創業1750年の酒蔵、山梨銘醸の「七賢」と、アラン・デュカス氏。お互いの哲学に共鳴しながら、食前酒にふさわしいスパークリング日本酒や、酒粕を原料に持続可能な社会を見据えた蒸留酒を共同で開発してきました。この二者がタッグを組み、昨年に続いて開催されたのが、フランス料理と日本酒の最上のペアリングを体験するワールドツアー。世界5都市を巡るこのツアーの一環として、日本では12月8日、東京・服部栄養専門学校にて特別講座「日本酒の可能性とガストロノミーの未来」が開かれました。
3人の料理人が提示した、日本の酒と料理が響き合う3種のペアリング
アラン・デュカス氏の挨拶に続き、山梨銘醸の北原対馬代表取締役社長が「七賢」の酒造りについて語りました。「私たちの酒造りにとって、もちろん米も大切ですが、何より水を大切にしています。蔵元のある山梨・白州は甲斐駒ヶ岳からの豊かな水に恵まれた場所です。硬度およそ20mg/Lの超軟水を使って、13代にわたって口当たり滑らかな日本酒を造ってきました。また、この地の環境を大切に守り、調和しながら、“三方よし”の酒造りを続けています」。その後、「七賢」の3種の酒に合わせて、3人の料理人が、食材や調理を解説しながら料理実演を行いました。
講座の冒頭で「七賢」の酒造りについて語る、山梨銘醸の北原対馬氏。
トップバッターを務めたのは、山梨県出身で、東京・池尻大橋「旬菜おぐら家」の堀内誠氏。「にしんは低温調理で、3日かけて骨まで柔らかく仕上げています。同じく柔らかく炊いた利尻昆布、千葉の大浦ごぼう、なすと合わせた煮物は、『風凛美山』が持つ白桃のようなフレッシュな香り、さっぱりとしたコクによく合うと思います。木の芽の香りが、日本酒の持つ力強い印象をやわらげてくれますね」。
「七賢 純米 風凛美山」に合わせて堀内誠氏が作ったのは「低温調理したにしんと真昆布の煮物、大浦ごぼう、長なすを添えて」。
続いて登場したのはパレスホテルのフランス料理「エステール BY アラン・デュカス」の料理長で、デュカス氏の信頼も篤い小島景氏。小島氏が瓶内二次発酵で造られた「アラン・デュカス・スパークリング・サケ」に合わせたのは、備長炭であぶった金目鯛と、表面が真っ黒になるまで焼いて甘みを引き出したポロねぎ、香り豊かな海苔を合わせた一品です。柔らかな泡立ち、果実のニュアンスの香り、熟成に用いた桜樽由来のほのかな苦みを持つスパークリング日本酒が、料理と美しく調和します。
「アラン・デュカス・スパークリング・サケ」に合わせて小島景 氏が作った一品は「一本釣りした銚子産金目鯛、ポロねぎ、海苔のコンディマン」。
最後に登場した「デュカス・パリ」エグゼクティブ シェフパティシエ アジアを務めるアリテア・ロシニョール氏が作ったのは、栗と日本酒のデザート。オレンジのソースにエストラゴンのオイルをかけていただきます。合わせたのは、吟醸酒の製造工程で生まれる酒粕を原料に、吟醸香の爽やかさと、ウイスキー樽での熟成によるまろやかさを併せ持つ「アラン・デュカス サステナブル・スピリッツ」。マロンクリームの甘み、バーナーで焦がしたオレンジの皮の香りが、蒸留酒の熟成香を引き立ててくれます。
パティシエのアリテア・ロシニョール氏が「アラン・デュカス サステナブル・スピリッツ」に合わせて作った「栗と日本酒のデザート」。オレンジのソースは別添えに。
北原氏は語ります。「日本酒が日本料理と相性がいいのは当然のこと。ワインが世界各国の食文化に根付いたように、日本酒がフランス料理、イタリア料理、中国料理、韓国料理など、多様な料理と響き合う可能性を広げ、その新たな価値と将来性を世界に伝えていきたいと考えています」。
近年、レストランでは、料理に合わせて複数の酒を組み合わせるペアリングが一般的になりつつあります。日本酒もまた、多様な食材や料理に合わせて、渋みや苦みといったアフターフィニッシュを意識した造りも増えてきました。レストランでも家庭でも、日本酒=和食というイメージから脱して、さまざまな料理と合わせてみると、新しいおいしさとの出合いが生まれるかもしれません。
左より3番目から、「山梨銘醸」北原対馬氏、「旬菜おぐら家」堀内誠氏、「エステール BY アラン・デュカス」の小島景氏、アラン・デュカス氏、「デュカス・パリ」エグゼクティブ シェフパティシエ アジアのアリテア・ロシニョール氏。
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山梨銘醸
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