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あなたの家のおはし紙は、京風・江戸風のどちら?

随筆家 大村しげの記憶を辿って 私だけの京都へ 第27回「市原平兵衞商店(いちはらへいべいしょうてん)」

随筆家 大村しげの記憶を辿って かつて、京都の「おばんざい」を全国に広めたお一人、随筆家の大村しげさんをご存じでしょうか。彼女の生誕100年となる今年、書き残された足跡を訪ねて、生粋の京女が認めた京都の名店や名品、名所を紹介します。毎週金曜更新。記事一覧はこちら>>

市原平兵衞商店(いちはらへいべいしょうてん)

京都を旅するにあたり、京都ならではの場所や味に出会うために、私たちはなにを拠り所とすればよいのでしょうか。京都の情報を多数書き残した、随筆家・大村しげさんの記憶は、まさに京都を深く知るための確かな道しるべ。今回も彼女にまつわる名店、名所を辿ります。

大村しげ大村しげ
1918年、京都の仕出し屋の娘として生まれる。1950年前後から文筆をはじめ、1964年に秋山十三子さん、平山千鶴さんとともに朝日新聞京都版にて京都の家庭料理や歳時記を紹介する連載「おばんざい」を開始。これをきっかけに、おばんざいが知れ渡り、大村しげさんも広く知られるようになる。以来、雑誌や著書で料理、歴史、工芸など、幅広く京都の文化について、独特の京ことばで書き残した。1990年代に車いす生活となったのを機にバリ島へ移住。1999年、バリ島で逝去。 撮影/土村清治

 

3代にわたり、愛用した京都のお箸の名店

師走に入り、もうすぐお正月の準備があわただしく始まります。京都の古い生活習慣を続けていた大村しげさんが、代々、お正月に欠かさなかったのが市原平兵衞商店の祝い箸です。

市原平兵衞商店は、1764年(明和元年)創業のお箸の専門店で、店内には、驚くほどお箸が種類豊富に取りそろえられています。歴史あるお店だけに、大村しげさんは3代にわたり、こちらの祝い箸がお正月の必需品であったことを綴っていました。

市原平兵衞商店(いちはらへいべいしょうてん)

「祖母は四条の堺町にあったおはしの老舗、市原へ買いに行った。そして、母もまた暮れになると、私を連れて市原へ。その買い方をじっとォ見て、わたしもおはし紙をどれにするのんかまで、覚えた」(『京 暮らしの彩り』佼成出版社)と、思い出を添えて祝い箸を紹介しています。

市原平兵衞商店(いちはらへいべいしょうてん)手仕上げの祝い箸。両端を削り、真ん中が丸みを帯びた形状は、ハレ(※)のお箸の形。大村さんは「両端が細うて食べやすい」(『とっておきの京都』主婦と生活社)と説明しました。1膳864円(税込み)。※ハレ(晴)とは婚礼や年中行事などの正式・公式な特別なこと。これに対して普段のことをケ(褻)といいます。

一年を通じて大村しげさんが愛用

大村さんが愛用した、祝い箸は手仕上げの逸品で、英照皇太后のご使用になった御膳箸の写しとして製作されたものです。手なじみが良く、食べ物が滑らない使い勝手のよさは、大村さんの以下の記述から、存分に伝わります。

「お雑煮を祝うのは柳ばし(※)。両端を細う削った丸いおはしで、弾力があり、めったに折れない」、「三百六十五日、わたしとは仲良しのおはしである」(ともに『京 暮らしの彩り』)※素材は車水木(クルマミズキ)ですが、当時は通称として「柳ばし(柳箸)」と呼ばれていました。現在では柳の木を使っていると誤解されないよう、「祝い箸」の名称になっています。

「京都ではこの柳箸でお雑煮を祝う。なんせ大きい頭芋と、子芋、お雑煮大根、丸い小餅を、白みそ仕立てでいただくので、柳箸がいちばん使いよい」(『とっておきの京都』)

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