームはかなりありますのでしっかりおなかを空かせてどうぞ。
京都市左京区鞍馬貴船町76
TEL:075(741)2146
イタリア北部の郷土料理とワインの店。山わさび添えのプロシュットコットがおすすめ。撮影/本誌・西山 航
一軒家のイタリアンです。日本では珍しい、フリウリ地方の郷土料理を看板にしています。今のようなブームが来るずっと前からオレンジワインを推していたという先見の明もあるお店で、毎年、スタッフとイタリアのワインの造り手を訪ねて、自分たちでよいワインを探しておられます。
その季節でメニューは大きく変わるのですが、シンプルにハムに山わさびをたっぷりかけるお皿は定番。友人の誕生日はもちろん、ちょっと疲れた仕事の帰りなどにもよく寄らせていただいています。活気ある店からパワーをもらえる気がしています。
東京都新宿区袋町3
TEL:03(6228)1149
娘も私もこのパスタのファンで、誕生日、クリスマス、中学受験の合格祝いなど、特別な日の思い出がいくつもあります。
東京都渋谷区神山町7-12太田ビル1階
TEL:050(3627)9006
Bunkamuraに近く、コンサートの打ち上げや、女子会などでお邪魔します。お料理に合うお酒をいただけるので、おいしさがさらに引き立ちます。
東京都渋谷区宇田川町28-3 A2 Bldg.8階
TEL:03(5457)2412
夫の誕生日に訪れるのは赤坂 菊乃井です。夫の仕事柄、前もって予定を入れることがなかなかできないため、「都内でゆっくりと過ごせるところ」は店選びの条件の一つになってしまいます。以前村田吉弘さんとは料理人コンペティションの審査でご一緒させていただき、お料理はもちろんのことお人柄にも大変感銘を受けました。
赤坂 菊乃井は私たちの日常に身近に存在しながら、「日本料理の真髄」そして「村田さんの信念」に触れることのできる大切な場所です。現在米国在住ですが、引っ越す直前にもお伺いしました。慌ただしい平生から一瞬にして解き放たれ、鈴虫の音を聴きながらお座敷で「お椀」を味わうひとときはまさに五感を使っての貴重な食体験の思い出です。
東京都港区赤坂6-13-8
TEL:03(3568)6055
中国・清朝の宮廷料理。「人参の炒め物」は前菜の一品として味わえる。撮影/阿部 浩
私にとってのご褒美は、体や心を癒やし、活力を与えてくれる料理店で食事をすることです。以前NHKのドキュメンタリー番組で北京にある厲家菜本店に伺い、西太后の長寿の秘訣となった、門外不出のレシピを学ばせていただきました。
そのときの思い出深いひと皿、「人参の炒め物」を銀座でもいただくことができます。私にとって「料理をすること」の原点に立ち返ることのできる料理です。特に高価な食材は使わない料理ですが、食材の選び方、切り方、火入れの仕方、ミニマムな味つけなど、一つ一つがウェルビーイングにつながることを再確認できる料理です。
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル9階
TEL:050(5593)4875
下皿が第5代高橋総料理長考案の「鮑ステーキ」。撮影/大泉省吾
化学者で食品関係の研究所長だった父は食にはこだわりがあり、志摩観光ホテルの「鮑ステーキ」は父が節目に食したい料理でした。1989年の1月7日、家族で志摩観光ホテルに向かう朝、昭和天皇が崩御されたニュースが入り、複雑な思いで伊勢神宮を参拝したことを覚えています。
志摩観光ホテルの「鮑ステーキ」は、故高橋忠之シェフのスペシャリテで、火入れの方法が特別で、素材と技術が素晴らしい料理を生み出します。父はその翌々年の1991年に急逝し、家族の思い出の料理となりました。その後、樋口宏江シェフとなってからも節目に家族で訪れています。
三重県志摩市阿児町神明731(賢島)(伊勢志摩)
TEL:0599(43)1211
カウンター越しの岸本直人シェフのトークも人気。撮影/本誌・武蔵俊介
岸本直人シェフのフレンチレストランは、13年間ミシュランの星を獲得し続けた「L’embellir」から、2021年に「naoto .K」と名前を変え、カウンターのみの一軒家の料理店となりました。13年間いつも驚きや感動をいただいてきた、旬をコンセプトに和の食材を大切にした岸本シェフ独自の料理は変わらずですが、今はカウンター8席となり、シェフの楽しい食材や料理のトークを聞きながら、元気と素晴らしい料理をいただくことができます。
お任せコースですが、コースの最初にいただく定番のスフレは絶品。「キャビアのスフレ」は私の好きなシャンパーニュとの相性も抜群で幸せな料理です。時々、自分へのご褒美として出かけたい場所です。
東京都千代田区神田錦町2-1-1
TEL:080‒7960‒9445
日本のフランス料理界を率いてきたグランメゾン。
料理を味わうだけでなく美術鑑賞も楽しみの一つ! 上質なワインがとにかく安い!
東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館ビル地下1階
TEL:03(3214)1361
大阪でいちばん新しいグランメゾン!
大阪市中央区北浜3-5-29 日本生命淀屋橋ビル地下1階
TEL:06(6233)5005
※後編(3月1日公開予定)へ続く。
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
© SEKAI BUNKA PUBLISHING INC. All rights reserved.
Loading