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冬の茶事「夜咄」で供される白い粕汁。体の芯から温まる、お酒の効いた汁ものです

2022.02.25

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

2月の野菜本膳、粕汁


2月の野菜本膳、粕汁

2月の野菜本膳を紹介します。1月~2月にお教えしたレシピを中心に組んでみました。今回は亡き師、村瀬明道尼(むらせみょうどうに。滋賀県大津大谷月心寺の庵主)から頂戴した時代ものの朱塗本膳皆具(しゅぬりほんぜんかいぐ)に盛りました。

献立は飯:大豆飯、汁:粕汁(本日紹介します)、椿皿:うなぎもどき、中椀:青菜こまごまのごま和え、猪口:(わけぎの?)ぬた和え、小皿:千枚漬けになります。今日は汁の一品、粕汁をご紹介しましょう。


冬の夜長を楽しむ茶事に「夜咄(よばなし)」があります。互いの顔も見えにくい薄暗い中、手燭(てしょく)や行灯(あんどん)などの昔ながらの灯火具を用いる大変風情のある茶事です。寒い夜に暗い中で催されるため、いかに暖かくもてなすかの心入れが必要となります。懐石もまたしかりで、蓋付きの向付を使ってかぶら蒸し、かぶや大根のふろふきなど、あつあつの料理を出します。

暗いので掛物は大きな字のもの、花は白いものがよいとされます。同様に懐石でもかぶら蒸しやふろふきのように白い食材を用います。他に汲み上げゆばやゆり根、長いもなど。

そんな夜咄によく出される料理に粕汁があります。具だくさんの白い汁もので、お酒も効いているので温まります。今日は闇蒔絵(やみまきえ。別名:黒蒔絵)と沈金(ちんきん。漆面に小刀で線彫りして金・銀箔などを付着させ文様を表したもの)で雪月花の意匠を施した椀に粕汁を盛りました。客と客との間に置かれた蝋燭台の灯に、黒地に黒漆で微細な盛り上がりをつけて描かれた文様が浮かび上がり、なんとも幻想的な景色を作ります。

ヤーコンとクレソンの酒粕白酢和え」でお話ししましたが、粕汁には旨みを多く含む純米酒の新粕を用います。その上で同じ銘柄の芳醇な大吟醸を仕上げに少し加えれば最高です。

でき上がったらあつあつを1分1秒でも早く召し上がれ。「“粕”汁、急“かす”な」(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「粕汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・粕汁には旨みを多く含む純米酒の酒粕を用いる

・仕上げに同じ銘柄の芳醇な大吟醸を加えるとよい。純米酒でもよい。

・粕汁には酒粕に合わせて、西京味噌を加える。酒粕と同じく米と麹が主原料の西京味噌は、酒粕とよく合う。

・粕汁も味噌汁同様、「沸かさない」「煮えばなを手早く供する」「温め直さない」のがコツ。

・せりと柚子または橙の風味を加えることで粕汁が料理屋並みのごちそうになる。







「粕汁」


2月の野菜本膳、粕汁

【材料(3~4人分)】
・出汁 500cc

・新酒粕(純米酒の板状のもの) 40g

・西京味噌 120g

・日本酒 適量

・薄口醤油(好みで) 少々

・大根 適量

・金時にんじん 適量

・こんにゃく 適量

・せり 適量

・木綿豆腐 適量

・油揚げ 適量

・柚子(橙や陳皮でもよい) 少々

【作り方】
1.酒粕はそのままでは堅くて扱いにくいので、日本酒を適量ふりかけて一晩おき、柔らかくなったらミキサーにかけてペースト状にする。

2.大根、金時にんじんは一口大に切る。それぞれ軽く下茹でして水に放し、ざるに上げる。こんにゃくはスプーンで一口大にちぎるか、包丁で切る。下茹でし、水に放してもみ洗いし臭みを抜く。

3.せりの柔らかい部分は生のまま1.5cm長さに切り、堅い部分は茹でて水に放し、水分を絞って1cm長さに切る。豆腐は一口大に切る。油揚げはオーブントースターでこんがり焼いて1cm×2.5cmに切る。柚子の皮は白い部分を2mmほどつけて3mm角に切る。

4.鍋に大根、金時にんじん、こんにゃくを入れて出汁を注いで火にかける。途中で豆腐を加えて出汁が80℃くらいになったら、酒粕と西京味噌を溶き入れる。90℃を超えたくらいでせりの堅い部分を入れて好みで薄口醤油を数滴垂らし、香りのよい日本酒を少量加えて火からおろす。椀に具材とともに粕汁を注ぎ、せりの柔らかい部分と柚子を散らして供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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