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北関東の郷土料理「しみつかれ」。大豆と黒豆の入ったどこか懐かしい味わいです

2022.02.03

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

五目豆、しみつかれ


五目豆、しみつかれ

冬から春への区切りとして、立春の前夜に1年を締めくくる行事が行われます。それが節分です。立春思想による新年を迎える儀礼で、正月の行事と内容・性格が極めて近いことは「豆かりんとう」や「聖護院大根の煮もの」でもお話しさせていただきました。

立春は2月4日頃で、その前日の節分の晩に豆まきをし、「福は内、鬼は外」と悪鬼を追い払います。今日は節分にちなみ大豆を使った料理を紹介します。


五目豆はおなじみですが、「しみつかれ」は聞き慣れない名前かもしれません。主に栃木県や茨城県などで食べられる郷土料理です。正月に食べた塩鮭の頭、節分の残りのいり大豆、鬼おろしでおろした大根とにんじんを酒粕で炊いた料理です。

正月の残りものを大事に使って冬場の栄養摂取にあてる先人の知恵が詰まった料理です。地域によって「しもつかり」「すみつかれ」「すむつかり」などとも呼ばれます。

初午(はつうま)の日(2月最初の午の日)に作ったものを藁苞(わらづと。藁をたばねたりして中にものを入れられるようにしたもの)に入れ、赤飯と一緒にお稲荷さんに供えて火の用心・家内安全を祈りました。

名前の由来には下野(しもつけ。現在の栃木県と群馬県の一部)だけで作るからという説、酢む漬かり(すむつかり。いった大豆を酢に漬ける料理)からきたという説などがあります。

「すむつかり」が私どもの店名、六雁(むつかり)に似ていることもあり、六雁でもよく出します。ただ、伝統的なものは商品としては見た目が美しくなく、現代人には支持されにくい味なので、軽やかにアレンジしています。

日本各地には鬼や東北のなまはげのような異形者の扮装をして、小正月に各戸を訪れる習俗が今も残っています。鬼などの姿となった祖霊が災厄や悪霊を払い、生活を守ってくれるという言い伝えによるものです。その考えから節分に「福は内、鬼も内」の掛け声で豆まきをする地方もあります。

私の髪はなまはげではなく、年々“生はげ”になり、若い頃から仕事の“鬼”で家庭を顧みなかったせいで、「鬼は外」と内(うち。家)に居場所がありません(笑)。お父さんだって家族や生活を守ったつもりなんだぞ〜、「鬼も内」と言ってくれ。そんな思いを密かに込めて野菜料理を楽しみます。


ちょっとしたコツ


・「五目豆」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

大豆の風味と甘みを逃さないように、水煮ではなく、蒸し器で加熱して柔らかくする。時間がない場合は水煮の大豆を用いてもよい。

・五目豆にわさびを添えると、甘みがしまり酒の肴にもなる。

・「しみつかれ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・カリカリした食感を楽しみたければいり大豆と黒豆は食べる直前に、おろし酢と合わせる

・和えてしばらくおき、大豆に酢がしみて柔らかくなったものもおいしい。

金時にんじんは揚げて、赤唐辛子と一緒に南蛮漬けにして味のアクセントにする。

・ベジタリアンでなければ塩鮭の頭の代わりにスモークサーモンを加えると、ワインにも合う酒の肴になる。







五目豆、しみつかれ

「五目豆」(左)


【材料(作りやすい分量)】
・大豆 100g

・金時にんじん(1cm角に切る) 30g

・こんにゃく(1cm角に切る) 30g

・昆布(水で戻したものを1cm四方に切る) 20g

・ごぼう(1cm角に切る) 30g

・しいたけ(12mm角に切る) 30g

・サラダ油 小さじ1

・出汁 900~1000cc

・薄口醤油 大さじ1

・みりん 大さじ1

・砂糖 5g

・わさび(市販品のチューブ入りわさびでもよい) 適量

【作り方】
1.大豆は水に1時間30分ほどつけてざるに上げる。深皿に入れて蒸気が立った蒸し器で1時間30分蒸す。時間がない場合は市販品の大豆の水煮でよい。

2.金時にんじん、こんにゃく、ごぼうはそれぞれ下茹でする。昆布は少量の水に1時間ほどつけてもどして切る。

3.フライパンを火にかけてサラダ油をひき、大豆、金時にんじん、こんにゃく、ごぼう、昆布、しいたけを入れて炒める。油がなじんだら昆布のもどし汁に出汁を合わせて1Lにして加え、強火で煮る。

4.沸いたら調味料を加えて一気に煮汁を煮つめる。煮汁が最初の量の半分くらいになったら時々フライパンを返す。煮汁を煮つめながら全体にからめ、煮汁が減るにつれて火力を落とす。

5.煮汁が大さじ2程度になったら火からおろし、器に盛ってわさびを添える。

「しみつかれ」(右)


【材料(2人分)】
・いり大豆 20粒

・いり黒豆 10粒

・大根 200g

・ぶどう酢(果肉のペーストが入った濃度があるぶどう酢。市販品の飲むフルーツ酢でもよい) 35cc

・薄口醤油 小さじ1

・塩 少々

・金時にんじん 2cm

・揚げ油 適量

・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合

・赤唐辛子(種を抜く) 適量

・油揚げ 1/5〜1/4枚

【作り方】
1.おろし酢を作る。大根は皮をむいて鬼おろし(「大根餅」参照)ですりおろす。最初の2/3弱の重さになるくらいに汁気を絞ってボウルに入れ、ぶどう酢、薄口醤油、塩を加えてよく混ぜる。

2.金時にんじんは皮をピーラーで薄くむいて1cm角に切る。170℃に熱した揚げ油で揚げて、赤唐辛子と一緒に土佐酢に1時間以上漬ける。

3.油揚げはオーブントースターでこんがり焼いて1cm角に切る。

4.おろし酢に汁気をきった金時にんじん、油揚げ、いり大豆、いり黒豆を加えて混ぜ、器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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