レシピ

とろろで作る和製ヴィシソワーズ。ひんやりなめらかなのど越しのスープです

プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

パプリカとろろ、トマトとろろ

パプリカとろろ、トマトとろろ

これからの季節にぴったりの、冷製「吸いとろろ」を紹介します。夏の冷製スープの定番といえばヴィシソワーズですが、日本料理でも先達や今の料理人によって、冷たく仕立てた吸いものやゼリー仕立てなどが工夫されてきました。残念ですが、ヴィシソワーズのように受け継がれる名作はいまだにありません。

ご存じのとおり、ヴィシソワーズ(ヴィシー風冷製クリームスープ)とはポロねぎ風味のじゃがいもの冷製クリームスープです。ニューヨークのザ・リッツ・カールトンの料理長だったルイ・ディアが、幼少期に母が夏に作ってくれた冷製スープをヒントに1917年に考案しました。故郷フランスのヴィシーで作られていたじゃがいもとポロねぎで作る温かい田舎風のスープを、都会人好みのお洒落な冷製にしたものです。

日本料理の料理人でも、これを真似してかつお節と昆布の出汁、あるいは野菜出汁と合わせて試す人もいますが、やはり本家にはかないません。そこで「賀茂なすドライトマト田楽、なす皮とパプリカの炒め煮」でお話ししたアレックス・F・オズボーンの発想法(ブレインストーミング)も活用して、じゃがいもを山のいもに替え、とろろ汁と組み合わせて、彩り豊かなまったく違った料理を作りました。

この連載では山のいもを主にした料理をこれまで10品以上紹介してきました。とろろは汁物にしたり、飯にかけたり、まぐろやそばにかけて山かけにしたりと多くの使い方(「山いもとろろ鍋」、「とろろかけ十五穀飯」、「カリフラワーの長いもとろろ焼き」、「とろろいもの磯辺揚げ、落としいもの味噌汁」)がありますが、今回はゆるくのばして、吸いとろろという吸いもの仕立てにします。

今日はパプリカとトマトをペースト状にしてとろろに合わせましたが、同様の方法で枝豆やとうもろこし、苦瓜、セロリ、焼きなす、アスパラガス、ビーツ、カリフラワーでもおいしい吸いとろろができます。全部合わせると10種類、“十形(とう・なり)のとろろ”ですね(笑)。

とろろ汁は飯がよく進むところから、「飯(いい)やる」を「言いやる」にかけて「言伝汁(ことづてじる)」という異称があります。この料理もSNSで言伝されれば、ヴィシソワーズのような……、無理ですね(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。

ちょっとしたコツ

・「パプリカとろろ、トマトとろろ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

山いもの皮をむいたりすりおろしたりする際に手がかゆくなるのは、皮付近に多く含まれるシュウ酸カルシウムが原因。シュウ酸カルシウムは酸に弱いので手に酢をつけて洗い流す。熱にも弱いので40℃前後の湯にかゆい部分をつけるとよい。あらかじめ調理用のビニール手袋をつけるのが一番確実。

すりおろしたいもが褐変するのは酸化が原因。金属製のおろし金ですりおろすと酸化が促進されるが、おろしたてをすぐに使えば問題はない。

すり鉢ですると、おろし金を使った場合と比べて口あたりが柔らかくなる。すり鉢がない場合はなるべく目が細かいおろし金ですりおろす。

・飾りに使うよりきゅうりやよりうどを作るのが難しい場合は、3mm角×3cm長さに切るか、5mm角のさいの目切りにすればよい。


「パプリカとろろ」

パプリカとろろ、トマトとろろ

【材料(2人分)】
・パプリカ(黄色) 160g

・大和いも(すりおろしたもの) 40g

・塩 5〜6つまみ

・薄口醤油 小さじ2

・きゅうり 4cm

・パプリカの南蛮漬け(赤、橙、緑。1色でもよい) 各適量
パプリカの南蛮漬け」参照

【作り方】
1.とろろを作る。大和いもの皮をむき、すり鉢の溝に軽く当て、回しながらする。急ぐ場合は目の細かいおろし金ですりおろした後、すり鉢に移してすりこ木で空気を含ませるようにするとよい。

2.パプリカは「パプリカの昆布押し、味噌漬け」を参照し、皮をむいて適宜切り、ミキサーでなめらかなペースト状にする。

3.1に2をたし、塩、薄口醤油を加えてすりこ木でよくすり混ぜる。保存容器に移して冷蔵庫でよく冷やす。

4.よりきゅうりを作る。4cm長さに切ったきゅうりを1mm厚さのかつらむきにする。内側の面を下にしてまな板の上に広げ、幅の最も広い部分が5mm、長さが4.5cmの細長い三角形になるように切り出していく。三角形の先端と底面になる部分を上、下と交互に替えて切り出す。水に放し、1分ほどしてしゃきっとしたら引き上げる。箸にくるくると巻きつけて昇り龍のような形にする。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。

5.3を器に注ぎ、真ん中に1cm×3.5cmに切ったパプリカの南蛮漬けをのせる。よりきゅうりを添えて供する。

「トマトとろろ」

パプリカとろろ、トマトとろろ

【材料(2人分)】
・トマトジュース(濃厚でおいしいもの) 140g

・大和いも(おろしたもの) 40g

・塩 5〜6つまみ

・薄口醤油 小さじ2

・生じゅんさい 適量

・うど 4cm

・バジルスプラウト(好みで) 適量

【作り方】
1.「パプリカとろろ」と同じように大和いもでとろろを作る。

2.1にトマトジュースと塩、薄口醤油を加えてすりこ木でよくすり混ぜる。保存容器に移して冷蔵庫でよく冷やす。

3.生じゅんさいは「じゅんさいわさび酢、和三盆蜜かけ、味噌汁」を参照して、さっと茹でて冷水に放して水気をきる。

4.よりうどを「パプリカとろろ」の4のよりきゅうりと同じように作る。

5.2を器に注ぎ、じゅんさいを散らしてバジルスプラウトをのせる。よりうどを添えて供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。

文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗

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