連載

菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】十月 後の月

秋が深まった頃の後のちの月(十三夜)は、名残の風情が横溢して、 日本的な「花鳥風月」の美が感じられる気がします。 もともと中国の風習だった月見も、 後の月は日本だけの風習といわれています。

京都の秋といえば、松茸。この頃の厨房は、むせ返るような松茸の香りで包まれる。
お客さまが喜ぶのは、なんといっても焼き松茸。ダイナミックな炭火焼きが何よりのご馳走。

菊乃井では中秋の名月から後の月まで
玄関に月の掛け軸を掛け、月見のお供えをします

京都の本店にいてるとよう月を見上げる機会がありますね。うちは祇園さん(八坂神社)の程近く。東山の麓です。晴れた日の夜、ふと見上げると東山に大きなお月さんがかかってる。そんなときは時間を忘れてしばし見入ってしまいます。うちのおばあさんがようゆうてました。「若い頃は余裕がないねん。けど、一瞬でもいいから空を見上げてご覧。まあるいお月さんが、そらきれいでっせ。あんまり下ばっかり見て仕事してると、しょうもないことばっかり考えて怒りっぽくなりまっせ」。ほんまにそうですね。

旧暦の八月十五日は中秋の名月。十五夜です。そして九月十三日は後の月。十三夜です。もともと満月を愛でるという風習は中国で唐代の頃に始まったと聞いています。日本には平安時代に入り、貴族は詩歌や楽の音を楽しみ、舟遊びをしたり、宴を催してお酒を酌み交わしたそうです。庶民にとっても月は身近で、農民は毎夜月を見て天候をうらない、種をまいたり、収穫をしたりしたんじゃないかなぁ。公家にとっては月見は「観賞」でも、農民にとっては生活の糧に直結するものだったと。中国も明代に入るとお月さんにお供え物をするようになったようで、日本では室町の後期には同じような風習が始まっていたようです。

京都の旧嵯峨御所大本山大覚寺では中秋の名月の頃、龍頭船に乗って空の月と水面に映った月を愛でる行事がおこなわれる。

 

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