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菊乃井・村田吉弘【日本のこころ、和食のこころ】十一月 口切り 

2017.11.01

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十一月に、新しく茶壺の 封を切る「口切り」は、 晴れやかで清新な茶事となります。 茶の湯は決まりごとが多くて、と 敬遠されがちですが、その真髄は、 ひとえに「もてなし」の心にあります。
伊勢海老の金つばの黄金色が映える、美しく端正なるりの鉢は澤村陶哉作。村田さんの小学校のときの同級生。竹馬の友が作る器は、いかにも京都らしいはんなりとした風情があり、いくつもコレクションしている。

 

茶事の中でも最も格があるという口切り。
茶壺の封を切るときの晴れがましさは格別です。


京都が赤や黄、橙といった美しい紅葉に彩られる頃、北野天満宮さんでは、「御茶壺奉献祭(おちゃつぼほうけんさい)」がおこなわれます。これは天正十五年の旧暦・十月一日に関白・豊臣秀吉公が北野天満宮で北野大茶会を開いたことに由来するといわれています。


毎年十一月二十六日におこなわれるこの儀式は京の秋の風物詩。神職さんが道を祓いながら本殿 に向かい、その後には茶娘姿の女子、白装束姿の男子が唐櫃に入った御茶壺を運びます。この茶壺にはそれぞれ、木幡(こはた)、宇治、菟道(とどう)、伏見桃山、小倉、八幡、京都、山城で生産された茶葉が入っているそうです。本殿に到着したら、茶壺が取り出され、祓われた後、神前で口切式がおこなわれます。これは神前で茶壺の封を切り、それぞれの茶葉を取り出して神前に奉献するというもの。この奉献された茶葉は十二月一日の献茶祭に使われます。


口を切る期待の瞬間。茶壺の中には半袋(はんたい)に入った三種の濃茶、周りに薄茶が。

 


茶臼で茶葉を挽き抹茶に。心を平らかにし、お濃茶を点てる。本日は高麗 呉器の茶碗で。

 

茶の湯に用いられる茶はもともとは使う分量だけ、そのときどきに茶壺から出して茶臼で挽いていました。新茶の採れる前に茶壺を茶師のもとに預け、新茶を詰めて約半年おかれます。十一月になると茶家に納められ、その茶壺の封を切って茶臼で挽き、濃茶を点てる。それが口切りで、お茶人さんにとっては最も大切なことの一つ。十一月に開く口切りの茶事は本当に晴れがましい茶事やと思います。十一月は開炉の時期でもあり、すべてが新しく調えられていかにも「茶人正月」といった清新な趣。十一月はことほどさように特別な月なのです。


茶壺に詰められた濃茶・薄茶の銘に、摘んだ日付、詰めた茶師の名前が書かれた「御茶入日記(おんちゃいりにっき) 」。
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