レシピ

なすに味をしみ込ませるには? 油っぽくさせない方法は? 極意をプロが教えます

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

泥亀汁(どろがめじる)、揚げなすの柚子こしょう和え

泥亀汁(どろがめじる)、揚げなすの柚子こしょう和え

今日は新なすを使った泥亀汁を紹介します。「どろがめじる」または「どんがめじる」と呼びます。師である滋賀県大津大谷月心寺の庵主様、村瀬明道尼(むらせ・みょうどうに)に習った滋賀県の郷土料理です。

味噌汁の中に格子状に包丁目を入れたなす、まわりにごまが浮かび、泥の中から亀が姿を現しているように見えることからそう呼ばれます。私は三つ葉の小口切りも加えます。三つ葉の風味で、初夏にふさわしい軽やかな味噌汁になります。

かつて滋賀県神崎(かんざき)郡にあった、近江商人発祥の地の一つとして知られる五個荘(ごかしょう)地区で夏場に作られた味噌汁です。なすには体の熱を外へ出すカリウム、疲労回復に効くアスパラギン酸が多く含まれていて、その上にごまをたっぷり加える泥亀汁は夏バテ防止に役立ちます。

亀の甲羅のように包丁目を入れることで味が染み込みやすくなり、使用人が多かった近江商人宅では簡単にできて栄養満点の料理として重宝されたのでしょう。

もう一品は、新なすを揚げて柚子こしょうを加えた酢醤油で和えます。油分が“加”わるのでボリュームが出ますが、しつこさを“除”くために電子レンジで加熱して、油の吸収を“減”らします。酢の酸味との相“乗”効果、柚子こしょうの刺激と風味を加えるのがポイントです。“加減乗除”がそろったところで、算木(さんぎ)文様の硯(すずり)形の器に盛りました(笑)。

算木とは、6〜7世紀初めにかけて中国から伝来した計算の道具です。加減乗除の計算に用いられましたが、16世紀後半に中国からそろばんが伝来してからは、簡単な計算にはそろばんが、算木は複雑な高次方程式を解く際に用いられました。

料理もある意味、たしたり引いたり掛けたりして、簡単に割り切れない課題に挑みます。シンプルな道具である算木や、泥亀汁ならぬ「つるかめ算」が高等数学に使えるように、高価な調理機械などなくても、シンプルな道具でおいしい料理を作ることはできます。工夫次第です。

そのお役に立てればと真心でこの連載を続けています。計算ずくだろうって? はい、“慚愧(ざんき)”します、算木ゆえに(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「泥亀汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

なすはあくを抜く必要はない。変色するのが気になるなら、切ったらすぐに加熱調理する。

・なすは油をよく吸収するが、出汁はあまり吸収しない。電子レンジであらかじめ加熱した後に炊くと、煮汁をよく含む

ごまは必ずいり直し、香ばしさを出して使う。泥亀汁のおいしさを構成する重要な要素の一つ。

・なすをごま油で焼いた後に使う方法や、いりごまをすって味噌と一緒に溶くやり方、白味噌仕立てもあるが、味が重たいので夏には向かない。

味噌汁のコツは「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」。「ゆり根白味噌仕立て」も参照。

・「揚げなすの柚子こしょう和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・なすに余分な油を吸わせない。あらかじめ電子レンジで加熱して、なす内部の油を吸収する空間を減らす


「泥亀汁」

泥亀汁(どろがめじる)、揚げなすの柚子こしょう和え

【材料(2人分)】
・なす 1本

・なすの煮汁
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc

・出汁 340cc

・赤出汁味噌(好みの味噌でもよい) 適量

・三つ葉(小口切り) 適量

・いりごま(市販品をいり直す) 適量

・練り辛子 適量

【作り方】
1.なすはヘタについているガク部分から切り取り、縦に2つに切る。皮の部分に格子状に包丁目を入れ、火が入りやすいように果肉面には縦に3本ほど、6mm程度の深さで包丁を入れておく。「夏野菜の揚げびたし、南蛮漬け」の「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

2.なすを耐熱皿にのせ、500Wの電子レンジで90秒ほど加熱する。

3.なすを下煮する。鍋になすの煮汁用の出汁と調味料を加えて火にかけ、レンジで加熱したあと2つに切ったなすを入れる。沸いたら弱火にして2分ほど炊き、火からおろして15分以上味を含ませる。下煮が面倒な場合は、電子レンジで加熱したまま、味噌汁に加えてもよい。

4.鍋に出汁を入れて火にかけ、80℃くらいになったら赤出汁味噌を溶き入れて、3のなすを煮汁から上げて加える。味噌汁が90℃を超えたくらいで火からおろし、椀になすを盛って汁を注ぎ、多めのいりごまと三つ葉を散らす。練り辛子を少量の味噌汁でのばした溶き辛子を添えて供する。

「揚げなすの柚子こしょう和え」

泥亀汁(どろがめじる)、揚げなすの柚子こしょう和え

【材料(2人分)】
・なす 2本

・揚げ油 適量

・酢 大さじ2

・濃口醤油 大さじ1

・柚子こしょう 小さじ1/2

・青柚子 適量

【作り方】
1.なすは「泥亀汁」の1〜2と同じように切って電子レンジで加熱する。皮の部分に入れる包丁目は斜めでも格子状でもよい。

2.柚子こしょう酢醤油を作る。ボウルに酢と濃口醤油、柚子こしょうを入れてよく混ぜる。

3.フライパンに揚げ油を注ぎ、なすを175℃で30〜40秒ほど揚げてクッキングペーパーに包んで余分な油を除く。

4.なすを半分に切って2のボウルに入れて柚子こしょう酢醤油で和える。器に盛って、青柚子の皮の部分のみをおろし金でおろして、ふりかけて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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